左・山本里咲アナ、右・石川みなみアナ。

新春の日本に感動を届ける箱根駅伝を盛り上げてくれるのがアナウンサーたち。その仕事内容を大きく分けると、実況担当、中継リポーター、スタジオ進行があるが、なかでも、現場でメインアナウンサーを支えるのがサブアナと呼ばれる存在。第102回大会でスタジオセンターのサブアナを担当する山本里咲アナと、サブアナを経験し、ついに箱根⼩涌園前の実況を担当する石川みなみアナに、現場の裏側を語ってもらいました。

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    Profile

    石川みなみさん

    5歳から13年間、長距離を経験。現在もフルマラソンでの4時間切りを目指してトレーニング中。中学1年生の時にテレビで観た箱根駅伝をきっかけに、早稲田大学を目指した“初志貫徹”派。現在、『日テレ NEWS24』『news ever.サタデー』などを担当。

    山本里咲さん

    学⽣時代はハンドボールに打ち込み、スポーツ漬けの⽇々を過ごした。座右の銘は“初⼼忘るべからず”。最初に感じたときめきや何かを頑張ろうとした時の決意を忘れずに学び続けたいという「まっすぐな⼈間」。現在は『Oha!4 NEWS LIVE』『Going! Sports&News』などを担当。

    「箱根駅伝」中継の“サブアナ”ってどんなことをするの?

    石川さん

    箱根駅伝まで1か月を切って、いよいよ! という感じだね。今回は102回大会。

    山本さん

    脈々と伝統が受け継がれている唯一無二の駅伝競走、箱根駅伝の魅力ってどんなところだと思いますか。

    石川さん

    勝敗やタイムにはもちろん注目だけど、何より走る選手ひとりひとりにドラマがある。同じ4年間でもけがに苦しみながらコツコツと続けてきて、やっと掴んだ“最初で最後の箱根駅伝”という選手もいるし、期待されて⼊学したけれどなかなか報われずに苦労した選手もいます。

    山本さん

    実際に取材に⾏くと、より感じる部分ですよね。チーム内競争がどの⼤学も激しい中で、誰ひとり簡単にスタートラインには⽴てない。本当に少しの差で、惜しくもサポートに回ることになった選⼿もたくさんいます。

    石川さん

    選手にはいろんなバックグラウンドがあって、1年間の集大成として、最高の走りで競い合うのが箱根駅伝の魅力といえるよね。

    選手の地道な取材や的確な情報集めで先輩アナをサポート

    石川さん

    102回大会は、山本アナはセンターの蛯原アナのサブを担当するよね、センターだとサブアナってどんなことをやるのかな。

    山本さん

    センターのサブアナは、本番の業務以外に事務的な仕事も多いです。⼤学20校と関東学⽣連合にアンケートを送り、記⼊していただいた全選⼿のアンケートを取りまとめるような業務も⾏っています。その後は各⼤学の担当アナと連携をとって選⼿への取材を⾏っています。

    石川さん

    大会前の選手の取材はメインアナとサブアナがスケジュールの許す限り全員で協力して進めるのが毎年の恒例。そんな選手の取材やアンケートをもとに、本番当⽇の実況資料をメインアナと⼀緒に作成するのは、サブアナとして⼤きな責任を感じる仕事だね。

    山本さん

    取材時点では各⼤学の⾛者は確定していませんが、選⼿ひとりひとりの魅⼒が⼗分に伝わるようにと新⼈の頃から教わっているから、過去の先輩たちが取材で積み上げた膨⼤な記録集も参考にしながらしっかりとインタビューをして、実況アナがそのまま読み上げてもいい、と思えるくらいの実況資料を作ることを⽬指しています。

    石川さん

    選手アンケートにメインアナが気になるところは線を引くよね。それを見て、サブアナがメインアナの伝えたいところをくみ取って実況資料に落とし込んでいくわけだけど、当日の限られた実況の枠中に何を落とし込むか、文章にまとめるのは、サブアナの重要な仕事だよね。

    山本さん

    私は、実際に⽂章を打ち込んでみて、⾃分でも喋ってみたり、語呂が悪いと感じたら⽂章を変えたり、丁寧に時間をかけています。

    石川さん

    メインアナウンサー自身も膨大な量の情報を扱っているからね。

    山本さん

    あとはメインにつく先輩アナの“先回り”をしてサポートすること、これも重要な役割。

    メインアナが実況しやすいよう、情報を探して提供するサブアナ。

    石川さん

    当日は先輩が喋ってる横で、“この情報も言えるかも”ということを付箋に書いて差し出したり、レース状況に応じて情報を最速で調べて渡すこともサブの仕事。サブアナは、チームや選手の情報をできる限り頭に叩き込み、レースの最新タイムを伝えるためにストップウォッチを首から4〜5個ぶら下げているよね。

    山本さん

    「後ろとの差が3秒から5秒に広がりました」などの情報もレース展開に応じてストップウォッチで計りメモを渡します。区間賞の可能性があるとか区間賞ならその⼤学で何年ぶりとか記録系の情報も急いで調べて、実況アナに渡します。

