意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「パレスチナ国家承認」です。


和平実現のために必要なのは国家承認なのか?

9月にイギリスやフランス、カナダなどが相次いで、パレスチナを国家として承認すると表明しました。9月22日時点でパレスチナの国家承認をした国は世界で約160か国にのぼります。

しかし、日本は国家承認を見送りました。パレスチナ暫定自治政府の駐日パレスチナ常駐総代表部のシアム大使は緊急会見を開き、「日本政府が近い将来、パレスチナを国家として承認すると信じています。加害者ではなく被害者の側に立ってください。国際法を犯す者ではなく、国際法の側に立ってください」と粘り強く訴えかけました。

会見では、パレスチナ暫定自治政府のアッバース議長が世界の首脳に書簡を送ったことが述べられました。書簡には、パレスチナ国家は「一国家、一政府、一つの法、一つの正当な武器」にコミットすること。また、統治と治安の全責任を負うことや包括的停戦、1年以内に選挙を行うことなどが記載されていました。

パレスチナは今、内部分裂しており、国際社会が交渉している相手はパレスチナ暫定自治政府です。ハマスは本来一政党だったのですが、選挙で第1党となり力を持ちました。この書簡では、ハマスとイスラエルが戦争をしているので、ハマスに武装解除させ、パレスチナの統治は暫定自治政府が行い、一つの政府にすると語られています。ただ、そもそも選挙でハマスに負けたのは、パレスチナ暫定自治政府の主要な政党であるファタハが、汚職にまみれていたからです。ガザでは多くの市民がイスラエルによって殺され、それと戦ったハマスを「間違っていた」とすることをガザ市民が素直に受け止めるのか、正直なところわかりません。

日本はアメリカの圧力によって、パレスチナを国家承認できなかったと世界に思われています。それもありますが、一つの国にまとめるのが難しいパレスチナの現状を見て、安易には認められないと、慎重な姿勢をとっているのも事実です。

まずは市民の犠牲をいち早くどう食い止めるか。国際刑事裁判所はイスラエルとハマスの両首脳に逮捕状を出しています。国家承認の前にこれを実行することが先決ではないかと思います。

五月女ケイ子解読員から一言

「戦争をやめさせると言っていますが、停戦合意後もイスラエルの空爆があったり、簡単には解決しなそうですね。自分で原因を作っておいて、後から「俺がなんとかするから」と言い出す感じは身近にもよくありそうで、不毛感とモヤモヤ感がすごいです」

解説員

Profile

堀 潤

ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。新刊『災害とデマ』(集英社)が発売中。

解読員

Profile

五月女ケイ子

そおとめ・けいこ イラストレーター。楽しいグッズが買える、五月女百貨店が好評。細川徹との共著、ゆるくておバカな昔ばなし『桃太郎、エステへ行く』(東京ニュース通信社)が発売中。

写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

anan 2471号(2025年11月12日発売)より
Check!

No.2471掲載

とっておきの贈り物 2025

2025年11月12日発売

anan恒例の手みやげ・ギフト特集。スイーツライターのchicoさん、ギフトコンシェルジュの真野知子さん、フリーアナウンサーの宇賀なつみさん、料理家/管理栄養士の長谷川あかりさんといったananおなじみのフード賢者たちのトレンド感ある手みやげグルメの紹介のほか、俳優の梅沢富美男さんや、元TBSアナウンサーの堀井美香さんら食通の有名人によるこだわりのセレクトも。いま贈りたいギフトの最適解が見つかる一冊です! 松井玲奈さんによるエッセイや、注目の芸人コンビ・例えば炎の贈り物にまつわるストーリーも必読。

Share

  • twitter
  • threads
  • facebook
  • line

Today's Koyomi

今日の暦
2025.12.
4
THU
  • 六曜

    赤口

地道に取り組んできたものの、どこかあきらめかけていたことへのチャンスが訪れそうです。思わぬところから声がかかる可能性があります。コミュニケーションを面倒がらず、臆することなくその機会をつかみましょう。今まで孤独な旅路だったとしても、この流れに乗れたら多くの人と一緒に働く楽しさを味わえるようになります。

Movie

ムービー

Regulars

連載