意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「おもちゃの多様性」です。
子供の頃から多様な社会と身近に接して
1月に初めて自閉症のバービー人形が発売されました。専門家の協力を得て開発され、感覚過負荷を軽減するためのノイズキャンセリングヘッドホンをつけていたり、ハンドスピナーや補助的代替コミュニケーション装置のタブレットを持っているなど、自閉症の方の特質を表しています。
アメリカの玩具メーカー・マテル社はこれまでにもさまざまな体型や肌の色、車椅子や義足、脱毛症などのバービー人形を出しており、2023年にはダウン症のバービーが登場しました。
世の中には様々な人がいるというアイコンとして、子供たちが接するおもちゃに表現されているのはとてもよいことですが、多様性を意識したおもちゃ「ダイバーシティトイズ」は一時期ほどの勢いがありません。企業の「多様性疲れ」であったり、トランプ大統領の反DEI政策や排外的な発言の影響も大きく、「◯◯ファースト」など世界のあちこちで、足元の同じようなコミュニティを最優先させる非多様性の運動が広がってきています。
先日、慶應大学でがん免疫療法を研究している籠谷勇紀先生にお話を伺いましたが、新しい治療法を見出すには、多様な環境を前提に、最善の方法を絞り込むことが必須なのだそうです。多様なものがあるからこそ、いろんな事象を検証することが可能になります。
社会においても、多様性がなければ視野が狭まり、発想も偏り、狭いコミュニティの中で共食いのようなことも起き、脆弱な集団になりかねません。
多様性を頭で理解しようとすると、自分の立場が奪われたらどうしようなど、不安が生じてしまいます。しかし、子供の頃から、肌の色や体型、障がいの有無など、自分とは違う人、いろいろな人がいるということを、おもちゃを通して体験的に触れられる環境にいたら、多様性は自然と考えのベースになっていくのではないでしょうか。
昨秋、東京で行われた聴覚障害者のための総合スポーツ競技大会、第25回夏季デフリンピックは予想をはるかに超え、約28万人の来場者数となり大盛況を博しました。世界が多様性に自信を失っている今こそ、日本が積極的に多様な共生社会を謳えたらと思います。
五月女ケイ子解読員から一言

多様性疲れ。その先に当たり前があり、幼い頃から触れられたらより自然に生きられそう。「リカちゃんのON/OFF展」で、下はジャージでズーム会議するリカちゃんが展示されたとか。自己投影できる人形遊びの中で価値を分け合えたらいいですね。
解説員
Profile
堀 潤
ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜20:00~21:00)が放送中。著書『災害とデマ』(集英社)が発売中。
解読員
Profile
五月女ケイ子
そおとめ・けいこ イラストレーター。楽しいグッズが買える、五月女百貨店が好評。細川徹との共著、ゆるくておバカな昔ばなし『桃太郎、エステへ行く』(東京ニュース通信社)が発売中。
anan 2493号(2026年4月22日発売)より
















