鈴木雅之「自分に酔うのがアマチュア、人を酔わすのがプロだよね」

耳にした瞬間、曲が描く物語に誘われる稀有な歌声で愛されてきた鈴木雅之さんが、ソロデビュー40周年を迎えた。粋という言葉が似合う生き方や姉弟のストーリーに注目です。

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    男性とのデュエットはヴォーカルバトル。女性と歌うのはエスコート

    大人の色気と、情景が浮かぶムードを纏った歌声で、世代を超えて多くの人を魅了してきた歌手の鈴木雅之さん。

    ソロデビューシングル『ガラス越しに消えた夏』の発売から40年、そして今年70歳を迎える“ラヴソングの王様”の、歌へのこだわりやプライベートに迫ります。

    ── ソロデビュー40周年、おめでとうございます!

    鈴木雅之(以下、鈴木) これはグループの話になりますが、1979年のデビュー前にアンアンさんに取材してもらったんです。地元のリハーサルスタジオや、当時、メンバーが働いていた職場にまで来てくれたことを今でも覚えています。代官山の蔦屋書店のカフェで雑誌のアーカイブが見られるけど、そのアンアンを検索して、記事を読んだこともありました。インタビューは、もしかすると、それ以来じゃないかな?

    ── 嬉しいお話をありがとうございます。ソロデビュー40周年と古稀を記念したデュエット・ベスト・アルバム『MARTINI DUET DELUXE』が発売中です。渋谷凪咲さんや篠原涼子さん、菊池桃子さん、そして鈴木聖美さんら豪華メンバーが揃っていますが、なぜ、デュエットをテーマにしたのでしょう。

    鈴木 子どもの頃から、姉である鈴木聖美と歌い合うことが遊びみたいなもので、デュエットというカテゴリーは自分が音楽をやる上で大切なアプローチの一つなんです。また、自分自身へのプレゼントになるなという想いもありました。

    昨年がグループデビュー45周年でしたが、その時は完ぺきに男祭りで、ルーツミュージック、ドゥーワップ、ロックンロールというグループ時代の曲を網羅するような音楽性を楽しんだので、今回は女性に囲まれたいなと(笑)。古稀でそれが叶うヴォーカリストなんて、そんなにいないですよね?

    ── デュエットの相手として、男性と女性では何が違いますか?

    鈴木 女性とは疑似恋愛ができるといいますか。一緒に歌うことで、相手の歌い手としての何かを上手く引き出せたらいいなと思っています。男性の場合がヴォーカルバトルだとしたら、女性の場合はエスコート。相手のバックグラウンドにある恋愛観のようなものまでをも歌に乗せられるかどうかを大事にしています。

    ── デュエットで大切にしていることは何でしょう。

    鈴木 曲は詞を歌に乗せているものなのでストーリー性が存在します。自分たちが主人公的なアプローチを持たせつつも、聴いている人たちの恋愛観にオーバーラップさせたり、その人の恋愛観にあるモチーフも意識しなければいけない。そのために、歌だけでなく、歌の合間の仕草や相手の表情を見ることなども含めて大事にしているかな。

    ただ、僕はミラーのサングラスなので、見つめ合う時に、相手がどこを見ればいいのかわからず困っていたりするんだけど(笑)。デュエットも含め、ラヴソングの魅力は、愛情表現や、そこにある優しさ。時として寂しさや苦しさが詰まっているところ。それをどう表現するかは、ヴォーカリストにかかっているんじゃないかな。

    ── デュエットと、グループやソロで歌う時の違いは何でしょうか。

    鈴木 グループの時はヴォーカルというより、リーダーとしての自分の立ち位置を優先します。歌いながらも全体を見渡して、セルフプロデュースをするようなところがあって。すべてのものが一つになりながら歌う心地よさを感じられるのは、グループの良さですね。

    ソロのヴォーカリストとしては、どんなジャンルの音楽でも自分色に染め上げるために、音や声質だけに特化したアプローチで歌うことができる。純粋に歌い手ということを意識するのはソロだと思います。あと、グループの頃は、いかに自分たちが楽しむかが大前提でしたね。我々はコンテスト出身で、そこに集まった強者たちの中で、いかに自分たちが自然体で楽しんでいるかを見せることが重要だったので。

    それが、ソロ・ヴォーカリストとしてデビューした時に、自分に酔うのがアマチュアだとしたら、人を酔わすのがプロだという想いのほうが強くなっていった。ソロのベストアルバムのタイトルが「Martini」だけど、僕のニックネームは「マーチン(Martin)」で、「愛(i)」を加えると「マティーニ(Martini)」という読み方に変化する。ラヴソングという名のカクテルに酔いしれてほしいなと。

    ── ステージで歌う時のこだわりはありますか?

    鈴木 僕はグループでもソロでも、バンドを背負っているので、背中で音を感じて歌うところでしょうか。背中に全神経を集中させているから、ワンステージが終わると、ものすごく背中が疲れちゃう。

    あと、必ず左手でマイクを持つこと。左手でマイクを持ち、右手で手の動きや表現をつけることはできるのに、右手でマイクを持つと左手は何もできなくなっちゃう。だから、デュエットをする時は、自分が左の立ち位置にいて左マイク、パートナーは右の立ち位置で、右マイクでいてほしいんです。お互いをすぐに見られて、ビジュアル的にもいい。奇しくも、鈴木聖美は右なんですよ。

    ── お姉様の影響はとても大きいのですね。

    鈴木 お姉ちゃんは小学生の頃からアメリカン・ポップスを聴いていたり、レコードを買ったりしていましたから。音楽的な面白さみたいなことを教えてくれたのは、確実に鈴木聖美だと思います。’60年代のR&Bを彼女の隣で座って聴いていると、英語の歌詞をヒアリングしてカタカナにしてくれて、その曲を「一緒に歌ってみるかい?」と言ってくれる。そうやって二人で歌うことが遊びでしたから。

