信頼関係がなくちゃいけない役だから、ジディがたっくんだと聞いてすごくホッとした。(雅成)
――まずは『花郎〈ファラン〉』という作品の印象や、ご自身の役について伺えますか?
和田雅成(以下雅成) 実はミュージカル『ヴィンチェンツォ』のときに、もしかしたら『花郎〈ファラン〉』も舞台化するかも、という話は聞いていたんです。だから最初に出演のお話をいただいたときに、ようやく実現したんだなと思いました。
和田琢磨(以下琢磨) ドラマを拝見したら、すごい方たちが出ていて華やかな印象を持ちました。でもその中にも恋があり、人間ドラマがあり、いろんな側面から楽しめる要素が詰まっている作品だなって。
雅成 自分がムミョンをやるとなったとき、気になったのはやっぱりジディを誰がやるかってことで。ライバル関係ではあるけれど、最終的には信頼関係がなくちゃいけないふたりだから、稽古場でそれを築いていける相手だといいなと思っていたら、それがたっくんだって聞いたんで、すごくホッとしたんだよね。
琢磨 それはこっちも同じ。俺の演じるジディは王であることをひたすら隠して生きている人で、物語的には、彼が王になるのかならないのかっていうところも見どころの1つだよね。ただ、俺はそれよりも、ジディとソヌ(ムミョン)、アロとの関係性に興味を持ったんだよね。3人の距離感が近くなったり遠くなったり、変化していくところが面白い。
雅成 ただ華やかで綺麗なだけじゃ面白くないからね。自分の役としては、賎民の村で育った役ですし、泥水すすって生きてきたなと泥臭いところが滲み出てきたらいいなというのは考えてる。
琢磨 そういうソヌに影響を受けて変化していくのが、僕の役の面白さでもあるからね。これまで自分の中に抱いていた王様像が、ソヌの言葉とか行動を見て、こういう生き方が本当は理想なのかもしれないって思って、徐々にくつがえされていく。登場してきたときと、最後とで雰囲気が変わって見えたらいいかなと思っているんだ。
雅成 まだ稽古中で、どんな作品になるのかはこれから見えてくるのかなと思いますけれど、舞台ならではの良さを引き出せたらいいよね。
琢磨 演出のほさかようさんが「声を真似るみたいなことは必要がない作品だと思うので、自分の思っているキャラクター像を演じてほしい」とおっしゃっていたのが印象的だったんだよね。その上で、僕らふたりがこれまで築いてきた関係値が役にのせられたらなって思ってる。それができたら、『花郎〈ファラン〉』を舞台化したからこその魅力をより引き出すことができる気がします。
――お互いに相性のよさを感じる瞬間ってありますか?
琢磨 この作品ではないんですが、ちょっと前に共演した作品で芝居中に舞台機構がトラブルで止まっちゃったことがあったんです。出演者がみんな舞台上にいるときで、どうする?っていう雰囲気になったとき、マサが前に出ていって「止まっちゃいましたけどね…」って話し出して、そのまま自然とトークライブの流れになったことがあって。
雅成 あったね。打ち合わせなんてまったくしてなかったけど、あのときの結束力はすごかった(笑)。
琢磨 そういう経験もしてるから、何があってもマサと一緒なら大丈夫っていう信頼感はある。
雅成 それはこっちも同じだから。今回、もしかしたら殺陣なのかアクションなのかで交わるかもしれなくて。これまでは役柄的にもそういう場面がなかったから、ちょっと楽しみなんです。殺陣とかアクションって、人それぞれの呼吸があって、「この人はこうくるんだ」ってのが見えたりするから面白いんですよ。
琢磨 それは僕も一緒かも。がっつりふたりで向かい合ってという場面は、もしや『ダイヤのA 』The LIVE以来じゃないかと思うから、楽しみにしてる。
現場に甘んじることなく新しい世界に積極的に出ていこうとしている和田雅成を見ると嬉しい。(琢磨)
――気のおけない雰囲気のおふたりですが、出会いは?
