精密な仕事ぶりに圧倒される!? フィンランドの伝統的織物“リュイユ”に迫る展覧会

2023.1.30
フィンランドの伝統的織物リュイユの色彩表現に迫る展覧会「リュイユ―フィンランドのテキスタイル:トゥオマス・ソパネン・コレクション」をご紹介します。

リュイユとはフィンランドの毛脚の長い織物のこと。その歴史は古く、1000年以上前にはバイキングたちが船で使用していたという歴史もあるほど。湾岸地域で使われていたリュイユは、内陸の裕福な農民たちへと伝わり、その後、教会や一般家庭でも使われるようになった。

世界の織物の中でもとりわけリュイユは、敷物やラグ、ソファのカバー、タペストリーなどデザインや用途を時代に合わせて変化させながら、長年にわたって受け継がれてきたことが特徴。けれど伝統工芸としてのリュイユは、18世紀末~19世紀中頃に最盛期を迎えたのち、産業革命以後その勢いは失われていった。

そんなリュイユの転機となったのが1900年のパリ万博。フィンランドがまだロシア帝国の支配下にあった当時、画家アクセリ・ガッレン=カッレラがデザインを手がけたリュイユ《炎》がフィンランド館を彩り、ロシアからの独立を視野に入れた民族の芸術運動の一翼を担うことに。その動きは世界から注目された。

以後リュイユは現代の生活にもマッチした新しいデザインを生み出し、’50年代にはミラノ・トリエンナーレで数多くの賞を受賞するなど、ガラスや陶芸と同様にフィンランドを代表するデザインのひとつとして評価を高めていった。現在では、デザイナーと織り手の協業に加え、作家自らが手がけた作品も多く、造形や素材もますます多様化が進んでいる。

本展には、リュイユの個人所蔵家として著名なトゥオマス・ソパネン・コレクションが日本に初上陸。主に1950年代以降に手がけられた重要な作品約40点を展示する。なかにはエヴァ・ブルンメルや、ウフラ=ベアタ・シンベリ=アールストロム、リトヴァ・プオティラなど、リュイユが国際的な評価を得た時期に活躍したデザイナーの代表作も。作品はすべて手織りのもの。特に色彩の美にこだわって集約されているため、一本一本の色糸が点描のように組み合わさった美しいテキスタイルは、まるで北欧の風景を描いた絵画のよう。細部を見て初めてわかる精密な仕事にも圧倒されるはずだ。

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アイノ・カヤニエミ《おとぎの国》 2015年 トゥオマス・ソパネン・コレクション
緻密な線の作品で知られる作家カヤニエミの鳥の羽をモチーフにした作品。

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エヴァ・ブルンメル《聖霊降臨祭のたきび》 1956年 トゥオマス・ソパネン・コレクション
砂時計をアレンジしたデザイン。砂時計は限られた時間を真面目に生きるという意味で婚礼時などによく用いられた。

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ウフラ=ベアタ・シンベリ=アールストロム《採れたての作物》 1972年 トゥオマス・ソパネン・コレクション
糸を使い分けて微妙な色の変化を表現したリュイユの魅力を凝縮したような作品。

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アクセリ・ガッレン=カッレラ《炎》 1899年(デザイン)/1983年(再制作) トゥオマス・ソパネン・コレクション
曲線的で左右非対称のモチーフを配した革新的なデザインは、ベンチ用のラグとして作られた。

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メリッサ・サンマルヴァーラ《紅葉》 2020年 トゥオマス・ソパネン・コレクション
質感の異なる素材を組み合わせた、不定形なフォルムが印象的な現代の作品。

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イルマ・クッカスヤルヴィ《ファサード》 1986年 トゥオマス・ソパネン・コレクション
新しいテキスタイル・アートに取り組む作家クッカスヤルヴィの立体感のある作品。

リュイユ―フィンランドのテキスタイル:トゥオマス・ソパネン・コレクション 京都国立近代美術館 京都府京都市左京区岡崎円勝寺町26‐1 1月28日(土)~4月16日(日)10時~18時(2/3、2/10、4/14を除く金曜は~20時、入館は閉館の30分前まで) 月曜休 一般430円ほか TEL:075・761・4111

※『anan』2023年2月1日号より。文・山田貴美子 Photo:Katja Hagelstam

(by anan編集部)