要潤「与えられた役を、ただ一生懸命やる。その気持ちをずっと大事にしています」

『仮面ライダーアギト』でデビューを果たし、以降さまざまな作品に出演されてきた要潤さん。25年のキャリアの中で紡いできた、要さんの俳優としてのこだわりと眼差しに迫ります。

Index

    大人としての価値観や生きる上での姿勢全て氷川誠から学びました

    映画『アギト―超能力戦争―』は、要潤さんのデビュー作『仮面ライダーアギト』(以下『アギト』)の25年ぶりの新作。今作の主人公・氷川誠は、TVシリーズ放送当時、20歳の要さんが全身全霊で向き合い、作り上げたキャラクターでした。その存在は彼の中から消えることなく、その後の俳優人生にも大きな影響を与えたようで…。

    ── 25年ぶりに『アギト』の新作が作られることになった経緯をお聞かせください。

    要潤(以下、要) 『アギト』の警視庁メンバーとは番組が終わってからも定期的に会っていて、たまたま去年、いつものようにみんなで焼き肉に行った時に、誰からともなく「来年で25周年だね」という話になって。僕らもお酒が入っていたので、「映画でもやりましょうよ」みたいに盛り上がっていたら、プロデューサーさんが結構真剣に受け止めてくださって、「いつなら撮れる?」みたいな感じでトントン拍子に話が進んでいきました。

    そうやって身内で盛り上がった延長で映画を作っていいのかなと最初は思っていたんですが、いざ発表されたらSNSでもすごく賑わっていて。僕は、25年間ずっと氷川誠と一緒に歩んできて、片時も自分の中から彼が消えることはありませんでしたが、世間の方々も同じ思いでいてくれたんだというのが嬉しかったですね。

    ── 当時から皆さん仲が良かったんですか?

     そうですね。年齢は離れていますが、キャリアでいうとそこまで大差なかったんです。もちろん僕はデビュー作でしたし、歳も一番下だったので、皆さんに頼ってばかりだったんですが…。

    ── チームの末っ子のような感じだったのでしょうか?

     本当にそんな感じでした。自分のお芝居のできなさに落ち込む毎日でしたが、周りの人に支えてもらいました。撮影終わりによくごはんに行ったりしていましたし、そこで団結力も高まって「あのシーンはこうしよう」みたいな話ができるようになりましたね。1年間、早朝から夜中までずっと一緒にいたので、まさに家族みたいな関係になっていましたね。

    ── 素敵な間柄ですね。新作もいざ始まって『アギト』の世界に帰ってきたなと実感されたのはどんな瞬間でしたか?

     衣装合わせで大泉(東映の撮影所)に行った時ですね。当時のスタッフの方たちがたくさんいらっしゃって、「うぃー」なんて覗きに来て、「お久しぶりです!」みたいな(笑)。母校に帰ったような感じでしたね。25年経っていますけど、みんなのテンションが全然変わっていなくて、「ああ、帰ってきたな」と感じました。

    ── 改めて、氷川誠という人物の魅力というのはどういうところだと思われますか?

     25年前とは世の中が変わって、価値観も変わりつつありますけど、人間の大事な部分は変わっていなくて…正義感であったり、平和を願う心であったり。そして、氷川はそれらの象徴のような人物だと思うんですね。だから僕も俳優として生きていく上で、氷川をいつも思っていました。人を傷つけてはいけないとか、自分を犠牲にしてでも誰かを守るんだという思いを、いつも持つようにはしています。1年間ずっとなんとか氷川に追いつきたいと頑張っていたので、それが今も残っていますね。

    ── ご自身と重なるところはありますか?

     ありますね。諦めずにとことん突き詰めるところとか。“努力をする姿を人前で見せるのはちょっと恥ずかしい”みたいなところって、人間誰しもあると思うんです。でも、氷川誠はそうではない。敵に負けたとしてもその負けを認めるし、次にまた強くなるために努力をするし。そういう姿がかっこいいし、だから自分もそういうふうに生きようと。僕はその時まだ20歳で、大人としての価値観とか生きる上での姿勢みたいなものがなかなか固まらなかった時期だったんですけど、それを全部教えてくれたのが氷川誠でした。

    ── 演じた役に囚われないようあえて忘れるという方もいらっしゃいますが、そうではないんですね。

     役としても氷川を超えるものはなかなかないですね。当時は、本当に集中して、全精力を注ぎ込んでお芝居していましたけど、そこにさらに外からの力が加わってより力を出せた記憶があります。人間って、外側からの働きかけがないと、持っているもの以上の力が出ないと思うんです。自分は100%やったと思っても「もっとこうして」と監督に指示をもらうことで、価値観や表現の幅がふっと広がる…。100が120になった瞬間がTVシリーズの時には毎日のようにあって、それは今ではなかなか得難いものだと思います。

    ── 皆さんがそれだけ真剣にお芝居に向き合っていたから『アギト』は今でも愛され続けるのでしょうね。ご自身ではこの作品の面白さというのはどういうところにあると思われますか?

