お笑いコンビの関係性に迫る不定期連載「ふたりコレクション」。第3回は、独特なネタ設定と、唯一無二でどこか掴めない存在感で注目を集めるイチゴ。M-1グランプリ2025で敗者復活戦に初進出し、ネタを披露後、新たなファンも増加中のおふたりを深掘ります。


『M-1グランプリ2025』の敗者復活戦で話題になったイチゴ。元旦には『100×100』(100秒刻みのネタで競う、賞金100万円の賞レース)で2度目の優勝。ヒール役としても場を盛り上げ、同月に行われた『第十一回上方漫才協会大賞』では、新人賞候補の1組に。今年も幸先良いスタートを切っているおふたりの、取材中もブレないキャラクターに注目です。

不定期連載「ふたりコレクション」バックナンバー

金魚番長「どんなに結果を出そうが、ふたりともナメられ続けてます」|連載・ふたりコレクション vol.1

フースーヤ「今は、漫才が一番やらなあかんことなんです」|連載・ふたりコレクション vol.2

イチゴ

Profile

いちご 1996年12月1日生まれ、埼玉県出身のイクト(いくと・写真左)と、1996年11月13日生まれ、新潟県出身の木原優一(きはら・ゆういち)によるお笑いコンビ。2021年結成。音声配信プラットフォームstand.fmにて『ウルトライチゴラジオ』を不定期配信中。『100×100』の優勝記念特典の冠番組が、BSよしもとにて放送予定。

「ネタを褒めてもらうことも多いけど、8回に1回はすっごいコメントが目に入ります(笑)」

── イチゴさんといえば、独創的な世界観のネタ。おふたりは、どのくらいの時期から、波に乗ってきたな、お客さんの感触が掴めてきたな、と感じましたか?

木原 『UNDER5 AWARD』(編注:芸歴5年目以下の若手芸人を対象とした賞レース。イチゴは2023年の第1回大会で決勝進出)で決勝に行ってから、急にM-1も準々決勝に行けるようになりましたね。それまで2回戦落ちが続いてたんですけど。

イクト 確かに。

木原 初めて挑戦した準々決勝は全然ウケてなくて、一昨年の、2回目の準々は壊滅的にウケたんですけど、落とされて。

イクト ウケましたね。準々の会場の、ルミネの天井? 僕らのネタが終わった後に人が何人か刺さってて。

木原 それはなかったな。嘘をついてます。

イクト いや、刺さってました。盛り上がりすぎると、揺れるんすよ、会場が。うねりで、ボーンって。それで人が飛んじゃうんす。何人か刺さって、その機材トラブルで(時間が)押しましたね。

木原 はい?

イクト はははふふっ。

── ウケたけど落ちた、という悔しい年もありつつ、改めて今年の反響はいかがでしたか?『あののオールナイトニッポン0(ZERO)』で、おふたりのネタが好きだという話題も出ていました。

 イクト あー、あのちゃんはもう、2回ぐらいデート行きましたね。

木原 嘘でしょ? 面白いけど会いたくないって言ってたよ。

イクト あれは建前で、普通に好きだって。お前じゃなくて俺がね。お前には会いたくないって言ってたよ。

木原 なんでなん? 俺には会いたくないんだ。

イクト うん。なんか、違うって言ってた。よく考えたら違ったって。ククククッ。

木原 一回考えはしたんだ。

イクト 俺のことはよく考えたらほんとに好きだったって言ってた。

木原 芸人の先輩たちも、会ったら感想を言ってくれますね。でもXでは、“漫才じゃない”とかも普通に言われてたんで。

イクト はははっあっあっあっ(引き笑いになって)。

木原 “こういうのが一番面白くない”とか。

イクト ふっ、ふはははははは!

── そういった言葉を見て、どう思われるんですか?

木原 まぁまぁでも、そりゃそういう層もいるかっていう感じですね。

イクト それ、でてくるよね。

木原 大体褒めるほうが多いですけど。8回に1回くらい、なんかすっごいのが目に入ってきます。

イクト こういうのが一番面白くない…。ふはははは。てへ。

── (そういう感想を見ても)全然笑える感じでしょうか?

木原 全然笑えますね。

イクト はい(笑)。

木原 あと、放送作家のサトミツ(佐藤満春)さんも、面白いって言ってくださってました。

── エゴサーチは割とされるタイプですか?

木原 めっちゃしますね。エゴサに明け暮れてたんで。

イクト あとは、〇〇さんがDMしてくれて…(アイドルとの妄想トークに発展)。

木原 え、これ〇〇さんが犯罪者だって話? お前をさらったってこと? デカい男たちを雇って? それやばいんじゃない?