雅成 最初がそれこそ8、9年前の『ダイヤのA 』The LIVEって舞台だったと思うんだけど…。
琢磨 僕は主人公校のメンバーのひとりを演じていたんだけど、対戦する相手チームのエースの役で入ってきて。そのときはがっつり芝居する場面はなくて、たしか最後のシーンだけちょっと向き合うっていう…。
雅成 そうだ。懐かしいな。
琢磨 マサが出るってなって、同じ〝和田〟としての意識が…(笑)。
雅成 あはは(笑)。
琢磨 ついに来るなって(笑)。
雅成 俺は、「売れてるほうの和田だ」って思ってた(笑)。実際、当時の自分からしたら、メインキャストを務めていた和田琢磨含めた3人は人気もあっていろんな舞台で活躍していたから、眩しかったんだよね。俺はオーディションだったから。
琢磨 俺らふたりで、これからも負けねーぜ、みたいなシーンがあったんだよね。
雅成 ここが勝負どころっていう場面で、僕の役とたっくんの2人だけのシーンがあって、そこがすごく好きだったし、印象的だったんだよね。僕が外角低めのカーブを打たれるっていう、ね。
琢磨 よく覚えてる(笑)。でも、昔からこうやって一緒にやってきた仲間と、違う作品でまた共演できるって嬉しいよね。
――お互いに、俳優としてリスペクトする部分というと?
雅成 リスペクトするところばっかりだけど…。
琢磨 2.5次元作品をやっていると、どうしてもその中で安住してしまいがちなんだけど、そうじゃない世界にどんどん積極的に出ていこうとしているんだよね。思わぬところで、和田雅成の名前を見たり聞いたりすると、こっちも嬉しくなる。
――それでいうと琢磨さんにも同じことを感じます。
琢磨 僕はこの仕事を始めたときから大河ドラマに出るのが夢で、それは今も変わっていなくて。人気のある漫画原作やアニメ原作の作品に出させていただいてるのはありがたいことですけど、それも自分の目標に到達するために必要なことであって、自分を〝2.5次元俳優〟という括りではとらえていないというのかな。
雅成 この間、ドラマで一緒になったときにふたりでゴハンに行って、そんな話をふたりでもしたよね。たっくんってもともと群れるイメージがなくて、その場その場で自分の役割をしっかり果たしていく人っていう感じ。俳優それぞれに、こうなろうという自分なりのスタンスがあると思うんだけど、そういう意味で、俺は結構たっくんから影響を受けている部分が大きいかもしれない。
――おふたりの今の主戦場は舞台かと思いますが、舞台の魅力はどこに感じていますか?
琢磨 やっぱりその場その場のお客様との一体感じゃないでしょうか。昨日盛り上がった場面が今日はそこまで…というときもありますし、その逆もある。その日その瞬間にしかない儚さというか、刹那的な魅力があると思います。
雅成 まさにたっくんが言ったのと同じ。毎回、そこで生きてる感じがめっちゃするんですよ。お客様と一体になってる感じって、演じてる僕らもあって、その瞬間がたまらなく面白い。だって普通に考えて、自分でもない役で生きているのをお客様が見てくれて、そこで世界を共有できるってジャンル、あんまないと思うんです。その不思議な一体感が劇場っていう場で、その公演その回だけでおこなわれているってすごく特別で、すごく魅力的ですよね。
2025年、蒔いてきた種が芽吹き、新たな共演と共鳴を育めるような節目の年にしたい。
――ちなみに年明け最初の舞台になると思うのですが、2024年はどんな年でしたか? そして2025年はどんな年にしたいですか?
雅成 我慢の年だったかな。それはマイナスな意味じゃなく。自分は「32歳までに売れる」って言い続けてきて、今33歳なんですね。かつて思い描いていた理想の自分とは少し違った道を歩いてきて、今後どう進んでいこうかなと、ふつふつと思考を巡らせながらきた1年という感じです。これまでに蒔いてきた種をこの先開花させるために、今は目の前のことを着実にやっていくというか。
琢磨 僕、デビューして今年で15年で、来年40歳になる区切りの年。そういう意味で、今までやってきたことを振り返ることの多い1年で、ここからは自分発信で何かやってみようかとか、40歳の記念に挑戦してみたいこととか、そういうことに思いを巡らしていた1年という感じ。
雅成 ちょうど節目なんだ。
琢磨 これは来年に限らずだけど、毎年掲げている目標として、1年のうち1現場は、僕のことを誰も知らない、もしくは一緒に仕事をしたことがない人たちと仕事をするっていうのがあって。2025年もそういう作品に挑戦できそうなので、これまでの経験値を活かして、共演の方々と共鳴していけたらと思ってるかな。
雅成 自分は、もっと売れて、自分が思い描くステージにいくために、2024年に蓄えたものが芽吹いたなと思えるような年にしたいです。
