堀潤の「社会のじかん」第502回:台湾原発ゼロ

意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「台湾原発ゼロ」です。


環境、安全保障のバランスを見つつ多角的な協力を。

台湾は5月17日に稼働中の最後の原子力発電所を停止しました。蔡英文前総統時代から民進党政権が進めてきた「2025年に原発をゼロに」という政策目標を達成したことになります。

原発ゼロを目指したきっかけは、東日本大震災による原発事故から、原発の安全性に不安を訴える声が高まったからです。今後の電力のメインは火力発電になり、風力や太陽光など再生可能エネルギーの比率を20%にまで引き上げることも目標にしています。

ただ、産業界は、電力の供給が不安定になるのではないか、電気料金が高騰するのではないかと懸念しています。特に台湾経済で重要な役割を果たしている半導体産業では、製造過程でムラのない電力供給が必須です。電力を安定して得られるという意味では原子力発電はとても有効だったんですね。

台湾の人口は約2342万人、エネルギー消費量は過去20年増加し続けており、エネルギー資源の約97%を海外に依存しています。火力発電に必要な液化天然ガス(LNG)は、オーストラリア、カタール、アメリカ、マレーシアなど14か国から輸入、その中にはロシアも入っています。輸入元と運航ルートを分散させることにより、戦争や事故によるLNGの供給困難というリスクを回避しようとしています。

ただ、LNGを輸入するには、それを貯蔵し発電所に移送するための受け入れ基地を沿岸部に作らなければいけません。ところが基地建設には海辺の生態系を破壊してしまうという問題があり、反対運動も起きているんですね。

トランプ政権が再び発足した後の3月、台湾はアラスカ州の公営企業とLNGの開発、購入に向けた基本合意書を締結しました。台湾にとって、アメリカとエネルギー分野でのパートナーシップを深め関係を強化することは、中国への牽制にもなります。

エネルギー資源を海外に依存している日本にとっても、台湾のエネルギー政策から学び取れることはたくさんあります。安易な原発依存も、戦略なき脱原発も最善とはいえません。海外情勢を見極めながら、エネルギーの多角的な相互協力の輪を広げることは、お互いの発展につながると思います。

堀 潤

Profile

ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。新刊『災害とデマ』(集英社)が発売中。

写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

anan2455号(2025年7月16日発売)より

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