古田さんがいい人をやっていることがナンセンスです。
古田新太(以下、古田):しょっぺ(高田さん)とは一緒にやってもう40年ぐらい?
高田聖子(以下、高田):そうですね。
古田:うちの劇団に誘ったのはオイラなんだけど、そのときは「可愛い子だな」くらい。でもそこから一緒に芝居するようになって、オモシロができる子なんだと思って一目置いた。女性で計算でオモシロがやれる俳優ってそんなにいないから。
高田:古田さんは当時からスターでしたよね。モテモテだったし。気づいたら東京の舞台でもどんどん活躍されていて。でも劇団ではバカなこともいっぱいやって。
古田:当時から、くだらないこととか嫌な役とかだけやってたい人だったから。今回、KERAっち(作・演出のケラリーノ・サンドロヴィッチさん)から声をかけられたときに「いい人の役なんだけど…」って言われた(笑)。いや別に、いい人の役をやらないわけじゃないんだけど。
高田:私、KERAさんから古田さんが王様役だと聞いて、え? ってなりましたから(笑)。初演の(仲村)トオルさんは純粋の面白さですけど、古田さんは笑いに切り込んでいく。タイプ全然違いますよね。
古田:オイラはどうしてもオモシロを入れたくなっちゃうし、トオルくんの王様の実直さは出せないだろうから、アプローチは違ってくるだろうなと。どうやっても企んでる人にしか見えないだろうし。
高田:そんなことないです。でも、同じセリフも言う人が違うと、こんなにも違うんだなとは思っています。
古田:マーガレットとの関係も、初演とは変わってくるんだろうな。
高田:私も、初演の稽古で台本がまだ半分しかなかったとき、自分の役のタチアナが何か企んでいる感じだったから、そういう人だと思ってやってたんです。劇団ではよく悪役をやっていたし。でも台本が上がったら、予想外の方向になってました。今回は、結末がわかって稽古をしているから、演じ方も変わっていくと思います。
古田:KERAっちとは前回が初?
高田:そうなんです。初演はコロナ禍で共演者の方ともコミュニケーションがなかなかとれない中で稽古してたんです。そしたら、いつの間にか夢のような世界が出来上がっていて、魔法みたいな感じでした。
古田:うちの劇団は、ミザンス(立ち位置)ありきで、そこから気持ちをハメていく感じだけど。KERAっちの現場は、俳優の中から出てくるものを待ってそこに演出をつけていくから面白いよね。
高田:あと、新感線では基本的に自分が出ない場面の稽古は見ないじゃないですか。でも今、稽古場で、みんなで共有してる時間が楽しくて。
古田:そういう稽古場でいいのは、ヤジが飛ばせるってこと。「お前、面白くねぇな」とか(笑)。
高田:しょうもない意見とかも言ってみたり。「あそこ、こうしたら面白いよね」とか。それが採用されてもされなくてもどっちでもよくて。
古田:自分に全然関係ないシーンなら無責任なこと言えるしね。
高田:KERAさんがなんでも言い合える空気を作ってくれますし。
古田:KERAっちの演出は丁寧で細かいよね。そこを信用してる。これまではナンセンスな作品ばっかり一緒にやってきたけど、たまにはこういうお伽話みたいなものに参加するのもありかなと。そもそもこのベイジルタウンっていう世界観がデタラメで、そこでちょっといい話をやるっていうのも、それはそれでナンセンスかもしれないし。
高田:そうですよ。古田さんがいい人をやっているってことが、まずナンセンスじゃないですか。しかも恋とかしちゃったりして、結果的にいい話で終わるっていう。
古田:殺しも殺されもせずね。
高田:幸せになりました、って。
古田:それはナンセンスだね。
PROFILE プロフィール
古田新太さん
ふるた・あらた 1965年12月3日生まれ、兵庫県出身。大学在学中より劇団☆新感線に参加。出演映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』が公開中のほか、『ゴリラホール』の公開も控える。
高田聖子さん
たかだ・しょうこ 1967年7月28日生まれ、奈良県出身。大学在学中より劇団☆新感線に参加。舞台のほか映像作品に多数出演。昨年出演した舞台の功績により第32回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。
INFORMATION インフォメーション

ケムリ研究室 no.4『ベイジルタウンの女神』
ケムリ研究室は、作・演出のKERAと俳優の緒川たまきの演劇ユニット。大企業の社長・マーガレット(緒川)は、ある賭けをして無一文で1か月貧民街で暮らすことになるのだが…。5月6日(火)~18日(日) 三軒茶屋・世田谷パブリックシアター 作・演出/ケラリーノ・サンドロヴィッチ 出演/緒川たまき、古田新太、水野美紀、山内圭哉、坂東龍汰、藤間爽子、尾方宣久、菅原永二、植本純米、温水洋一、犬山イヌコ、高田聖子ほか 平日/S席1万2300円 A席8800円 土・日・祝日/S席1万3800円 A席9800円 キューブ TEL:03・5485・2252(平日12:00~17:00) 兵庫、久留米、豊橋、新潟公演あり。
anan2445号(2025年4月30日発売)より