意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「東京都議会議員選挙」です。


アメリカや欧州に通じる流れも感じられた選挙戦

6月に行われた東京都議会議員選挙は都民ファーストの会が第1党になり、自民党、公明党を合わせた、いわゆる知事与党の獲得議席が過半数を上回りました。この選挙は小池都政の是非を問うものでした。TOKYO MXが投票前に行った有権者1000人へのアンケートで、「最も期待する政策」は「物価高騰対策」で40.7%を占めました。東京都は日本経済の中心にありますが、物価高やインフレにより生活は厳しくなっており、2024年の出生率は0.96で、前年の0.99よりさらに下がっています。格差に加え、第三次産業が中心で低賃金化や長時間労働が増えていることが出生率にブレーキをかけています。そんななか、水道料金値下げや授業料免除、「018サポート」といわれる0~18歳を対象にした子育て支援策など、暮らしを支える政策が評価されたのだと思います。

一方、今回の選挙戦では、外国人排斥を謳う極右的な思想が広まっているのも感じました。激戦区の千代田区では、都民ファーストの現職を破り、減税とともにナショナリズムを訴えた無所属の佐藤沙織里さんが当選。参政党の4人の候補者のうち3人が当選したことも大きなトピックです。アメリカやヨーロッパの国々同様、自国第一主義の流れが広がっていると思います。

小池都知事が都庁舎の壁を使ったプロジェクションマッピングや、お台場海浜公園での巨大な噴水事業を進めているのは、都政の次のテーマとして、東京のナイトタイムエコノミー、夜の観光事業を広げていきたい意向があるからです。海外では夜遅くにミュージカルやオペラを鑑賞できたり、朝まで遊べる場所が数多くあります。ただし、それらが可能なのは、周辺の貧しい国から働き手が来ているからです。労働力不足の日本で、ナイトタイムエコノミーを実現しようとすると、夜に働く人材を海外に頼らなければいけないでしょう。この政策を進めるには、注意深く議論を重ねる必要があります。

インバウンド対策も外国人労働力の問題も、環境を整えるためのルール作りが先決です。他者排斥や分断に走ることなく、お互い気持ちよく共存できる道を粘り強く探れたらと思います。

Profile

堀 潤

ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。新刊『災害とデマ』(集英社)が発売中。

写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

anan2456号(2025年7月23日発売)より

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