──  stand.fmの『ウルトライチゴラジオ』の掛け合いさながらですね(笑)。おふたりであのラジオを録っていて、楽しいですか?

イクト 木原は結構、嫌がってますよ。ラジオってふたりきりだから。ずっと俺がこういう話をして、誰も助けてくれないんですよ、木原のことを。

木原 そんなことないですよ。普通に楽しいですよ。僕別に、聞いてるだけなんで。

イクト まぁでも、(妄想に話を戻して)彼女も俺のことが好きでやったことなんで、俺は訴えるつもりないんですよ。別に怪我もしてないですからね。結局。

── ラジオが長尺なことが多く、かつストーリーがあるのが納得の想像力です。

木原 これだってマジで意味ないですよね? この時間。なんにも載せられないじゃないですか。

イクト 確かに、すみません、でもあったら話します。話せる話、載せられる話。意外となかったりするからなぁ。

ボケ担当のイクトさん(写真右)。不器用でピュアな優しさを、狂気で包む。

ツッコミ担当の木原さん(写真右)。振り回されて不安げながら、発するリアクションと言葉は潔く爽快。

── (笑)。かなり不定期でラジオを収録されているイメージがありますが、どちらから録ろうと声をかけるのでしょうか? 

イクト 僕からですね。なんか、結構言いたいことが出てくるんで。

木原 イクトが設定を思いついたら録る、みたいな感じですね。新宿の本社とかで録ってます。

イクト でもあそこは音悪いから。場所を探して録ったりもしてます。神保町の狭い場所とか。本社…。これ言おっかな。吉本社員には誰も言ってないんですけど。実は解体業者と契約してて、今週末、本社にでっかい鉄球いれます。

木原 はぁ? 破壊? ぶち壊すってこと? あの校舎を。

イクト 腹立ってんですよ、俺。あの校舎寒いし音も悪いし。で芸人でそういう人結構多いんですよ。署名募って、業者とも秘密裏に契約して、鉄球いれます。

木原 鉄球をいれる…? いやその、結構お世話になってるけどな。夜から朝まで使わせてくれて。

── 夜中も本社を使われることがあるんですか?

木原 そうですね。ネタ合わせして、その合間にラジオとか録ってるんですけど。いくらでも声出していいんですよ。劇場で(ネタ合わせを)やるときもありますけど、朝まで出来るっていうのがあるんで、大体新宿の本社でやってて。そんなにお世話になってるのに、こいつは鉄球であの校舎を破壊しようとする。恐ろしいやつだよ。

── 朝までネタ合わせをされる日もあるんですね。

イクト 昔俺、ギリ人情、人への感謝みたいなん強かったタイプなんすよ、多分。ただもう裏切られすぎて、疲れましたよ。昔ヤギ好きで…。

木原 ヤギ好きで…? (呆れながら)どうなってくんだこの話。聞かせてくれよ。

イクト ヤギセンターによくヤギのこと見に行ってたんすよ。そこで仲良くなったヤギ室の室長の人と、よくご飯とか行ってたんすけど。ある日陰で悪口言われて。“あいつ、足が臭い”みたいなん言われて。俺臭くねぇしみたいな。俺が仲良かったメイちゃんってヤギにもそれ言われて。

木原 はぁ? メイちゃん。

イクト ヤギって言葉わかるんすね、マジで。

木原 わかんないよ?

イクト 俺が足臭いって聞いてから、全然、俺が渡す紙食べてくれなくなって。

木原 えほんとに紙食べさせてたの? いやいや紙は食べさせないほうがいいんじゃない、普通に。食べたいわけじゃないでしょ。

イクト たまに出る、僕らのグッズのステッカーとかを食べさせてましたね。

──  『100×100』(編注:100秒刻みのネタで競う、賞金100万円の賞レース。元旦にYouTubeにて生配信されていた)についても伺いたいです。2024年も優勝されていて、2度目の優勝ですね。

木原 優勝したときは、他の芸人の目は見れなかったですね。

イクト 実力で獲ったっていう感覚はゼロですね。

── でも、視聴者投票という工程もあっての、優勝ですよね?(笑)

イクト それは多分会社が用意したサクラでしょうね。(木原さんを見て)そうだよね。

木原 いや、それはないんじゃない?