和田雅成と和田琢磨が、いま好きなこと
――最後に、いまおふたりが一番好きなことを教えてください。
雅成 ワンピースカードです。今一番ハマってます! カードゲーム自体も楽しいけれど、プレイにやる人の性格が出るから、それも面白いんです。めっちゃ熟考する人もいれば、パンパン進めていく人もいるし。この間も、カミシモ(舞台『あいつが上手で下手が僕で』ー人生芸夢篇ー)の現場で荒牧(慶彦)と染谷(俊之)とやってたんですけれど、ふたりの性格が全然違うから、戦い方も全然違ってて。カードゲーム上で会話してるみたいな感じです。
琢磨 僕はなんだろう…。最近はアボカドかな? 友人に教えてもらったオリーブオイルが、ちょっとレモンの香りがするオリーブオイルなんですけれど、すごく美味しくて。それに一番合う食材を探していたらアボカドに行き着いたんです。スライスしたのにただかけるだけでも美味しいし、生ハムと合わせるのも美味しい。
PROFILE プロフィール
和田雅成
わだ・まさなり 1991年9月5日生まれ、大阪府出身。大阪を拠点に活動をスタートし、2016年に舞台『刀剣乱舞』シリーズ へし切長谷部役で注目される。舞台『おそ松さん on STAGE~SIX MEN’S SHOW TIME~』、舞台『呪術廻戦』、ミュージカル『ヴィンチェンツォ』など、2.5次元作品をはじめ数々の舞台で活躍。また映像作品でも活躍の幅を広げており、2024年には主演ドラマ『神様のサイコロ』『0.5D』(BS日テレ)に出演。その他TOKYO FM/JFN33局ネットにてレギュラーラジオ出演中。また、アーティストデビューも果たし、2025年2月8日には関内ホール大ホールにて1st ONEMAN LIVE「Raise」を開催。3月には舞台『きたやじ オン・ザ・ロード〜いざ、出立!!篇〜』に出演。
和田琢磨
わだ・たくま 1986年1月4日生まれ、山形県出身。2009年にデビューし、2011年のミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズンで手塚国光役を演じ、注目を集める。舞台『逆転裁判』や『ダイヤのA』 The LIVE、舞台『ノラガミ』などに出演するほか、ドラマや映画で活躍。2017年から演じている舞台『刀剣乱舞』歌仙兼定役では、品のある佇まいと安定感のある芝居で高い評価を得る。2.5次元舞台以外の出演も多く、近作に、舞台『首斬り王子と愚かな女』、『ガラスの動物園』『消えなさいローラ』(2本立て作品)、『甘美なる誘拐』などがある。2月にはCULTURE FEST presents 井筒装束シリーズ 詩楽劇『めいぼくげんじ物語 夢浮橋』に出演。
INFORMATION インフォメーション
舞台「花郎~ファラン~」
ストーリー
今から1500年前の新羅時代。賤民の村で暮らすムミョン(和田雅成)は、生き別れた家族を捜したいという親友のマンムン(中土井俊允)と共に都に潜入する。ところが、二人は禁軍に追われて深手を負い、マンムンは命を落としてしまう。ムミョンはマンムンの本名“ソヌ”を名乗り、彼の妹であるアロ(岩田陽葵)を守るために生きようと決意する。一方、新羅第24代王のチヌン王(和田琢磨)は、摂政の母・チソ太后の命令で世間に顔を明かすことなく生きている。不眠に悩むチヌン王は、街で語り部のアロの話を聞いているうちに眠りに誘われ、彼女に興味を抱く。そんな中、チソ太后は見目麗しい貴公子を集めて王を守る精鋭集団“花郎<ファラン>”を創成すると宣言。ムミョンことソヌは親友の命を奪った者への復讐心から、チヌン王は母から王権を奪還すべくジディという偽名で花郎になる。それぞれの目的を果たすために花郎となったソヌとジディはぶつかり合いながらも絆を深め、成長していくが…。
公演期間:2025/1/8(水) ~ 2025/1/19(日)
会場:THEATER MILANO-Za (東京都)、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ (大阪府)
出演者:和田雅成、和田琢磨/笹森裕貴、田中涼星、磯野亨、松井健太/岩田陽葵/大鳥れい、中村まこと、長谷川かすみ、富田翔/高田晃宏、内田岳志、中土井俊允、大谷秀一郎、柊木智貴 他
Based on the KBS drama “Hwarang” by Park Eun-Young.Licensed by KBS Media Ltd. © Park Eun- Young /2023 KBS/ Avex Pictures Inc. All rights reserved.