意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「BRICS」です。

新たに6か国が参加。共通通貨が生まれる可能性も。

society

「BRICS」とは、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5か国で作られたアライアンスです。8月に開かれたBRICSの首脳会議で、新たにアルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦が2024年の1月から加わることが発表されました。アラブの主要国が入ることにより、世界の石油取引高の約90%を占めるという大きなインパクトを生むことになります。

BRICSではドル決済に代わり、世界の基軸となる新しい共通通貨を生み出そうという動きが出ていました。中国の人民元を広げようとする動きもあります。もし、脱ドルの動きが実現化すれば、ドルの価値は下がるでしょうし、日本への影響も計り知れません。

もしも、ドル決済から離れることができ、経済的にも軍事的にも援助してもらえるとなれば、今後BRICSに参画を希望する国がアフリカや中東からますます出てくるのは明白です。その動きの象徴的な国がエジプトでした。

エジプトポンドは、対ドルで見ると、この1年で半分くらいの価値に急落してしまいました。これにはロシアによるウクライナ侵攻が大きく影響しています。エジプトは小麦の多くをロシアから輸入していました。戦争によりロシアからの輸入に制限がかけられ、小麦の価格が高騰。自国の産業の育成がうまくいっていなかったこともあり、経済危機を迎えていました。ですから、BRICSのようなアライアンスに属することは必須だったのです。

エジプトは日本にとっても重要な国です。日本に石油を運ぶには、エジプトのスエズ運河を通らねばならないので、ある種生命線のような場所です。岸田首相は4月にエジプトの大統領と首脳会談を行い、これまで以上に強いパートナーシップを築くことを話し合いました。

欧米諸国が指導力を発揮していた頃から、世界の勢力地図は大きく変わってきています。中国やロシアなど権威主義的な国がアフリカや中東諸国を引き込み、アライアンスを拡大しつつあります。この綱引きの中、日本がどのようなイニシアティブを発揮するのかが問われています。

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ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。

※『anan』2023年11月1日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

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