イクト 買収してるよね? 客を。

木原 買収? わざわざ? それ票数いじればいいだけだよ。

イクト ん? あ、だから、それもやってると思う。どっちもやってると思います。

木原 どっちかでいいだろ。

──  (笑)。『100×100』は、お笑いファンが楽しむコンテンツですよね。

イクト はい。完全に。だって元日ですよ。言ったら、一年で一番大事な年の始まりですよ? 『100×100』見ようっていう人、(スーッと息を吸って)頭がおかしいと僕は思いますね。

木原 変わってる。一風変わってる人ですね。

イクト ふふはははは。

ふたりでご飯を食べに行くことはあっても、関係性は“ガチ家来“

イクト「お前の方が重ぇんだから、合わせろよ、こうやってもっと中心に足を寄せんだよ」木原「俺の方が軽いよ」

──  ネタ合わせのお話に戻りますが、コンビを組もうと誘われたのは木原さんからですよね。イクトさんが作るネタが面白いというのは、その時すでに知っていらっしゃったのでしょうか。 

木原 いや、わかってなかったですね。

イクト ふっふっ。

木原 なんとなく、こういう人間だっていうのはわかってましたけど。変なことしてるなっていう。コロナ禍で、劇場とかそんなに立てない時に、Xでイクトが動画あげてたんですよ。その動画が面白くて。COCO'Sの音楽に合わせて、頭からドラドラーって、ドラえもんがたくさん出てくる動画で。

イクト ククククーッ。

木原 それ見て、たぶん面白いだろうなって。

── 木原さんがイクトさんの面白いと思うところは、そういう発想力ですか? 

木原 そうですね。発想力。

イクト あれはアメリカのサイトに転がってた、人がやってるやつをそのままパクりました。

木原 あぁでも、いいっすね。そんなサイト見てるんだっていう、面白さ。

イクト まぁでも、コンビ仲は常に険悪というか。こういう場所ではちゃんとやりますけど。マジでむかつきますね。なんか、車買って出せよって思いますね。

木原 車出せよ…?

イクト なんで俺ずっと電車とか乗ってんだって。車出せや、買えよって、マジ思いますわ。

木原 やばいねそれ。

イクト クッ。

── イクトさんが思う、木原さんの好きなところ、面白いと思うところはどこですか?

イクト ほぼないですけど。

木原 ほぼない? そんなことありえる?

イクト まぁこいつの母ちゃん。綺麗なんで好きっす。

木原 それやめてくれ頼むから。俺の母ちゃんとホテルで会ってるとか言うんすよ。相当気持ち悪いから。

イクト クッ。

── おふたりでご飯に行くこともあるそうですが、おふたりの関係性を教えてください。

イクト 俺が呼び出して怒る、みたいなのはあるかな。

木原 いやないけどな。呼び出されてとかは。

イクト ふたりでご飯、行く?

木原 たまに行きますけどね。真面目な話とかはしないです。意外と喋ってはないかもしれないです。ただご飯食べに行くっていう。

イクト 結構怒ってますね基本。ふたりでなんかするときは。怒ってることにも気づいてないですね、こいつは。

木原 何を怒られることがある。

イクト いやまぁマジで、洗濯とか掃除とかも、違う家に住んでるからとか言って、俺の分しないんですよ。何してんの? と思いますね。

木原 家来だと思ってる? 俺を。家来じゃん、それ。

イクト ふっふっふっ。まあ、俺はパシリとしか思ってないですね。

木原 いやもう、出てたよさっきから。節々に。

イクト マジで、こいつに人権を持たせようと思ったことがないです。自分の中で。ガチ家来っすね。

木原 まぁそうですね。加害者と被害者って感じですね。

イクト 舎弟っすね。舎弟パシリ…。歯医者さん…歯医者さんとかも近いんですかね。口…、よく見てもらってますよ。

木原 なんの話? 急に。歯医者さん?

イクト たまに見てもらってます。Cの4とか、Bの6とか言ってますね。こいつもこいつで。

やりたいことが溢れ出す! ライブへの熱いこだわりと衝動

── 木原さんは以前、『ニューヨーク Official Channel』で、ライブの平場がうまいこといっていないと仰っていましたが、さまざまなライブで出演者の皆さんが木原さんに振って、それに応えて活躍している印象があります。最近は楽しまれていそうだと感じたのですが、いかがでしょうか?

『ニューヨーク Official Channel』【芸人トーク】より

木原 どうせ奇声あげてるだけじゃないですか? 言葉で笑わせてましたか?

── はい、言葉で(イクトさんがおもむろに机の上のお手拭きをおでこに貼る)。

木原 風邪ひいてんの? 冷えピタみたいになってるけど。

イクト 確かに。良かったじゃん。それ見てくれてる人、いんだよね。いないって言ってたもんね?

木原 確かにそういうこともあるかもしれないですね。とりあえず、振っとけみたいな。

── そこで、期待に応えて落とせたら、純粋に嬉しいですよね。

木原 うーん、まぁなんか、安心します。ホッとします。

イクト 嬉しいっていう感情が削ぎ落とされたんですよ、もう彼は。だから、“不安”か“不安じゃないか”の2択しかないんですよ、彼にはね。

木原 確かにほんとにそうかもしれない。

── イクトさんも、コーナーで間が空いたときや、他の方の回答を待っている間、盛り上げるためにその間を埋めよう、全体として繋げようとしている印象です。 

イクト まず嬉しいっす。ありがとうございます。

木原 気づいてもらえて?

