意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「リカレント教育」です。
社会のじかん

人生100年時代を乗り切るための職業訓練的な学習。

政府は人生100年時代構想会議のなかで、リカレント教育の充実を検討しています。「リカレント教育」とは、社会人が生涯にわたって再教育を受けることができ、就学と就労を交互に行える教育システムのこと。「recurrent」は、反復・循環の意で、1960年代にスウェーデンの経済学者ゴスタ・レーンが提唱しました。

欧州では、仕事を始めてからも新たに学習する必要があれば、長期にわたり正規の学生として学校に再入学することを推奨しています。スウェーデンやフランスなどでは給料保証もされ、フルタイムの就学と就労を繰り返せるのです。アメリカにはコミュニティ・カレッジという公立の2年制大学があり、何歳になっても専門的な学びを得ることができます。そもそも、大学や大学院にいろいろな年齢層の人が一緒に学んでいる環境があるんですね。 ところが、日本の場合は終身雇用、年功序列のシステムが確立されていたため、在職中に数年間会社を休んで大学に通うというのはなかなかできませんでした。

しかし、いまは会社が定年まで存続できるかわかりませんし、寿命は延び、人生100年時代に入りました。少子化により、労働者人口も減っています。そこで、国はリカレント教育の拡充を提唱し始めたのです。一つの会社、一つの仕事に固執せず、時代の変化に合わせて新たな知識やスキルを身につけ、バージョンアップを目指す。職業訓練的な学習ですね。そうやって働く場を自分で開拓していく必要がますます出てくるでしょう。

日本の伝統的なリカレント教育は放送大学。文部科学省が設置した通信制の大学です。一般の大学でも、今後は社会人の受け入れを増やそうとしています。ほかにも、一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会と連携して、NTTドコモグループの会社が提供している「gacco」というオンラインサービスは、大学教授陣の講義を無料で受けられ、登録者は43万人を超えています。時間や経済的な制約があっても、学ぼうと思えば機会はあります。仕事をどう広げたいか、何を身につける必要があるのか、その見極めが一番大切なのかもしれません。

堀1

ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。新刊『堀潤の伝える人になろう講座』(朝日新聞出版)が好評発売中。

※『anan』2018年8月1日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)


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