お笑いカルテット「ぼる塾」の酒寄希望さんが、本屋さんで気になった本を紹介していく月1連載の第6回をお届けします!


Profile

酒寄希望

さかより・のぞみ 1988年4月16日生まれ。お笑いカルテット「ぼる塾」のメンバーで1児の母。ぼる塾のブレーンとしてネタを書いて舞台に立ちながら、子育てエッセイや作品レビューなど執筆業でも活躍中。著書に『酒寄さんのぼる塾日記』(ヨシモトブックス)など。noteにも投稿中。最近は香港映画にハマり、現在190本以上鑑賞。note

ある日、わたしは自宅の本棚を眺めていて驚きました。ある特定のジャンルの本を全て一目惚れで買っていたのです。その特定のジャンルとは、自己啓発本。どの本も偶然本屋で見かけて、そのタイトルに強烈に惹かれて買っているのです。

今回紹介する本もその中の一冊です。別の本を買うためにレジに向かっていたところ、たまたまこの本の前を通りました。ちらりと見ただけで終わらせようとしたのですが、結局わざわざ戻って手に取ってレジに向かいました。それくらい一瞬見たタイトルには吸引力があったのです。

「わたしという人間にずっと必要だった本だ!」

『感情的にならない本』著・和田秀樹(PHP文庫)

もうシンプルにタイトルに一目惚れです。一目惚れというか必要だったのです。ボーイミーツガールならぬ、酒寄ミーツ感情的にならない本。頭の中でTRFが流れました。

わたしは幼い頃から感情的になってしまう自分の性格にとても苦しめられていました。大人になり、「感情的な人間は恥ずかしいし周りに迷惑をかける」という学びを得て、なんとか感情的にならないように自分を抑えつけるようにしていますが、自分を落ち着かせられるようにきちんと考えた方法ではなく、

「恥ずかしいだろ! 迷惑をかけるな!」

というように、パワーで無理矢理制圧しているので非常にしんどくなります。さらに、制限していても親しい人にはたまに感情的な自分を押しつけてしまうなど、このやり方ではいつか駄目になってしまうと悩んでいました。

「この本にわたしの望む答えがあるかも!」

わたしは藁をも縋る思いでページをめくりました。今回は、もう結論から言わせてもらいます。

買って良かったです! 想像以上に求めていた答えを大放出してくれていました!

まず、読み始めてすぐに重要な情報を伝えてくれるので、読書が苦手な人や結論を早く知りたい人でも無理なく読めます。本の最後に学ぶような大切なことをいきなり教えてくれるのです。

「最初に教えてくれるならその後はそれにまつわる説明が続くってこと?」

いいえ、違います! 大体2ページから4ページくらいの短さでひとつの問題を提起して解決してくれるのです。この短さでこの充実した内容は、まさにショートショートの小説を読んでいるような気分になります。感情的な人間が悩まされる問題が全6章に分かれており、それぞれの章をさらに細かく区切って10前後のパターンに分けて丁寧に解説してくれているのです。

さらに、著者である精神科医の和田先生が書かれる文章から感じられる人柄が素晴らしいです。読者との距離感が非常に心地よいです。和田先生は、自身も感情的な人間であるとプロローグで打ち明けてくれ、その悩みがあるあるすぎて共感しかありません。決して上から目線ではなく、同じ悩みを持つ人の為に自分で試して良かった方法を伝える為に作られた本。失礼ですが先生というより長年共に戦ってきた仲間の気分になりました。

具体例をあげて説明したいのですが、この本を読んだときの衝撃はすさまじく、ぜひ初見でこの本の内容を知って欲しいという気持ちがあり、どうするべきか今書きながら悩んでいます。和田先生の感情的な自分と向き合う方法は、全く知らなかった新しい発想ではなく、誰もが知っているけど重要視していない出来事に改めてスポットライトを当てて紐解いていき、結果納得して心が救われるのです。みんながわかっているけど気づいていない部分を用いて解決していくので非常に気持ち良いです。

例えば、和田先生の教えてくれた法則にこんなものがあります。

『感情は○○○おけばだんだん収まってくる』

ぜひ、わたしと同じ体験をして欲しいので大事な部分は伏せ字にしますが、わたしはこの一言を見たときに衝撃をうけ、「そうだ、そうだよ! その通りだった!」と、心のもやもやが一気に晴れました。正直、この一文を知ることができただけでこの本を買って良かったと思えるほどの発見だと思います。

