
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「第三者委員会」です。
客観的・独立的立場だからこそ厳しい調査が可能。

フジテレビ問題では「第三者委員会」が大きな存在感を示しました。これまでは企業で不祥事が起きると内部調査委員会が作られ、原因究明や再発防止の調査がなされましたが、内部関係者だけでは検証しきれないだろうという批判から、第三者委員会が立ち上げられるようになりました。兵庫県の齋藤元彦知事の告発文書をめぐる問題では、県議会による百条委員会と県が委託した弁護士による第三者委員会の2つが設置されました。
第三者委員会のメンバーは、企業等と利害関係のない人で構成されるため、独立性や中立性が担保されます。2000年代に「コンプライアンス(法令遵守)」が重視されるようになり、信頼回復のため、企業が第三者委員会を求める声は大きくなりました。コンプライアンス違反となれば社会的評価やブランド力を失い、投資を受けられなくなり、結果的に大きな損害を受けてしまうからです。2010年には日弁連が「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」を策定しました。
企業は委員選定の基準に基づいて、メンバーを決定します。基本的には弁護士や学識経験者、研究者、公認会計士、監査役など、該当するトラブルに対しての専門的知見を持ち、調査能力のある人たちが選出されます。
フジテレビ問題では「デジタル・フォレンジック」という調査方法も注目されました。電子機器等から電磁的記録を抽出したうえで、電磁的記録の解析を行うというもので、サイバー犯罪や情報漏洩などの科学捜査で使われている技術です。ネットワークに侵入して、ネットワーク上に残るデータを収集し解析。これにより、消去されたチャットやメールを復元したり、通話履歴やアクセスログを解析できることが、今回広く知られるようになりました。
第三者委員会の弱点は、完全外部組織のため、関係者の協力を得ないと調査を進められないということ。ただし、「協力を得られなかった」ということも公表されます。本来、企業の監査が厳しい目で見ていれば未然に防げる不祥事もあるはずですが、企業と監査の癒着により、実質役目を果たせていないケースも多いんですね。
堀 潤
Profile
ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。新刊『災害とデマ』(集英社)が発売中。
anan2451号(2025年6月18日発売)より