     キャラクターのバランスの良さ、でしょうか。映画やドラマは、キャラクターそれぞれの持ち味のバランスがしっかりとれていないと見づらいと思うんです。見ている側が「自分はこの人だ」と共感できたり、感情移入できる人物がいないと、置いてけぼりを食らったように感じてしまう。

    でも『アギト』は、どのキャラクターもしっかりと立っているんですよね。脚本の井上敏樹先生もおっしゃっていましたが、やはりサブキャラクターが面白いからこそ作品が成り立っているんだと。圧倒的な主役のパワーというよりも、むしろサブキャラクターの力が強いというのは僕自身も感じますし、皆さんもそこに面白味を感じてくださっているのではないかと思います。

    実は不器用なんです。見た目とのギャップは自分でも感じています

    ── 氷川は豆腐を箸でうまく掴めないなど、不器用なキャラクターとして描かれていますが、どういう経緯でああいうキャラクターになったかはご存じですか?

     井上先生は役者に会ったらすぐその人の本質がわかるみたいで、お芝居に対して不器用だった20歳の僕を見て、「彼にこういうことをやらせたら面白いんじゃないか」「こういう面を持っているんじゃないか」というものを描かれたのではと思います。僕自身、実際不器用でいろんなことができないので、そこを見透かされたんでしょうね(笑)。

    ── あの不器用キャラで、要さんのかっこいいだけではない、味わい深さが出たのかなと感じます。その後の作品でも見た目だけではない部分を生かされている役が多いですし、そういう部分ってどこか繋がっているのでしょうか。

     僕自身もよく「部屋がすごく整ってそう」とか言われるんですけど、全然整っていませんからね。何でもできると思われがちですけど、何もできない(笑)。実は面白いことも好きですし、見た目とのギャップは自分でもすごく感じていますね。

    ── 確かに何でも器用にこなされそうな雰囲気で。それだけに、『アギト』の撮影で苦労されたというお話は意外でした。

     当時の現場は職人肌のスタッフさんがたくさんいらっしゃいました(笑)。氷川誠は一応主役の中の一人なのに、僕の芝居ができなくて、氷川のシーンがカットになったこともありました。「できねえな、もうカットだ」と、面と向かって言われたりすると、さすがに落ち込みましたね。

    ── そこで経験された学びが、その後の現場でも役立っていると感じられることはありますか?

     準備をする大切さを学びましたね。だから、手ぶらでは現場に絶対行かないです。監督やプロデューサーが表現したい思いのようなものを汲み取って、一つひとつの芝居に対して何パターンか用意をして、「こういうふうにしてほしい」と言われたらすぐに対応できるようにストックを増やすようにしています。それはもう口酸っぱく何度も言われたので、体に染み付いていますね。

    ── この25年、多種多様な作品で、さまざまな立ち位置でお仕事をされていますが、キャリアを重ねていく中で、ご自身が求められている俳優像や役割ということについてはどういうふうにお考えですか。

     そこはあまり重要視していませんね。とにかく、主役であろうが脇役であろうが、成立させるために全力を投じるわけで、自分のポジションはあまり考えていないです。与えられた役を、ただ一生懸命やるということだけですね。

    ── そういう考え方は20代の頃からずっと持っていらっしゃったのでしょうか?

     そうですね。先輩方にも言われてきたんですよ。「我々の仕事は、次が決まってるわけじゃないから。だから今を一生懸命やるしかないんだよ」「主役だろうが脇役だろうが、光るものを出せば、誰かが見てくれてる」って。

    ── では、「こういう役をやってみたい」とかそういう欲みたいなものは?

     それもないです。歌手は自分の歌を作ってコンサートを開ける、芸人さんは自分の芸を作ってテレビや舞台で披露できる。でも俳優は「この役を演じてください」と言われて初めて舞台に立てるんですよね。自発的なものがなくて、演じていなかったらただの人だ、とよく言われていて、それは僕も納得しています。

    だから、「こういう役をやりたい」みたいなものはまったくなしにしていますね。そう思っていると、全然違う役がきた時に、モードが入らなくなってしまいそうで。だから、いつもニュートラルを心がけています。一言で言うなら“演じ屋さん”ですね。「やってください」と言われたら「はい、できます」。それが一番いい形だなと思っています。

    Profile

    要 潤

    かなめ・じゅん 1981年2月21日生まれ、香川県出身。2001年『仮面ライダーアギト』でデビュー。近年の主な出演作に、連続テレビ小説『らんまん』(NHK)など。現在、大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK)に明智光秀役で出演中。映画『キングダム 魂の決戦』が7月に、劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~ CAPITAL CRISIS』が8月に公開予定。

    information

    『アギト―超能力戦争―』

    仮面ライダー生誕55周年記念作。2001年に放送された『仮面ライダーアギト』の25年後の世界を舞台に、警察官・氷川誠(要潤)が新たな戦いに臨む。ある不可解な事件が発生し警視庁のGユニットが出動。最新鋭スーツ・G6でも太刀打ちできず、氷川の力が必要だとされるが、彼は刑務所に収監されており…。4月29日全国公開。

    ジャケット ¥702,900 シャツ ¥157,300 パンツ ¥194,700(以上ゼニア カスタマーサービス TEL. 03-5114-5300)

    写真・向後真孝 スタイリスト・今井聖子(Canna) ヘア&メイク・佐々木麻里子 インタビュー、文・野村 文

    anan 2493号(2026年4月22日発売)より
    Check!

    No.2493掲載

    ジャパンエンタメの現在地 2026

    2026年04月22日発売

    発信の場のグローバル化や、表現方法の進化などで、エンタメのトレンドも目まぐるしく変化しているいま。活発な展開を見せている注目作品とその盛り上がりに迫ります。

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