    石川さん

    瞬発力が必要だね。

    山本さん

    2号⾞と4号⾞はバイクなので、サブアナは近くにはいられない。「ここの記録調べて」など、LINEのボイスメッセージで送られてくることもあります。

    石川さん

    サブアナをやる中で学んだのは、情報の賞味期限が短いということ。

    山本さん

    順位は目まぐるしく変動しますし。

    石川さん

    どの選手が映し出されるかわからない中で、映った瞬間には「さっきより何秒縮まっています」とか「今の時点で区間賞ペースです」と言えるように、その時映ってる選手がいちばん輝く情報を探すというのは、メインアナウンサーはもちろんサブも同じ意識だね。

    山本さん

    そもそもメインアナは情報をたくさん持っているので、“わかってるよ”という情報もあるかもしれないけど、それでも積極的に差し出せたらいいですよね。

    石川さん

    めげないというのが大事。

    山本さん

    差し出した情報をメインアナが読んでくれるとすごく嬉しい。

    石川さん

    そうそう、よし! ってね。

    全区間を歩いて確認! 選手に加えてコースのデータも体感します

    山本さん

    アナウンサーは、一回は箱根までの全コースを何日もかけて歩いて事前に走路を確認しますが、歩いてみて見えてくるものってありますよね。

    石川さん

    実際に箱根の山とか歩くと、選手がどれだけ過酷な環境で走っているかというのがわかる。
    沿道のお店が変わっていたり、ちょっとした風景に変化があったりするので、そこも逃さないように注意しながら歩いているね。

    山本さん

    箱根までの走路は周りの移りゆく風景も魅力のひとつです。

    石川さん

    そうそう! とくに3区。湘南に出たあたりからの景色は最高!

    山本さん

    相模湾の風光明媚な景色が、中継では空撮されるのでぜひ注目してほしいです。

    石川さん

    晴れた日には新春の富士山も望める。選手を取材すると、雄大な富士山をバックに走りたいから、8区を走りたいという選手もいたなぁ。

    山本さん

    今回の中継、石川アナの担当は、いちばん盛り上がりを見せる“箱根の山”ですが。

    石川さん

    そう。初めての山の中、⼩涌園前から実況していきます。先輩たちに聞くと上りの5区と違って6区の山下りは選手が一瞬で過ぎてしまうから、早口になりそうなところを、適切な情報とタイムを伝えなきゃいけないから難しいよ、などと今いろいろ伺ってるところ。

    山本さん

    確かに。下りは相当なスピード感ですね。

    石川さん

    早口にならないようにします(笑)。

    山本さん

    バイクの中継は選手にいい距離で接近できるので、足音だったり息づかいが聞こえることもありますよね。

    石川さん

    走行する選手のリアル感が伝わる瞬間。

    山本さん

    そんなライブ感に、アナウンサーが選⼿の名前、取り組んできたこと、仲間や故郷の話などをそっと添えることで、視聴者にも選⼿に感情移⼊して観てもらえたら嬉しいです。適切な情報を伝えるサポートをしたいと思います。

    アナウンサーたちは各大学の合宿所や練習場所に出向いて話を聞く。

    石川さん

    サブアナを経験して取材に足を運んだ分だけ、こう、愛が深くなって駅伝が楽しくなって、想いも強くなる。選手への想いと大学への想いがどんどん大きくなっていくからこそ、見える世界が広がってくると思うんだよね。そんな想いをのせて、本番ではしっかりお伝えしていきたいですね。

    山本さん

    今回はどんなドラマが待ち受けているのか、すごく楽しみです。

    石川さん

    ぜひ! 102回箱根駅伝、制作の裏側も少し感じていただきつつ、選手を応援していただけたらと思います。

    テレビ解説でお馴染みの渡辺康幸さんに聞いてみました

    column

    箱根駅伝1号車解説者 渡辺康幸さん

    長年一緒に中継していて感じるのは、日本テレビのアナウンサーとサブアナは選手に1年間通じて取材しているので、持ってる情報量が圧倒的に多いんです。出身地や、過去の記録、箱根駅伝への想いまでと、とにかく徹底している。全コース歩いていてコースのことを熟知しています。箱根駅伝にまさに命をかけてやってるところがすごいと思いますね。

    箱根駅伝はテレビで観よう!

    information

    SAPPORO新春スポーツスペシャル 第102回東京箱根間往復大学駅伝競走

    往路:2026年1月2日(金)7:00~14:05(全国ネット)

    復路:2026年1月3日(土)7:00~14:18(全国ネット)

    写真・石原敦志 イラスト・中丸陽子 文・牧田ちえみ 構成・片岡延江
    Check!

    No.2477掲載

    NEXT!

    2025年12月26日発売

    来年のトレンド予想、私たちをとりまく社会の話、そしてネクストカミングな俳優さんやVTuberなどをピックアップ。10月に行われたanan AWARD 2025の受賞者の撮りおろし、そしてAWARDレポートも一挙掲載。モノクロでは第16回ananマンガ大賞の発表も。

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    冬至の時期は「一陽来復」といって、陰としての暗闇が終わり、陽としての明るい光が射し込む様子を象徴します。その光は徐々にですが強まります。今日の暦の場合、その陽光となるものはあなたの内なる可能性であり、正しい動機に導かれる形で開花・成長していきます。そのためにも手本となる先生や先輩を見つけるといいです。

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