左・堀江瞬さん、右・小野大輔さん

和山やまさん原作の人気コミック『カラオケ行こ!』のTVアニメがいよいよ放送間近。中学の合唱部で日々鍛錬を積む岡聡実(おか・さとみ)と、歌ウマになりたいヤクザの成田狂児(なりた・きょうじ)による、奇妙な友情が織りなすシュールだけど心温まる物語の魅力とは…。2人を演じた堀江瞬さんと小野大輔さんに『カラオケ行こ!』 の声と歌の魅力について迫りました。


――岡聡実と成田狂児について、どんな人物だと解釈して演じられたのか。まずは役へのアプローチから伺った。

小野:狂児は極道の男であり、人の道を外れた生き方をしているにもかかわらず、悲壮感のようなものは一切なく、むしろ飄々と、その境遇を楽しんでいるように見える。それがカッコよくて、男が惚れる男なのですが、自分とは真逆のタイプなので、演じるのは難しそうだなと思いました。ただ、彼の唯一カッコよくないところが“歌が下手”という点で。「紅」が好きすぎて、自分のキーに合っていないのに「紅」を歌い続けるんですが、僕も昔はよく大好きなB'zの曲を無理やり歌っていたのを思い出して(笑)。狂児にもかわいらしいところがあるなと思い、そこから少しずつ自分に寄せましたね。

堀江:聡実くんはティーンの雰囲気漂うかわいい男の子という印象はありながら、実は嫉妬深く、内側には激情みたいなものが渦巻いているのが人間らしいなと。演じる上で、そこが指針になりました。

小野:それわかるな。芝居中の堀江くんにも熱さを感じるもん。

堀江:バレてました?(笑) 僕は中学時代、陸上部で長距離をやっていたんですけど、最初はタイムが良くて、ちょっとちやほやされていたところから、どんどん後輩の背中を追いかけるようになっていき、悔しい気持ちがありながらも、そこに真っすぐ向き合うと自分が惨めになるから目を逸らしてしまうこともあって。そういう“青春の歪み”みたいなものが聡実くんにもあるなと思い、過去の自分とどこかリンクさせながら演じていけたと思います。

――聡実と狂児の掛け合いで物語が展開していく本作。二人の会話のトーンやテンポ感が重要なポイントに。

小野:最初、音響監督さんに「もっと抑揚がないほうがいい」と言われて。淡々とやったつもりではいたけど、関西弁ってより感情が乗っちゃうんですよね。だから、狂児の低い体温を表現するのが難しかったです。

堀江:関西弁もかなり直されましたよね。僕も大阪出身なんですけど、(キャストの)野津山(幸宏)くんが作品の舞台である大阪の八尾の近くの出身で…。

小野:音響監督ではなく、野津山くんから「違います」と修正されて。一切手加減なしだったよね(笑)。

堀江:だから、関西弁も意識しつつ、でも、何より大事にしたのは狂児との空気感で。小野さんの芝居によって、僕もどんどん聡実になれていくような感覚がありました。

小野:堀江くんは耳がいいから、相手の芝居をちゃんと聞いて、そこに乗っかることができる。今回は、お互いに相手の台詞をしっかり聞いて、心を動かすことができたんじゃないかなと思います。

――さらに、聡実と狂児の「紅」の熱唱シーンも気になるところ。

小野:作中、狂児の歌を聞いた聡実くんが「終始裏声が気持ち悪い」と言う場面があるので、レコーディングでも、終始、裏声で歌ってみたんです。それで思ったのは、こんな歌で組長主催のカラオケ大会に出ようとは思わないだろうなと。リアリティがなさすぎるので、裏声のバランスを探りながら何度も試して。いい塩梅でキモいと思います(笑)。

堀江:僕(聡実)の場合、歌唱の素地は整っているところで、声が出にくくなっていき、周りが「ノド大丈夫か」と心配するぐらい声がかすれていく。そこは難しかったですね。

小野:堀江くんのほうが先にレコーディングしていて。スタッフさんから「堀江くんはリミッターを外して、声がガラガラになるまでやってくれた」と聞いて、俺もやらなきゃ! と思ったんだよね。声がかすれていく歌唱って、どうやったの?

堀江:テクニックではできないので、自分の体でやるしかないと思って。

小野:危ないよぉー。声を張り上げるお芝居なんかも何度もトライするし、隣で見ていて心配だったけど、その我慢強さや無理してしまう感じも聡実くんと似ている気がするよね。

堀江:小野さんの、飄々と全体を見ている感じは狂児そのもので。現場では狂児にしか見えなかったです。

小野:普段の僕は全然違うから。狂児のような余裕のある大人でいたいと思っているので、そう言ってもらえて嬉しいよ(笑)。

小野大輔さん as 成田狂児

Profile

おの・だいすけ 1978年5月4日生まれ、高知県出身。代表作に『ジョジョの奇妙な冒険』(空条承太郎)、『黒執事』(セバスチャン・ミカエリス)、『おそ松さん』(松野十四松)など。

堀江 瞬さん as 岡 聡実

Profile

ほりえ・しゅん 1993年5月25日生まれ、大阪府出身。主な出演作に『彼女、お借りします』(木ノ下和也)、『僕の心のヤバイやつ』(市川京太郎)、『ミギとダリ』(園山ミギ)など。

『カラオケ行こ!』

Information

和山やまの人気漫画をTVアニメ化。合唱部部長の中学生と歌が上手くなりたいヤクザの交流をコミカルに描く。7月24日(木)放送スタート(TOKYO MX・22時30分~ほか)。ABEMAなど各配信サイトでも配信。

写真・向後真孝 スタイリスト・青木紀一郎(堀江さん) SUGI(小野さん) ヘア&メイク・TAKEUCHI NANA(M's hair&make-up/堀江さん) 宇津野里美(addmix B.G/小野さん) 取材、文・関川直子

anan 2455号(2025年7月16日発売)より
Check!

No.2455掲載

夏の推し旅 2025

2025年07月16日発売

海、美食、動物、かき氷、アートなど「大好き」なもの=“推し”を追い求める癒しの旅を案内する特集。夏といえばの沖縄は、那覇&本島西海岸のエリア別解説のほか、久米島、西表島という2つの離島もフィーチャー。他に「大人の夏休み」として、埼玉・長瀞の涼を求めて日帰り旅、栃木・那須で自然に触れる“大人の林間学校”、岡山で今が旬のフルーツとアートを楽しむ旅、北海道・トマムで雄大な自然を満喫する旅など、この夏おすすめの旅先をご紹介します。 ※ anan2455号POPver.(通常版)と、MODEver.(特装版)は表紙・掲載グラビア(Mrs. GREEN APPLE)・バックカバー・価格が異なり、その他の内容は同一です。

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肉体的限界を超えてより高みを目指そうと無茶しがちな日です。ライバルがいる場合は特にそういう状態になりやすいでしょう。例えば睡眠や休息もろくに取らずに働きづめになる、生活に支障が出るほど推し活をする、ずっと部屋にこもって対戦ゲームをするなど。「もうこれ以上は無理」という心身のサインを見逃さないことです。

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