堀潤の「社会のじかん」第466回:ポリオ流行

ライフスタイル
2024.10.31

意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「ポリオ流行」です。

根絶したはずの感染症が再発。格差是正が課題に。

パレスチナ自治区ガザ地区で25年ぶりにポリオ(急性灰白髄炎/脊髄性小児麻痺)の感染が確認され、国連はポリオワクチンの緊急集団接種のため、イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘の一時休止を要望。9月頭に、18万9000人以上の10歳未満の子どもたちがワクチン接種を受け、10月半ばに2回目の集団接種が行われました。ガザ全域で約64万人の子どもたちが接種対象となっています。

ポリオは、ポリオウイルスが口に入り、腸の中でウイルスが増えることで感染します。感染すると頭痛や発熱、嘔吐などの症状が出て、脊髄などに入り込むと手足に麻痺を起こし、一生残ることもあります。ポリオに特効薬はなく、罹らないようにすることが重要で、ワクチンが開発されました。

日本では1960年にポリオ患者が5000人を超え、大流行しましたが、生ポリオワクチンの導入で一気に収まり、1980年の1例を最後に野生のポリオウイルスによる新たな患者は出ていません。近年では、不活化ポリオワクチンを、百日咳やジフテリア、破傷風のワクチンと混ぜて混合ワクチンとして接種しています。ポリオは子どもが重症化することが多く、小さいうちにワクチンを打つことが必須。日本では、ワクチン接種により集団免疫ができているので、ポリオウイルスが入ってきても感染は広がりません。

ただ、海外では、アジアだとパキスタンやアフガニスタンなどで、アフリカではナイジェリアをはじめとする全域で、依然としてポリオが蔓延しています。ガザ地区でも4半世紀発生しませんでしたが、爆撃により衛生環境が悪化し、再発してしまいました。

ポリオに限らず、感染症の脅威にさらされている地域にどうやってワクチンを届けるかが至上命令です。ワクチンは冷やして運ばないといけませんが、紛争地域では道路がないなどインフラが整っていないため、安全な輸送もままなりません。ワクチンを供給する国とされる国に分かれ、格差が生じていることも問題です。グローバルヘルスという意味では、一地域での疫病発生が世界中に広がるリスクもあるので、世界全体で対処する必要があります。

PROFILE プロフィール

堀潤(ほり・じゅん)

ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。メインキャスターを務める報道情報番組『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。

写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

anan 2420号(2024年10月30日発売)より

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