絶滅危惧種たちが立ち上がる!? “保護される側”の気持ちを描いた衝撃作『ハヴィラ戦記』

エンタメ
2025.01.13

みのすけ 文化監修:町 健次郎 生きもの監修:西村奈美子『ハヴィラ戦記』2

人間に管理される絶滅危惧種の視点から、自由に生きることの意味を問う衝撃作『ハヴィラ戦記』。作者のみのすけさんにお話を伺いました。

自由に生きるために立ち上がった絶滅危惧種たち。

「昔から生き物がとても好きで、絶滅危惧種の保護活動についてもよく調べていました。それでふと、保護される側はどんな気持ちなのだろうと想像したとき、この主人公の設定が思い浮かびました」

環境保全や動植物の種の保存など、よかれと思ってやっていることさえ、人間のエゴなのではないか――。みのすけさんの『ハヴィラ戦記』は、これまで信じて疑わなかったような価値観を揺さぶってくる。そうさせる一番の理由は、保護されている生き物が、人間と同じような形をして、心を持っているからだろう。奄美群島で発見された小さな人型の生き物・蝶人(ハヴィラッチュ)は、絶滅を防ぐために人間によって保護されていた。蝶人の青年・忍野(おしの)もそのひとり。人間の廃校を再利用した学校へ通い、「先生」と呼ぶ人間に守られる暮らしぶりは、一見楽しそうだったりもする。

「3Dモデルを作り、大きさを測りながら彼らのすみかを考えました。蝶人用の家具や家については、自然の中に転がっているものや、大きな既製品を利用したデザインになるようにこだわっています」

しかし外敵から守られ、食べ物に困らない一方で、効率的に個体数を増やすために、交配するつがいがデータをもとに決められていたりもする。忍野はつがいのマイに思いを寄せるものの、周りのカップルのように“つがう”ことができずにいる。

「人間が絶滅危惧種の生き物を助けようとして行う、近縁種との交配や遺伝子の冷凍保存などに対して、やはり自分がその生き物だったらどんな気持ちになるのか考えるうちに、アイデアが出てきました。忍野は言葉や感情を相手に伝えるのは苦手ですが、さまざまなものを目で見て、聞いて、じっくり反芻して、自分の考えをしっかり持つ人であってほしいと思っています」

いくつかの事件が重なって、忍野たちはやがて、人間に保護されない解放区と呼ばれる自由な世界での暮らしを夢見るように。2巻では、管理社会で生まれ育った彼らが直面する、理想と現実が描かれていく。

「私は最初、大学の友人についていくかたちで奄美を訪れました。そこで監修の先生たちと知り合い、気づいたら一緒にマンガを作るようになっていました。この作品にはいろんなキャラクターが登場しますが、ひとつのコマ、ひとつのセリフだけでもいいので、その人が持っている優しさを入れられるよう、心がけています。そして島の自然の中で新しいものを見聞きして、考え方が変化したり、逆に変化しない部分があったりする忍野の成長を、楽しんでいただければと思います」

PROFILE プロフィール

みのすけ

マンガ家。週刊ヤングジャンプ月例新人漫画賞でデビュー。Xの作品公式アカウント(@yj_havira)では監修の方々による奄美の生物・文化のコラムを連載。

INFORMATION インフォメーション

みのすけ『ハヴィラ戦記』2 文化監修:町 健次郎 生きもの監修:西村奈美子

奄美群島にて発見された、小さな人型の生き物・蝶人。人間に管理される絶滅危惧種の視点から、自由に生きることの意味を問う衝撃作。第2巻は1月17日発売。集英社 814円。Ⓒみのすけ/集英社

写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子

anan 2429号(2025年1月8日発売)より

PICK UPおすすめの記事

MOVIEムービー