
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「パワーシェアリング」です。
戦後80年。世界の平和構築のために日本にできること

6月に早稲田大学で「Inclusive Peace」という国際シンポジウムが開催され、世界各国の紛争解決や武装解除、平和構築の専門家たちが集まり、「パワーシェアリング(権力分有)」が果たす役割について議論されました。
今、国際秩序は乱れ、世界のあらゆるところで戦争が長引いています。日本も含め、どの国も国防費を増やしたり、北欧では対ロシアに備えて徴兵制を復活させるなど国防ばかりが進んでいますが、それでは戦争は終息しません。戦争を終わらせ平和を構築するには、どうすればよいのか。本来なら、国連が調停役になるべきですが、実質、今は機能していません。早稲田大学の上杉勇司教授は、日本の自衛隊が調停役を担うような組織にならなければいけないのではないかと語っていました。
日本は、地政学的にも、宗教や民族という点からも、ヨーロッパや中東から離れているので、中立的な立場から戦争の調停役を果たせるのではないかと見られています。
地中海のキプロス共和国は内戦により1974年以降、南北に分断されています。トルコと友好関係にある北キプロスと、ヨーロッパに親和的なギリシャ系の南キプロスの和平合意に、第三者として日本にも関わってほしいと、キプロスの研究者は話していました。
そのように積極的に世界の分断地域の平和構築に関われば、日本に対するリスペクトは高まりますし、様々な地域と親密に連携することで、日本の安全保障も守られるでしょう。
10数年前までシリアのゴラン高原には国連のPKO(平和維持活動)部隊が常駐し、各国から集められた隊員が平和を維持するための知見を交わし、「平和の学校」と呼ばれていたそうです。紛争当事者だけでは解決できないことも、第三者の協力や知恵を借りることで糸口を見つけることはできます。
改憲や再軍備化を訴える声が高まっていますが、戦後80年、「平和な国」と広く知られている日本だからこそ、世界の信頼を得て調停役を務めることができます。国だけでなく、市民レベルでも、平和を構築、維持するための連携ができると良いなと思います。
Profile
堀 潤
ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。新刊『災害とデマ』(集英社)が発売中。
anan2458号(2025年8月6日発売)より