同窓会SNSの“都市伝説”から明かされる真実…乾ルカの青春群像小説

エンタメ
2021.09.21
乾ルカさんの『おまえなんかに会いたくない』は、同窓会をめぐる青春群像劇だ。

同窓会SNSに不吉な書き込みが。卒業生たちが向き合う過去とは?

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「高校卒業から10年も経てば、みんな成長したり変わったりしているはず。その時、それぞれのなかで当時がどう映し出されているかにフォーカスを当ててみました」

北海道の高校の同窓生たちの視点で綴られる本作。卒業から10年、校庭に埋めたタイムカプセルの開封を兼ねて同窓会を開く話が持ち上がり、元3年6組の面々はSNS上で盛り上がる。だがそこに、匿名のアカウントから、タイムカプセルには遺言墨で書かれたメッセージが入っているとの書き込みが。遺言墨とは不気味な都市伝説で…。

「私が考えた架空の伝説です。それにまつわるエピソードをひとつひとつ考えるのは楽しかったです(笑)」

それを機に、彼らは高校時代のいじめを思い出す。当時、教室内カーストを無視した行動をとったことで、村八分になった生徒がいたのだ。

「教室内では、空気を読まないことが失態になる場合もある。私も高校時代、一生懸命に空気を読んでいました。いま思うとなんであそこまで気を使っていたのかと思いますが、当時は必死でした」

当時の教室にはさまざまな立場の生徒がいた。燦然と君臨する女王、彼女と対等になりたがる存在、密かにカーストの上に憧れる女子、影の薄いまとめ役の男子、等々。

「みんな、心のどこかで周囲から認められたい気持ちがあるんですよね。承認欲求はこの小説のセカンドテーマかもしれません」

一方、分け隔てのない態度をとる女子生徒もいた。一見いい人だが、

「ジョーカー的な超越キャラですが私にとっては同じクラスになりたくない人。彼女のような人は気に入った人には話しかけるけれど、気に入らない人には話しかけないところがある。私は話しかけられる自信がないんです」

10年後、彼らはそれぞれどんな道を歩んでいるのか。物語はコロナ禍で一人一人の仕事や行動に影響が出る様子も盛り込まれる。そして同窓会の日、明かされる真実は―。

「物語の最後の一言には、いろんな意味を込めました」

と乾さん。自分に、周囲に、過去に向けたその言葉が突き刺さる。

『おまえなんかに会いたくない』 卒業から10年。北海道の白麗高校の元3年6組の面々は同窓会の知らせを受け取る。だが、SNSには匿名で不穏な書き込みが…。中央公論新社 1760円

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いぬい・るか 2006年「夏光」でオール讀物新人賞を受賞してデビュー。直木賞候補の『あの日にかえりたい』、大藪春彦賞候補の『メグル』、映像化された『てふてふ荘にようこそ』など著書多数。

※『anan』2021年9月22日号より。写真・中島慶子(本) インタビュー、文・瀧井朝世

(by anan編集部)

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