伊澤彩織「作品や役によって戦う意味はさまざま。だからこそアクションは面白い」

伊澤彩織さん

スタントパフォーマーとして数多くの作品に携わり、『ベイビーわるきゅーれ』シリーズなど俳優としても活躍する伊澤彩織さん。人を魅了してやまないアクションの秘密や、気になる内面に迫りました。


柔らかな雰囲気を纏いながら、繰り出すアクションは泥くさくて圧倒的。スタントパフォーマーであり、俳優の伊澤彩織さんは、唯一無二の強いコントラストで多くの人を惹きつける。先日発売されたフォトブック『伊澤彩織PHOTO BOOK PLAYer1』にも、彼女の多面的な魅力や表情が贅沢に収められている。

── フォトブックのコンセプトを教えてください。

伊澤彩織(以下、伊澤) 最初に編集の方と打ち合わせをした時に、過去の経験のことなどすごく真摯に聞いてくださって。その時に言っていただいた「最後に安らげる場所を求めて旅をしているみたいですね」という言葉が自分の心にフィットして、そういうことを写真から感じられる一冊にしようと思ったんです。秘密基地感や、一人で旅をしているようなニュアンスを目指しました。

── 撮影は2日間で行われたと聞いて驚きました。

伊澤 晴れたり雨が降ったりといろいろな天候に恵まれたおかげで、雰囲気の違うシチュエーションで撮影ができました。ロケ地は千葉の九十九里町です。乗馬クラブがあって、当初、馬に乗ってみたい、放浪というイメージにも合うからと選んだんですけど。結局、馬よりも、大好きなバイクで移動するほうが自分らしいなと思ったので、馬には乗りませんでした(笑)。

キャンピングカーで撮影したのも楽しかったですね。『イントゥ・ザ・ワイルド』とか、『エル・マリアッチ』みたいなロードムービーが好きで、そういう切り取り方をしてもらいました。逃避というものに憧れがあります。

── バイクがお好きなんですね。

伊澤 今は手放しているのですが、以前は移動で使うことも多くて。静岡での撮影があるとバイクで行ったりしていました。疾走感や、ちょっと危ない部分も含めて、一人で風を切る瞬間の気持ち良さみたいなものがいいですね。スノボとも似た感覚で、その2つでしか味わえない充実感があります。また乗りたいですね。以前は旧式のキックスターターに乗っていたので、次はボタンでエンジンがかかるセルスターターのものにしたいです。

── 印象に残っている撮影中の出来事はありますか?

伊澤 水中のカットは突発的に撮った実験写真みたいなもので、スタッフのみなさんと「どうなるかわからないよね」と話しながら作りました。ほかにも、森の中に鏡を置いて撮影したり、なるべく“自分時間”みたいな感じを出したくて、マイギターや実家のワンちゃんと一緒のシーンも。素敵なお洋服もたくさん着させてもらったし、いいチームで、いい環境で、いろいろな表情を切り取っていただいて。本当に思い出がいっぱい詰まった一冊になりました。

── 映画『るろうに剣心 最終章The Final/The Beginning』をきっかけに親交が始まった俳優の佐藤健さんとの対談や、アクション監督である園村健介さんからのメッセージも収録されています。

伊澤 佐藤さんは、ずっと作品のためにエネルギーを燃やし、常に自分の技を磨いている人。見ていると背筋が伸びる、憧れの存在です。一度、アクションというものに対して感じていることを話した時に、またアクションをやりたいと思っていると教えてくださって。その時にまた呼んでもらえる人間でありたいし、まだアクションはやめられないなと思ったんです。

園さんにいただいた言葉もすごく嬉しくて。こうしてお二人から背中を押してもらうことで、自分もまだ、何かやるべきことがあるかもしれない、もう少し踏ん張って頑張ってみようと思いました。これからの活動の原動力になるような言葉を、フォトブックの中に残すことができて、すごくありがたいです。

── スタントパフォーマーの道を選んだきっかけを教えてください。

伊澤 学生時代にアクションの現場に手伝いに行かせてもらう機会があり、アクション部という存在自体が面白いと思って、アクション部から見た作品への関わり方をもっと知りたくなったことが大きいです。「え、痛くないのかな?」みたいなことも含めて、すごく興味が湧いたし、素晴らしい先輩たちの背中を追いかけてみたいなと。

アメリカのSFとか、『ホーム・アローン』もそうですが、アクション映画とされていない作品にも派手なアクションシーンがあって、スタントマンという存在も広く認識されています。一方で、日本の作品でスタントマンという存在を意識することは少なく、隠されているように感じるところもあるなと思いました。

スタントやアクション部とひと口に言っても現場での動きはマルチで、制作陣としての作り込みみたいなこともするし、パフォーミングじゃない部分の仕事にも面白さを感じました。仕事にできるとは思っていなかったけど、やってもやってもできないことばかりなのが楽しくて、飽きなくて。なんでかな、ずっとここまで続けてきました。

── ちなみに、やっぱりアクションは痛いのでしょうか…?

伊澤 人間のアドレナリンの凄さを身をもって体験するといいますか。アクション部の撮影では、「せーの!」と言って動きを合わせることが多くて、その声を聞くと痛みが飛ぶんです。カメラが回っていない時は痛いのに、不思議ですよね(笑)。脳科学者の方にお話を聞いてみたいです。

一番楽しいアクションはナイフ。血が滾ります(笑)

── アクションをする上で大事にしていることはありますか?

