
毎日の暮らしや将来に必要なお金のこと、きちんと把握してますか? 「わからない」ゆえの不安は、知ることで解消できるはず! “お金初心者”の3人と一緒に、お金の勉強を始めましょう。「お金の教科書」、今回のテーマは「クレカの不正利用に気をつけよう」です。
クレカの不正利用に気をつけよう。

三上洋(みかみ・よう)さん ITジャーナリスト。セキュリティ、ネット事件、生成AIなどに精通。文教大学情報学部非常勤講師。著書に『深掘り!IT時事ニュース―読み方・基本が面白いほどよくわかる本』(技術評論社)が。
散財好美(さんざい・よしみ/31歳・フリーランス) 5年交際中の彼と同棲中。貯めたい意思はありつつも、推し活とちょこちょこ散財する癖が抜けず、気づくと残高減。夏の旅はすべて推し活関連の予定。
クレジットカードの不正利用被害が増加中。
好美:最近、クレジットカードの不正利用の話をよく聞きます。傾向と対策を教えてください!
三上:いま急激に増えていますね。日本クレジット協会によると、2024年のクレジットカード不正利用被害額は555億円です。
好美:え…、そんなに!?
三上:ざっと換算して、1日2億円弱もの被害が出ているということになりますが、これは過去最多の被害額。2020年と比べると2倍以上の額にあたるんです。
好美:いかに急速に被害が拡大しているかがわかりますね。
三上:被害の内訳をみると、9割超がインターネット取引におけるカード番号の盗用です。入手した番号を使って物品を購入し、それを換金するのが手口ですね。
好美:ネット通販、便利だし普段から気軽に使っているんですが…。
三上:ネット通販自体は問題ありません。どういったサイトで購入するかが重要になってきます。
好美:というと…?
三上:たとえば、なにか欲しいものがある際、「商品名+格安」などで検索しますよね。その検索結果の上位には必ずといっていいほどニセ通販サイトが紛れています。
好美:怖!! そんな高確率で?
三上:そういったサイトは、カード番号だけ抜かれて商品が届かないというケースも多いです。
好美:被害を防ぐ方法は?
三上:一時期は、サイトが文字化けしていたり、デザインが崩れているなどいかにも怪しげなものが散見されましたが、最近は改善されて見極めが難しい。目当てのものが安くなっていても安易に飛びつかず、定価でも信頼できる大手や公式サイトで買うのが安心です。
利用明細のチェックが一番の防止策に。
三上:あとはフィッシング詐欺も企業のロゴやデザインを真似るなど、巧妙化しています。
好美:たしかに、本物かと思うようなメールがよく届きます。
三上:本物の判別は難しいので、メールやショートメールのリンクはクリックせず無視してください。
好美:わかりました!
三上:それ以外に、カード番号を自動生成して総当たり式に入力し、有効な番号を見つける「クレジットマスター」という手口も。
好美:そんなの防ぎようがない!
三上:そうなんです。だからこそカードの利用明細をこまめにチェックすることが重要に。身に覚えのない請求は、すぐにカード会社に問い合わせましょう。
好美:明細の確認は、使いすぎ防止にもよさそう(笑)。これを機に、しっかりチェックします!
クレカ不正利用の主なパターンと防止策は?
・ネットショップ詐欺…不自然なネットショップには要注意。
架空のネットショップで商品を販売し、情報を抜き取る。日本語表記がおかしい、相場よりも極端に安い、入手困難な商品を多く扱うなどのサイトはなるべく利用しないように。
・フィッシング詐欺…企業の名を騙っておとりサイトに誘導。
金融機関やカード会社などを装ってカード情報の再登録を促すメールやSMSを送信し、そこに入力された情報を抜き取る。安易に信用せず、入力前にURLが正しいものかを確認することが防止策に。
・スキミング…カードの磁気データをスキャン。
カードの磁気データを読み取る装置で情報を抜き取る。ATMなどのカード挿入口に装置を取り付けてスキミングする手口が横行。セキュリティ性が高いICチップ搭載のカードなら漏洩防止に。
・不正アクセス…ショップへのサイバー攻撃による情報漏洩
ネットショップなどが不正アクセスされることにより、カード番号が漏洩する。利用者側では防ぎようがないが、できるだけセキュリティ水準が高いサイトを利用することを心がけたい。
・クレジットマスター…カード番号を自動生成して有効な番号を割り出す
クレジットカードの番号は14~16桁の数字で構成されているため、システムを使えば番号やセキュリティコードを自動生成することが容易。それをもとに不正利用される被害が増えているが、利用者側では防ぐことが難しい。
イラスト・小迎裕美子 取材、文・宮尾仁美
anan2454号(2025年7月9日発売)より