
誰かが発した何気ない言葉が、いつしか拡散されて真実のように力を持ち、罪のない人を罪人として追い詰めていく。現代にもあるそんな集団心理の恐ろしさや、人間の浅はかさや愚かしさを描いた舞台『るつぼ』。
反射的に『やります!』と言ってしまったんです
17世紀に実際に起きた魔女裁判を題材に書かれた今作は、70年以上前の戯曲ながら、日本はもとより世界中で今も上演されている作品。
「今回の話をいただいたとき、主演が坂本(昌行)さんで演出が上村(聡史)さんだと聞いただけで反射的に『やります!』と言ってしまったんです。そこから作品について調べ始めて届いた台本を開いたんですが、1ページ目のあまりの漢字の多さに、思わず一回閉じちゃいました」
笑いを交えて言った後、不思議そうに「でも、なんで俺だったんだろう?」と、松崎祐介さん。明るく屈託のないキャラクターで、所属するグループ・ふぉ~ゆ~内でも無意識に笑いを引き起こすコミカルなキャラクターで知られている。しかし、今回の松崎さんの起用は、演出の上村さんからの希望だったそうで…。
「今回が初めましてなのですが、日本の演劇界でもトップクラスの方とご一緒できるなんて嬉しいです。そんな方が、ボケかツッコミかでいえば完全にボケ…どころか大ボケのほうの僕の名前を挙げてくださったわけです。作品の背景だったり、舞台になっている土地の雰囲気だったりをしっかり勉強して、この時代を生きた人に1ミリでも近づけるよう頑張りたいです」
閉鎖的な田舎町で、ある夜起こった奇異な出来事から悪魔の存在が噂されるようになる。そんな中、少女が村人を魔女だと告発し、無実の人々が次々と魔女裁判にかけられてゆく。松崎さんが演じるのは、悪魔祓いに村を訪れたヘイル牧師。彼の真面目さが魔女狩りを煽る結果となり、苦悩してゆく人物。松崎さんの飾らないまっすぐさが役に説得力を与えてくれるに違いない。
「実際にあったお話が元になっていると思うと恐ろしいです。これが書かれたのは約70年前で、今はSNSになっていますけれど、根本的なところは何も変わっていないんだなと思います。この作品の中に、いろいろなキャラクターが出てきますが、それぞれが信念を持ってそれに従って生きていて、それはみんなが同じだとは限らないし、誰が正しいとか誰が間違っているとかも言い切れないものがある。ただ、真実はひとつのはずで。何が真実なのか、噂を信じるのではなくそれぞれが見極める目を自分で持っていないと、この物語みたいになってしまうから」
ふぉ~ゆ~といえば『Endless SHOCK』をはじめ、舞台を主戦場に活躍するグループ。松崎さんの思う舞台の魅力とは?
「100%役になることはできないけれど、役に向き合うことで近づくことはできる。衣装を着てステージに出て、照明を浴びてパッとしゃべったときに、グッとスイッチが入る瞬間があるんです。そのときに感じる躍動感だったり、自分の言葉で物語が動く瞬間の高揚感は舞台ならではのもの。今回、かなり挑戦となる役ですが、一皮も二皮も剥けた姿でお会いできればと思います」
Profile
松崎祐介
まつざき・ゆうすけ 1986年10月20日生まれ、埼玉県出身。ふぉ~ゆ~のメンバーであり、俳優としても活躍。5月には朗読劇 VISIONARY READING『したいとか、したくないとかの話じゃない2026』に出演。
information

『るつぼ The Crucible』
夜の森で少女たちが裸で踊る姿が目撃された。そのひとりが原因不明の昏睡状態に陥ったことから、家族は悪魔の存在を主張。そんななかひとりの少女が村人を魔女として告発し…。3月14日(土)~29日(日) 池袋・東京芸術劇場プレイハウス 作/アーサー・ミラー 翻訳/水谷八也 演出/上村聡史 出演/坂本昌行、前田亜季、松崎祐介、瀧七海、伊達暁、佐川和正、夏子、大滝寛、那須佐代子、大鷹明良ほか 全席指定1万2000円 サンライズプロモーション TEL. 0570-00-3337(平日12:00~15:00) 兵庫、豊橋公演あり。https://rutsubo2026.com/
anan 2487号(2026年3月11日発売)より