この本を読んでいると、

「わたしは感情的ではないから大丈夫!」

そう考える人も実は感情的な人間に当てはまっているのではないかと思うほど、人が感情的になるパターンがさまざまあります。イライラして人に当たってしまうような攻撃的な人もいれば、後悔を引きずっていつまでもクヨクヨしてしまう人も感情的な人間です。友達と会う約束をしていたけど、いろいろ考えていたら楽しみだったのに会うのが憂鬱になってきたなんて人も実は感情的な人間なのです。自分はどのような感情的な人間なのか改めてチェックするのも大事なことかもしれません。意外と気づけていない感情的な行動は多くあります。

また、この本は感情的な人と向き合う為の本なので、自分自身だけではなく、感情的な人と接するときはどうすることが有効的かについても学べます。相手を直すよりもこちらの自衛が大事な現代社会でこの本はとても役立ちます。

最後に。和田先生のさりげない言葉で、とても救われたものがあるのでそちらを引用して終わりたいと思います。

『あなたが笑えばホッとする人がいます』

この本は決して感情的になること自体を悪だととらえていません。そんなところも好きです。

こちらにも、一目ぼれ!

『カッパのカーティと祟りどもの愛 1 』 著・宮崎夏次系(マガジンハウス)

宮崎夏次系さんの漫画は新作が登場するたびに毎回一目ぼれをしてしまいます。

描かれる作品はどれもこれも独特で、唯一無二の世界。わたしは密かに思っています。宮崎夏次系さんが本当は人生を何周もしていて、漫画という形にして読者にこの生きづらい世の中の正しい生き方を教えてくれているのではないかと。それくらい宮崎夏次系さんの漫画はすごいのです。

『カッパのカーティと祟りどもの愛』は、それをより強く感じました。主人公の口酒 祝(くちさけ・いわい)は、笑った顔が化け物みたいだと気味悪がられ、友達がひとりもできないまま大人になりました。ある日、彼女のたった一人の味方であったおじいさんが亡くなってしまいます。そんなとき、彼女の目の前に関西弁を話す幼いカッパが現れるのです。そこから彼女は神様や化け物、妖怪に悪霊など様々な不思議な出来事と巡り合い、事件に巻き込まれていきます。その出会いには、もちろん、人も含みます。

この物語を読んでいると、ありえないのにどこかすぐ近くで実際に起こっていそうな気がしてきます。悲しいのになぜだか笑いたくなります。とても絶望するのに大きな希望を感じます。自分の心の中に心地よい矛盾を感じるのです。わたしはそこがこの作品の素晴らしいところのひとつだと思います。現実的ではないはずなのに、現実的なところがまさにわたしが生きている世の中に似ていると感じるからです。

ぜひ宮崎夏次系ワールドを体験していただきたいです!

『ハムおじさん』  作・絵・ 大桃洋祐(徳間書店)

可愛い~! 表紙のあまりの可愛らしさに思わず一目ぼれしてしまいました!

相方の田辺さんと本屋さんにいるときにふたり同時に心を射抜かれました。人間相手だったら恋のライバルですが、絵本だったのでセーフです。

見てください! 表紙に描かれたこの魅力あふれるおじさんを! 帽子をかぶったぷっくりとしたおじさん! 蝶ネクタイをしておしゃれなおじさん! 世の中に可愛らしいおじさんはたくさんいますが、このハムおじさんはトップレベルの可愛さではないでしょうか?

『ハムおじさんは ひんがよくて ものしずかな しんしです。ミートボールという なまえの ねこ とくらしています』

物語の最初のページのハムおじさんの説明だけでもうワクワクしてきます。

この作品は、ハムおじさんの愛用の時計が壊れてしまい、坂の上の商店街に修理にいくところから始まり、そこからあっと驚く事件が発生します。まさか読み始めたときはそんな展開になるとは思いませんでした。わたしはハムおじさんが巻き込まれる事件がものすごく大好きで、あまりのハムおじさんらしさに抱きしめてあげたくなりました。ちょっと罪深いほどに可愛すぎます!

そして最後の1ページが天才的な終わらせ方!芸人として日々オチを考えて暮らしている身としては、この終わらせ方は見習いたいです。全ページポストカードにしたいほど可愛いので、自分用にも贈り物にもぴったりな絵本だと思いました。

酒寄さんの一目ぼれ読書記録・連載バックナンバー

第1回『そりゃあもう いいひだったよ』

第2回『アンソロジー カレーライス!!大盛り』

第3回『壇蜜』

第4回『パリのすてきなおじさん』

第5回『炒飯狙撃手』

写真・中島慶子(本) 文・酒寄希望

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