意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「グリーンランド領有」です。
奪われてきた文化、歴史。先住民の生活を最優先に
トランプ大統領がグリーンランドの領有に強い意欲を示しています。グリーンランドは北方民族の領域。イヌイットの祖先はモンゴロイドで、顔つきも日本人によく似ているんですね。
グリーンランドのなりたちは、紀元前2500年頃から先住民族が定住し、10世紀頃にバイキングが入植、18世紀初頭からはデンマークの植民地となり、1953年にデンマークの一地方に移行、1979年に自治権を獲得し、デンマーク王国の自治領になっています。
植民地支配下では土地の言語が奪われ、断種のようなこともさせられ、北方民族の文化は奪われていきました。
北極圏にはレアアースやウラン、亜鉛、鉄鉱石、ニッケル、コバルトなどの天然資源が豊富にあり、アメリカや中国をはじめ、ロシア、ヨーロッパもグリーンランドに意欲的に関わろうとしてきました。大地が厚い氷で覆われており、これまで開発が難しかったのですが、気候変動により急速に調査が進められるようになってきたのです。
トランプ大統領は住民への一時金によるグリーンランド買収を提示していますが、グリーンランドの最大与党イヌイット友愛党の議員は強い言葉で否定し、「私たちは売り物ではありません。固有の権利と主権国家があり、それで十分。NATOに守ってもらうよう交渉している」と話しました。
ただ、アメリカもNATOの一員なので、一筋縄にはいきません。日本に対しては「私たちの自治と民主主義を支えてほしい。土地や言語、文化を尊重し、支援してほしい」と話していました。
漁師の方に取材をしたところ、「私はイヌイット。デンマーク人でもアメリカ人でもない」と前置きし、「トランプ氏の発言は、私たちへの敬意を欠いている」と強い憤りを示していました。ただ、グリーンランドの魚はデンマークに安く買い叩かれており、経済的に厳しいという実情があります。
自治は認められているものの、先住民の暮らしは大国に搾取されており、困窮している。そこにアメリカは目をつけ、買収を持ちかけています。デンマークが本当にグリーンランドを守りたいのなら、土地の人々の暮らしをまず守るべきなのではないでしょうか。
五月女ケイ子解読員から一言

国をお金でモノみたいに買うなんて発想、よく出てきますよね。まるで、ゲームか映画の住人のようなトランプさん。自然と共に生き、資源を有効に活用する重要性を知るイヌイットの生き方は、未来に向けむしろ守り見習うべきなのではと思うのです。
解説員
Profile
堀 潤
ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜20:00~21:00)が放送中。著書『災害とデマ』(集英社)が発売中。
解読員
Profile
五月女ケイ子
そおとめ・けいこ イラストレーター。楽しいグッズが買える、五月女百貨店が好評。細川徹との共著、ゆるくておバカな昔ばなし『桃太郎、エステへ行く』(東京ニュース通信社)が発売中。
anan 2487号(2026年3月11日発売)より












