「何が人間を定義するのかという生命倫理を問うテーマで『もう人間』(『えれほん』に収録)という作品を描いたことがあり、本作はそれを発展させた思考実験的な内容になっています。もしチャーリーみたいな存在が生まれ、人間と動物の境界が崩れると、人々はどういうふうに反応するだろうと。そういう面白さは生まれると思いました」
うめざわさんはマンガを通し、自然との調和や動物保護、生命倫理、差別、人権など人間がいまだ明確な答えを出せない問題に広く言及していく。そんな物語に掴まれてしまうのは、登場人物たちの主張がみな、一家言あると思えるため。
「ALAの主張には、人類喫緊の課題が含まれています。悪人側に正論を言わせると、耳が痛いけど腑に落ちることも多いんですよね。また、マージナル(周縁)の存在であるからこそ持てる視点を託せるのがチャーリーで、読者にも首肯してもらえるように意識しました」
ちなみに、チャーリーの風貌、特に顔はサルに近く、変わっている。だが彼の活躍を知るにつけ、可愛らしく思えてくるから興味深い。
「最初はCGでヒトとチンパンジーを合成させたような見た目に。ただ、チャーリーに関しては僕の得意とするリアルめなタッチより、可愛いと思ってもらえるよう、やや記号的なキャラデザインに変えました。それでいながら、生きて、人間とともにいる存在感は出したいなと」
半分猿ゆえ、表情などで感情表現をするのは難しい。そのため、
「目の描き方で伝わればいいなと工夫しています。もっとも人間同士でも、心の底まではわからない。他者というものの象徴でもありますね」
3巻では、チャーリーにとってかけがえのない人たちがピンチに! 彼はどう打って出るのか、ハラハラが止まらない、傑作コミックだ。
『ダーウィン事変』3 月刊『アフタヌーン』で連載中。チャーリーは、地元の住民や警察、FBIからも敵対視されるように。チャーリーの反撃が待たれる4巻は、春頃発売予定。講談社 748円 ©うめざわしゅん/講談社
うめざわしゅん マンガ家。1978年、千葉県生まれ。’98年、読み切り「ジェラシー」でデビュー。著作に、『パンティストッキングのような空の下』(太田出版)など。
※『anan』2022年1月26日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・三浦天紗子
(by anan編集部)