左から、斎藤 工さん、江口洋介さん

記憶を失った天才少女・七瀬凛(永尾柚乃)を誘拐し“擬似親子”として逃亡する最中、身に覚えのない殺人事件に巻き込まれる新庄政宗(斎藤工)。それを追うベテラン刑事の須之内司(江口洋介)。放送中のドラマ『誘拐の日』は、3話の放送を終え、謎は深まるばかりだ。


凸凹バディに注目。「コミカルな部分も描きたい」

江口:話の展開が見えないところがこの作品の面白さでもあります。

斎藤:僕らを追う刑事たちがテンポよく動いてくれるおかげで、僕と凛のキャラクターが作られているという感覚です。そして毎話、あっという間に見終わっていて、物語に引き込む力もすごい。

江口:正義感の強い須之内は、事件の裏には大きな闇があるだろうという直感を頼りに追っていくんだけど、新庄の身元はわかっているのに、なかなか捕まえられない。今後、新庄と須之内がどういう出会い方をするのかも楽しみです。

斎藤:純然な気持ちを持ったおじさんの新庄が、ものすごくしっかりした8歳の凛に振り回されていく構図があって、事件ものではあるのですが、そういうコミカルな部分も描けたらいいと思ってやっています。

江口:本当は、連ドラでツーショットの逃亡劇を面白く見せていくのは難しいんだよね。でも、二人の役柄やその関係性からうまくやれている。

斎藤:それは深川(栄洋)監督が、従来のドラマの形を覆そうとしている意図を感じる部分でもあります。例えば監督が柚乃ちゃんに「子供の演技はナシでいきましょう」と伝えて、柚乃ちゃんも「わかりました」って。役と同じ8歳の柚乃ちゃんに、まだ学校では習っていないような言葉で演出をつけているし、柚乃ちゃんもそれに応える演技をしている。彼女のこの先の長い俳優人生にとって、意味深い作品になると思います。

江口:そして柚乃ちゃんは、現場ではムードメイカーなんだよね。

斎藤:本番前って、僕らは大先輩の江口さんを気遣ってしまうんですけど、柚乃ちゃんは「江口さーん!」っていけちゃう。それで「江口さんから滑舌が良くなる体操を習ってきた」って僕らに教えてくれるんだけど、謎のアレンジが加わってて(笑)。

江口:あはは(笑)。でも次に会った時に「滑舌の体操やってます」ってちゃんと話が繋がっているんですよ。

斎藤:年相応の雰囲気をちゃんと見せてくれて安心する半面、まだ難しい日本語や演出も、その意味をちゃんと理解して、爆速で吸収したものをすぐにアウトプットする。驚異的ですね。一方で僕は、俳優として江口さんの背中を追い続けながら、江口さんの出演作から演技のエッセンスを吸収していて。実は勝手に、参考にさせていただいています。

江口:工くんはものすごい量の俺の作品を見てくれていて、嬉しいよ。

斎藤:『忍びの家 House of Ninjas』は、クリエイトの可能性や幅を広げてくださった作品だと思っているんですが、江口さんはその第一人者です。

江口:映像作品において日本らしいと思うのが、最新のカルチャーとトラディショナルな部分を、ギャップがありながらもミックスしちゃうカオス感。そのギャップをうまく形にしていくことが、日本の作品の振り幅をさらに広げていくんじゃない?

斎藤:おっしゃる通りで、世界の映画祭を回っていると、日本のカルトな部分やカオス感を実は世界が求めていると感じるんです。海外作品に倣うのではなく、あえて足元を見る。そしてその奥にあるものが、メイド・イン・ジャパンの強さなんだと。

江口:今作も刑事ものや逃亡劇、ヒューマンドラマなどのジャンルに分けられない面白さがあるし、7~9話ぐらいはもう台詞パンパンの台本が来てて(笑)。これからさらに、重厚さを増していくと思います。

斎藤:日本はもちろん、海外の人にも見ていただきたいですね。

Profile

斎藤 工

さいとう・たくみ 1981年8月22日生まれ、東京都出身。近年の主な出演作に、Netflixドラマ『極悪女王』、ドラマ『海に眠るダイヤモンド』、Netflix映画『新幹線大爆破』など。映画『港のひかり』が11月14日に公開。企画・プロデュースしたドキュメンタリー映画『大きな家』がロングラン公開中。

江口洋介

えぐち・ようすけ 1968年1月1日生まれ、東京都出身。近年の主な出演作に、主演ドラマ『誰かがこの町で』、Netflixドラマ『忍びの家 House of Ninjas』など。出演する映画、劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~南海ミッション』が8月1日、『沈黙の艦隊 北極海大海戦』が9月26日に公開。

Information

『誘拐の日』

お人よしの誘拐犯・新庄政宗(斎藤工)と、記憶喪失になってしまった天才少女・七瀬凛(永尾柚乃)の疑似親子バディの奇妙な逃亡劇&特別な絆を描くヒューマンミステリー。毎週火曜21:00~、テレビ朝日系にて放送中。

斎藤さん・スーツ ¥192,500(TAGLIATORE/トレメッツォ TEL. 03-5464-1158)

写真・Marco Perboni スタイリスト・三田真一(斎藤さん) 伊藤省吾(sitor/江口さん) ヘア&メイク・赤塚修二(斎藤さん) 中嶋竜司(HAPP'S./江口さん) 取材、文・若山あや

anan 2456号(2025年7月23日発売)より

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    先負

納得のいかないことに対して反抗的になる傾向のある日です。個々の能力や努力の程度は違いますが、そういうことよりももっと根本的なところで不公平や無理解があるのではないかと考え、場合によっては抗議に至るかもしれません。何のために、そして誰を利するために働いているのかを問わずにはいられない日でしょう。

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