意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「イスラエルとハマスの戦闘」です。

戦闘の拡大理由は政治の側面から背景を見る必要が。

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パレスチナ自治区のガザ地区で痛ましい戦闘が続いています。10月7日にイスラム組織のハマスがイスラエルを襲撃し、人質を取りました。これに対し、イスラエルが激しい報復を繰り広げています。これまでにも度々衝突はありましたが、これほどの大規模な戦闘は初めてです。イスラエルとパレスチナの対立理由は、遡れば2000年以上の昔からありますが、歴史的背景を語ると「解決の難しい問題」で終わってしまいます。本件は政治の側面から見ることも肝要だと思います。

今年前半、イスラエルのネタニヤフ政権は国民の支持を失っていました。国の権限を強化するため司法改革に手をつけようとしており、国民からの批判が高まり、大規模デモが続いていたのです。4月には、イスラム教徒の聖地であるエルサレムのアルアクサ・モスクで、イスラエル警察とパレスチナ人が衝突。10月にはイスラム教徒しか礼拝が許されていない礼拝所に5000人近いユダヤ教徒が押し寄せました。それが引き金となり、ハマスは今回の襲撃を開始したという報道もあります。

ハマスがイスラエル攻撃に向けて準備をしているという情報は、エジプトなどを通じてネタニヤフ首相の耳に入っていたといわれています。諜報能力に長けたイスラエル国防軍がなぜ襲撃を許したのか。危機を利用して、政権基盤を安定させようとするショック・ドクトリンを疑う声もあります。

今回の戦闘に刺激を受けるように、イランから支援を受けている、イエメンの武装勢力フーシ派や、レバノンに展開しているイスラム組織ヒズボラもイスラエルに攻撃を開始。イランとイスラエルの緊張状態が高まり、第3次世界大戦に広がるのではないかと懸念する人もいます。問題は、イスラエルでもパレスチナでも大勢の民間人が被害に遭っていることです。双方合わせて死者は1万1000人を超えており、女性や子供たちが犠牲に。国際法で禁じられているはずの学校や病院なども攻撃されています。国連の休戦決議採択後もイスラエルの攻撃は拡大。ようやく11月22日に4日間の戦闘停止が合意されましたが、国連の抑止力が失われていることが明白になりました。

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ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。

※『anan』2023年12月13日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

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