    オフの日は「ラヴ上等」を見たりしています

    ── いつも素敵なスーツを着ているところも印象に残ります。

    鈴木 今日のもすべてオーダーですが、テーラーメイドは絶対に大事だよね。もし、ものすごく気に入った吊るし(既製品)のスーツであったとしても、いつも衣装を手がけてくれているスタッフたちに委ねて、丈や裾など全部を自分なりのサイズにしてもらいます。手の長さ一つとっても、左と右で違いますからね。

    吊るしの衣装は、どこか服に着られちゃうようなところがあるけれど、いかに上手く着こなせるかどうか。ただ、スーツに限らず、カジュアルな着こなしやデニムとかも好きですよ。

    ── 以前、テレビに出演された時に着ていた猫柄のニットが可愛らしかったです。

    鈴木 あれ、よかったでしょ? ファッションが好きなのも、お姉ちゃんの影響が大きくて。俺の成人式に着ていく服をコーディネートしたのは鈴木聖美なの。「雅之、ちょっと行くよ」と言われて一緒にお店に行ったら、薄紫色のスリーピースに、白のロングコートを選んでくれて。

    今考えたら、まるでプリンスのような格好だよね(笑)。中学でも、学校指定のものではなく「学生服はゴルフズボンにしなさい」と言われましたから。後ろがパッチポケットになったゴルフボールが入れられるズボンで、「キマるとカッコいいよ!」と。運動靴も「VANのスニーカーにしないとダメだから」って。そんなだから先輩に目をつけられるんだけど、「お前、鈴木聖美の弟? わかった」で終わる(笑)。

    中学3年になると、学生服を仕立てていましたね。地元の近くの鵜の木という町に、若い頃テーラーで働いていた職人のおじさんがいて作ってくれるの。勉強するより、そういうことのほうが好きだったよね。

    ── 中学時代からすでに美学をお持ちだったのですね。

    鈴木 そこに友達を巻き込んで楽しむのも好きだった。高校の時、週末に踊りに行くために、みんなで揃いのコンポラスーツ(1960年代にアメリカ西海岸で流行したタイトなスーツ)を仕立てようとかね。

    そう、当時、『ソウル・トレイン』という、ブラック・ミュージシャンたちが出るアメリカの音楽番組があって、出演しているダンサーのステップをみんなで一生懸命覚えて、六本木や新宿に踊りに行っていました。知らないうちにシャネルズを作る原点的なものを、実は高校時代から遊びの一環としてやっていたんだよね。当時から今に至るまで、ずっとブレずに好きなことをしているんだと思います。

    ── 最近は、プライベートの時間は何をされていますか?

    鈴木 普通ですよ(笑)。ネットフリックスで『ラヴ上等』を見たりとか。

    ── えっ!?

    鈴木 シーズン2ができるという噂を聞いたので楽しみです。

    ── ちなみに、推しのメンバーはいますか?

    鈴木 はははは(笑)。最初に席に座っていた、つーちゃん。昭和というか、アナログ的な雰囲気を出す人だから安心できるんだよな。レコードに針を落とした時にスピーカーから聞こえてくる温かさみたいなものが、彼にはあるのかなと。

    ── では、最近食べて美味しかったものを教えてください。

    鈴木 ナチュラルローソンのホワイトトリュフが入っているポテトチップス。ワインと一緒にね。映画を観ながらあっという間に半分くらい食べて、あ、やばい! ってなったりしていますよ(笑)。

    ── ラヴソングの王様を急に身近な存在に感じてしまいました(笑)。最後に、アンアン読者に、人生の先輩としてアドバイスをいただけないでしょうか。

    鈴木 単純だけど、自分にとっての本当に大切な友達を作ってほしいです。歳を重ねる中で残っていく友達って強いからね。自分の空気を抜いてくれるし、相手の空気を抜くこともできる。相乗効果で何かを頑張ろうという気持ちにもなれる。

    たとえば、幼稚園から一緒の桑野(信義)は、大病を克服して、昨年は一緒に元気にツアーを回れたわけだから。本当にありがとうという気持ちになった。「ありがとう」と言い合えるような友達は、大事だと思いますよ。

    Profile

    鈴木雅之

    すずき・まさゆき 1956年9月22日生まれ、東京都出身。'80年にシャネルズとして『ランナウェイ』でデビュー。'83年にラッツ&スターに改名、「め組のひと」などを生み出す。'86年にソロデビュー、『もう涙はいらない』などをリリース。「masayuki suzuki taste of martini tour 2026 Step123 season2“70 / 40th anniversary”」が6/14スタート。

    information

    『MARTINI DUET DELUXE』

    デュエット・ソングの集大成となるアルバム『MARTINI DUET DELUXE』が発売中。Disc1には渋谷凪咲と歌う令和版「渋谷で5時(2026Ver.)」や、松たか子との「幸せな結末」をはじめとする華やかな全11曲を収録。Disc2は姉である鈴木聖美との珠玉の楽曲を、Disc3ではアニメ主題歌のデュエットソングを楽しめる。【通常盤】¥6,600 【初回生産限定盤】¥7,700(ソニーミュージック)

    写真・内田紘倫(The VOICE) インタビュー、文・重信綾

    anan 2492号(2026年4月15日発売)より
    Check!

    No.2492掲載

    自力をつける、スキルアップ 2026

    2026年04月15日発売

    「スキルアップ」特集のテーマは“自力をつける”。生成AIのプロンプト指南や語学アプリでの学習法、タイムマネジメント術など、楽しみながら自分を高めるスキルアップニュースを紹介。

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