
実は腟内の快適さとも深い関係がある乳酸菌。その役割やケアの大切さについて、専門医・対馬杏奈さんと美容家の西村直子さんに伺いました。
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毎日の腟内ケアでQOLを上げよう!
お話を伺った方
Profile

対馬杏奈さん
産婦人科専門医。2016年、帝京大学医学部卒業。昭和大学病院、東京ベイ浦安市川医療センター、愛育病院、昭和大学江東豊洲病院を経て、'23年より女性ライフクリニック銀座・新宿伊勢丹に勤務。
乳酸菌が腸内環境を良い状態に保つために必要なのは周知のこと。だが実は、腟内においても乳酸菌は重要な役割を担っているそう。産婦人科医の対馬杏奈さんに詳しくお話を伺った。
「乳酸菌は乳酸を作り出して腟内を弱酸性に保ち、腟炎を引き起こす雑菌の繁殖を防ぐ役割を果たしています。ですが、生理前のホルモンバランスが乱れる時期や睡眠不足、ストレスなどで免疫力が低下すると乳酸菌が減って、腟内の常在菌のバランスが崩れてしまいます。また、抗生物質の服用で乳酸菌が減ることも」
では乳酸菌が減って、腟内の常在菌のバランスが乱れてしまうと、どのようなトラブルが起きる可能性があるのでしょうか。
「代表的なのがカンジダ腟炎。カンジダ腟炎はカンジダという真菌が異常に増えることで起きる疾患で、強いかゆみや、おりものがポロポロと酒粕状になるのが特徴です。また、さまざまな好気性菌や嫌気性菌が異常増殖する細菌性腟症にもかかりやすくなり、おりもの量が増えたり、魚が腐ったような異臭がするといった症状が現れることもあります」
症状をそのまま放置しておくと、腟炎だけでなく、重篤な症状になることもあるそうだ。
「腟から波及して子宮にも炎症が起きたり、卵管や卵巣に広がって骨盤内炎症性疾患や腹膜炎を引き起こすことも。早期治療が重要なのは言うまでもないですが、日頃から腟内の環境を良好に保つことが何より大切です。また、ムレた環境や通気不良で雑菌が繁殖しやすいため、締めつける下着を避けるなどムレにくいような対策を」
実は、腟内に関する悩みを抱える女性は多いのだとか。
「腟内の不快感やニオイの悩みから解放されれば、それだけでQOLがグッと上がるもの。毎日スキンケアするのと同じように、腟内のケアをぜひ習慣化しましょう」
素敵な人の気になるデリケート部位ケア習慣は?
お話を伺った方
Profile

西村直子さん
美容家。2004年から10年間、香港で暮らすなかで親しんだ中医学を内側からの美と健康に活用し、美容知識をメディアで発信。50代とは思えない美肌を維持し、メーカーとのコラボ商品の開発も行う。
乾燥でかゆみを感じるようになったのを機にデリケート部位ケアを徹底するようになったという美容家の西村直子さん。丁寧に洗って清潔に保つという“基本”を重視しているのだそう。
「肌への刺激を考え、デリケート部位に近いpH値の専用洗浄剤を選ぶようにしています。専門家によると、意外とデリケート部位がきちんと洗えていない方が多いとのこと。清潔第一を心がけています。洗浄剤は体調や気分によって使い分けていて、ムレが気になる時は、質感や香りがさっぱりしたものをチョイス。また、くすみが気になる時は美白効果を期待してトラネキサム酸を配合したものを使うことも」
デリケート部位が乾燥しがちなので、保湿も意識しているそうだ。
「トイレで拭く際も、乾いたトイレットペーパーでゴシゴシ拭くのではなく、デリケート部位用の保湿ジェルをつけてからそっと拭き、肌が傷つかないように気をつけています」
こういった日常的なケアを始めてから、日々がとても快適になったそう。
「デリケート部位は顔のように毎日見ているわけではないので、変化を感じにくい部位だからこそ、自ら意識を向けることが大切。『バストケアをしていると自分で乳がんを見つけやすい』といわれるのと同様に、デリケート部位や生理周期の変化などに目を向ければ、体調の変化にも早めに気づくことも。何よりも毎日が快適になることは、精神的な安定にもつながるはずです」
写真・石澤義人 イラスト・二階堂ちはる