イクト 俺みたいなタイプって、結局「自分のことばっか考えてるんでしょ」って言われるんすけど(泣いているふりをしながら)、俺ほんとみんなが1番楽しいのが一番好きなんすよ。俺ほんと、そればっか考えてます。みんなが楽しくて幸せで…みたいな。だからもう、僕がどう見られてるとか、どういう芸風とかよりも、その場の空気に寄せて、自分を変えて、ウケることが好きです。

木原 全然、違いますね。普通に客席降りて、お客さんの飲み物飲んだりしてましたし。お客さんのカメラ取って全然返さないとか。(舞台上の)みんな「やめろ、返せ」って言ってんのに。

イクト クレームはありましたね。劇場に。たまに爆発しちゃうんすよ。人のことばっか考えすぎて。そんときに、誰でもいいんで抱きしめてほしいっすよ(おでこに貼っていたお手拭きがおでこから落ちて、貼り直す)。

木原 それなぁんで貼んの? なぁにしてんのそれ。

イクト 俺の寂しさというところに今触れてきたなという感じですね。心臓の産毛を逆撫でされたっていう感覚です。

木原 マジで意味わかんねぇ。

イクト ふふっ。

──  所属劇場でも活躍しつつ、事務所が違う方とも、そして外部施設でも積極的にライブをしていますが、そういったことは意識的に話し合っているのでしょうか?

木原 僕は気づいたら(ライブを)打たれてますね。それこそ豆鉄砲さんと毎月『セーホー大会』っていうライブをやってたんですけど、それも1回目のときに、説明されずに「とりあえず下北沢来て」って言われて。“結婚すんのかな”って思ったんですけど。

イクト 俺がね?

木原 そう。そしたらなんか急に、「ライブです」ってなって。そのときは、そのライブ会場の窓の外に鳩がよく止まってるんですけど、その鳩を会場に入れようっていうコーナーがあって。

── 外箱だと、より自由度が増すんでしょうか?

イクト そうっすね。昔、『下北スラッシュ』っていう劇場があって、その劇場の支配人は、僕が「あれしていい?」「これしていい?」って聞いたら「いいよ」って言ってくれるような人で。色々やってましたね。ライブ会場の中に、アルミホイルでもう1個部屋作るみたいな。その中にお客さん入れて、真っ暗な中でライブするみたいな。アルミホイルってくっそ厚いんすよ、保温性高くて。で、最後それを破る、みたいな。

── 楽しそうです!

イクト おすすめだったんですけど、『下北スラッシュ』が入ってたビルが建て替えられることになって、ほぼなんでもやっていい会場が無くなっちゃったんですよ。『セーホー大会』もそこでやってたんですけど。そっから新しく場所を探したんですけど、なんでもいいよっていうところが無くて。やっぱりいろいろと制限がかけられてて。マジでそのストレスで、キックボクシングとかも始めましたね。

── 様々なライブをされている中で、今、動向が気になっている若手芸人はいますか?

木原 昨日もライブが一緒だったんですけど、イザナミンっていう後輩です。こないだ劇場メンバーになれるかなれないかっていうところまではきてたんですけど、結局(劇場所属をかけたメンバー入れ替え戦で)上がれなくて。あいつらには早く上がってきて欲しいです。

イクト 誰だろうな、うーん。ツーマンとかね。同世代難しいですね。

木原 豆鉄砲と、もうやれてるからなぁ。

イクト 豆鉄砲、ガチ面白いっす。タワーとか中華兄弟とか、伝書鳩も。このメンバーとオダウエダさんと、『全覇団』っていうライブをやってて。それ、もっかいやりたいっすね。

木原 舞台上で口から煙出すやつとかいて。怒られてましたね。

イクト ちょっと前まで俺ら主催でやってたんすけど、なぜかできなくなりました。ほんとはいつか復活させたいっすね、『全覇団』は。

取材時のおにぎりを気に入り、「劇場の皆に持って行こうよ」と、優しいおふたり。ありがとうございました!

ウルトライチゴラジオ

Information

音声配信プラットフォーム「stand.fm」にて配信中。イクトさんが木原さんにトーク設定を投げかけて、その時々の主張を展開していく。突拍子もない主張が多々ありながら、ふたりの掛け合いが癖になり、なぜか聴き逃せない不思議な感覚に。

写真・KAZUYUKI EBISAWA(makiura office) 文・編集部

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