
世界中の様々な研究機関や研究者が証明してきた科学的根拠をヒントに、生産性をアップできるコツをレクチャー。
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脳が自然と活性化される環境を整えてあげること
いつも仕事の時間やタスクに追われて、自分磨きの時間を捻出できない…。「それは情報過多と整理不足で、脳がキャパオーバーな状態になっているから」と、言語学者の堀田秀吾さん。
「そもそも脳は非常に燃費が悪い臓器なんです。新しいことを始めたり、複数の選択肢からつをチョイスしたり、何かを長く続けたりすると、多くのエネルギーを消費して、脳は疲労しきってしまいます。だから情報を整理し、ちゃんとスケジューリングして動きやすい環境を整えてあげれば、脳はしっかり働いてくれるようになります」
ついついやるべきことを先延ばしにしてしまうのは、単なる怠けではなく、脳の特性かも。それを認識した上で、“まずはやってみること”が大事だそう。
「脳のやる気は、『側坐核』という脳の部位で生み出されます。これはスイッチではなく、エンジンのようなもので、側坐核を刺激すると、脳が活性化され、今やっている行動に最適化してくれます。
しかし、それでもやりたくないという気持ちが勝ってしまう場合は、脳が自然と働きたくなるような環境を作ってあげることが必要。そのために様々な研究により科学的に証明された作業効率を上げる方法や習慣を身につけるだけで、脳が働きやすくなり、タスクや時間に追われることが少なくなります。
さらに脳がリラックスすると、穏やかな感情をもたらす『α波』が出ます。この脳波は、創造性や新しい情報を吸収する能力を高めてくれる効果もあるので、スキルアップやモチベーションの向上にも繋がります」
① やるべきことを見える化する
生産性ハック
複雑な情報を全て書き出して整理することが脳を動かす第一歩。
脳の性質上、頭の中で整理するのは苦手なので、必ず書き出して可視化しよう。
「やることがたくさんあると、忙しいという気持ちだけが先走り、脳がそれに追いつかずにいっぱいいっぱいな状態に。だからまずは、作業内容や進捗を視覚的に把握することから始めてみましょう」(堀田さん)
TODOリストを作成したり、付箋に書き出してPCの横など、目につく場所に貼っておくのがおすすめ。また、誰かに進捗状況を報告するのも有効。
② タスクに優先順位をつける
スティーブン・R・コヴィーの提唱

「時間管理マトリクス」で、タスクの緊急度と重要度を整理。
時間を無駄にしないためには、「緊急度」と「重要度」の2軸を使ってタスクを分類すること。「優先順位の高いタスクから順番に対応していくことが大切」。そのために上記のような「時間管理マトリクス」で、緊急度と重要度ごとにタスクを4つの領域に分けてみよう。
「最初に着手すべきは緊急度、重要度の高い第Ⅰ領域のタスク。第Ⅱ領域は先にスケジュールに入れて時間を確保し、第Ⅲ領域は他人に任せるか断る、第Ⅳ領域はやめる努力を」(堀田さん)
③ 重たいタスクは朝や午後イチに
ゴールデンタイム
一日の中で、脳が最もフレッシュに働く時間にやるべきことをやる。
人の集中力は、脳の生理的リズムに沿って周期的に変動する。それが最も高まる時間に、その日一番こなすべきタスクをやると、生産性もクオリティも向上する。
「それが目覚めてから約3時間と、昼食後の午後イチ。脳はより得意なこと、偶然目に付いたことを優先してしまう傾向があるため、この最も脳が稼働する時間を有効活用して」(堀田さん)
テクニック2で紹介した「時間管理マトリクス」内の第Ⅱ領域のタスクを、このゴールデンタイムに行うのも手。
④ マルチタスクをやめる
タスクスイッチング
複数の作業を同時並行すると、生産性が最大40%もダウンする!
「提案書を作成しながら、メールやチャットの返信をしたりと、最近は同時に複数の作業を行うことが当たり前になっていますが、実は脳はマルチタスクに適しておらず、切り替えながら行うことで効率が大幅に低下することがわかっています。さらに記憶力が低下し、ミスの発生率も増えます」(堀田さん)
シングルタスクを徹底して行う方が高パフォーマンス!だからメールなどの返信は、一つのタスクとして考え、その時間を別に設けるのがおすすめ。
⑤ 25分集中して、5分休む
ポモドーロ・テクニック
定期的に脳を休ませて、集中と休憩のメリハリをつける。
人間の集中力の持続時間は15~30分程度だとか。
「この研究結果を基に、実践的な時間管理を仕組み化したのが、“25分の作業時間と5分間の短い休憩を繰り返す”というもの。定期的に脳を休ませる時間を設けた方が、結果的に集中力が維持しやすく効率よく走り続けることができます」(堀田さん)
5分の休憩中にスマホを触りたくなるが、刺激が強すぎて脳の休息にはならないため、代わりにストレッチしたり、チョコを食べたりガムを噛むと、脳が活性化する。
⑥ 脳の疲れを感じたら目を閉じる
マイクロブレイク
5分間目を閉じて、視覚情報を遮断すると、脳がリラックスする。
「NASAの研究で、睡魔により脳の動きが鈍くなったら約26分仮眠をとると、パフォーマンスが34%向上することが明らかに」(堀田さん)
ただ仮眠できない環境で働く人も多いので、その場合は目を閉じるだけでも有効。
「目を開いているだけでたくさんの情報が入ってきて、脳は疲弊します。だから目を閉じて脳を休息させてあげましょう。5分間目を閉じるだけで脳が休まり、覚醒度と集中力が向上するだけでなく、α波が増えてストレスも和らぎます」(堀田さん)
⑦ 締め切りは早めに設定する
パーキンソンの法則
仕事は完成のために与えられた時間いっぱいまで膨張しがち。
人間の特性として、本来短時間で終わる仕事でも、リミットまでまだ時間があると思うと、その時間にできるだけ近いところで終わらせようとするそう。
「夏休みの宿題を最終日にまとめて片付ける人が多いのもこの特性のせい。人は時間があると思うと、無意識にブレーキを踏むため、締め切りは早めに設定すべき」(堀田さん)
時間が足りないくらいの方が集中力も増し、脳は今ある時間を最大限に使おうとフルで動いてくれるので、サクサクこなせて効率的。
⑧ あえてキリの悪いところで終わらせる
ツァイガルニク効果
人は“終わったこと”よりも“中断してしまったこと”を強く記憶し、注意を向け続ける傾向がある。
「だからあえてキリの悪いところでやめると、早く終わらせたいという気持ちが働いて、次に取り掛かる時に集中力を取り戻しやすくなります」(堀田さん)
30分以内で終わる短いタスクなら終わらせた方がよいが、長期タスクの場合は、長々と続けるのは避けるべき。いったん仕事を手放すと、再開時に一気にギアが入り、結果的に早く終わらせることができる。
お話を伺った方
堀田秀吾
言語学者。明治大学教授。様々な学術的分野の研究をベースに、日常をラクにする工夫を発信。また企業の顧問やワイドショーのコメンテーターなど、研究以外の活動も積極的に行う。『科学的に証明されたすごい習慣大百科』(SBクリエイティブ)など、著書多数。
anan 2492号(2026年4月15日発売)より
