伊澤 技の綺麗さ、線で見える動きも大事ですが、綺麗すぎると面白くない時もあって。そういう場合にどれだけ崩していくかという塩梅が難しいです。あと、一つでも無意味なことを排除するクリーンさ。アクションに心情を乗せること。作品や役によって戦う意味はさまざまで、現実ではない暴力性を見せることで爽快感を与えるのか、痛々しさを伝えるのかによっても動きや表現のパターンは違うので。ずっと悩み続けているところですが、だからこそ面白いです。

── アクションの中で、得意不得意はあるのでしょうか。

伊澤 何もない空間でのアクションが一番難しくて。隠れる場所や壁があると、動きの展開が作りやすいですね。その点で『ベイビーわるきゅーれ』は難しかったです。あと、アクロバットが苦手というか大技があまりできなくて、泥くさく戦うほうを選んでいます。逆に一番楽しいのはナイフ。血が滾ります(笑)。速いリズムを刻む、スピード感ある動きが楽しいです。

── 最近、アクションがすごいと感じた作品を教えてください。

伊澤 今、韓国ドラマにハマっていまして。一つは『魔法のランプにお願い』。魔神のジーニーがサイコパスで感情のない女性の願いを叶えようとするという物語で、結構体を張ったアクションシーンが出てきます。韓国ドラマのアクションは接近戦や、リアルで痛い感じがするものも多いんですけど、この作品では面白く使われていて、見せ方が楽しかったし爽快感がありました。『7人の脱出』も良かったですね。登場人物が窮地に陥って、それを乗り越えるためにアクションが必要になるという理由づけが上手だなって。

── 体を酷使するお仕事ですが、日々のケア方法を教えてください。

伊澤 毎日、何かしらのストレッチはしています。長い時は2時間くらいやるけれど、やる気のない時は、ストレッチ用の棒みたいなものをふみふみして終わることも(笑)。体と向き合って、どこが悲鳴をあげそうかということは意識するようにしています。ストレッチやヨガが救ってくれるものは大きくて、これから勉強したいことでもありますね。あと、自分に足りていない栄養素を理解して、サプリやスパイスで摂るように。そう、アミノ酸は私に限らず、足りていない人が多い栄養素らしく、その大切さ、普及していきたいです(笑)。

── ご自身にとってのターニングポイントはいつでしょうか。

伊澤 『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』にアクション部として関わらせてもらったこと。そして、俳優として『ベイビーわるきゅーれ』を4作品やったことですね。命をかけて取り組んだことで自分の糧になったし、参加しなければ全然違う人生だったと思います。

── 今後の目標を教えてください。

伊澤 今回のフォトブックに携わってくださったみなさんをはじめ、これまでお世話になったり、自分の人生を面白くしてくれた人たちとまたご一緒して、恩返しをしていくことですね。友達もそうですが、思考がとっ散らかってしまったり、気持ちが落ちた時に、誰かしら救ってくれてる人がいたことで、生き延びてこられたので。

── プライベートでやってみたいことはありますか?

伊澤 中学の同級生で俳優をやっている友達がいて、その子とアクセサリーやケーキを作って遊んでいるんですけど。それを二人だけの楽しみにしないで、みんなで一緒に作れるような空間を作りたいなと思っています。誰かが用意してくれたものではなく、自分で場を作ることに興味があります。

── 楽しそうです! 今のご自身はどんな人だと思いますか?

伊澤 自分一人で考える時間が必要な人かもしれません。一度、立ち止まって冷静になる時間を作らないと、違和感とかモヤモヤすることをごまかし続けてしまうといいますか。もちろん、友達や誰かと話す時間も必要で、インプットとアウトプットの時期を交互に繰り返しています。

今は、体と言葉の関係性に興味があって、自分やみんなの体のためにできることを増やしていけるといいなと思っています。もう無理だなとかダメだなみたいな瞬間も結構、多いんですけど、なんとか乗り切ってやっていきたいですね。みんなで何とか生き延びましょう。本当に、よく生きているなと思うし、「みんな偉い!」って言いたいです。

Profile

伊澤彩織

いざわ・さおり 1994年2月16日生まれ、埼玉県出身。日本大学藝術学部映画学科在学中に映画『RE:BORN』の研修生オーディションを受けたことを機にスタントの道へ。映画『キングダム』『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』などのスタントパフォーマーを務め、『ベイビーわるきゅーれ』シリーズで人気を博す。

information

『伊澤彩織PHOTO BOOK PLAYer1』

伊澤さん初のフォトブック『伊澤彩織PHOTO BOOK PLAYer1』が発売中。こだわりを詰め込んだ撮り下ろし写真に加え、2022年以降に本人が撮り溜めていたポートレート、俳優の佐藤健さんとの対談、恩師・園村健介さんからのメッセージも収録。ファンネーム「1」を盛り込んだタイトルも自身で考案。 ¥3,960(KADOKAWA)

写真・内田紘倫(The VOICE) スタイリスト・八尾崇文 ヘア&メイク・赤井瑞希 インタビュー、文・重信綾

anan 2485号(2026年2月25日発売)より
Check!

No.2485掲載

エンタメの系譜 2026

2026年02月25日発売

日本エンタメ界で長く人気を誇る“王道”エンタメの現在地を深掘り。若手のブーストステージ『教場』をはじめ、再注目を浴びる時代劇や特撮戦隊ヒーロー、ラブコメの魅力も考察。5月で閉場する大阪松竹座ゆかりのグラビアも必見。さらに、現在ボーイズグループオーディションを手掛ける秋元康さんにもロングインタビュー。スポーツエンタメの頂点ともいえるメジャーリーグに関するページも。

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