時代を映す情報精査が今後の飛躍へのカギに。
社会情勢からワイドショーネタまで、ネットやテレビから日々大量の情報が流れてくる今。時代の流れに対応し、それをプラスの力に変えるような情報は、どう集めて精査したらいいのだろう。
「Twitterのリスト機能を活用したり、意見交換ができる仲間同士でシェアボックスを作ったり。基本はネットを駆使することだと思います」(「パレットーク」編集長・合田文さん)
そんなキュレーション力を高めるためのヒントを6つ紹介。
「時代の流れを読むことは、明日の天気を知るようなもの。明日起きそうなことがわかれば、人はそれに備えることができます」(「THE GUILD」代表取締役・深津貴之さん)
CHECK! 最先端の情報ヨミトキ
情報を取捨選択するためのヒントを得る前に、私たちが以下のような時代の流れの中にいることを知っておこう。
情報の流通スピードがさらに加速。
「ネットを中心に、毎日さまざまな情報が流れてきますが、その真偽がわからないうちに次の情報が流れてくる。情報の流れるスピードが、人間の処理能力を超えつつあります。それにもかかわらず、正誤の判断がつかないまま、反応や行動を起こさなければならないことも増えています」(深津さん)
“リアル”が必要なものと不要なものが明確に。
「’20年はコロナの影響でデジタル化が進んだ年といえます。思うように外出ができなくなり、たとえば打ち合わせや飲み会をZoomに切り替えたら、意外とバーチャルで事足りた、ということも。リアルで必要なものとそうではないものが明確になりつつある。今までの常識が急に二分化される時代へ」(深津さん)
“個の時代”の影響力が増大。
「SNSが浸透していることからも顕著ですが、今は組織というより一人ひとりがコンテンツを作る時代。その中で悪気はなかったとしても差別的な発信をすればきちんと炎上するようになっているし、逆に共感されるような内容なら世の中を動かすことだってできる。投稿ひとつでもリテラシーが必要です」(合田さん)
自分らしさが尊重される時代に。
「“女性だから”“男性だから”などと型にはめられて、苦手なことを無理やりやらされるような状況は、なくなっていくと思います。そこには人を人として大切にする思いがあってこそ。個の力が台頭する今、その傾向は強くなってきていると思います。“自分らしさ”が尊重されるようになっているんです」(合田さん)
CURATION’S HINT
情報のキュレーションを助けてくれるヒント
今の時代の流れがわかったところで、そこから置いていかれないようにするには? ヒントをもとに、必要な情報を精査しよう!
1、アルゴリズムのおすすめばかりに流されないようにする。
ネットには、自分の好きそうな人や物がおすすめされるという便利な機能があるけれど、それに頼りすぎるのは要注意。
「たとえば考え方でも、趣味にしても、自分に都合のいい情報ばかりが集まるようになるので、そのままいくと極端な世界が構築されてしまう。偏りすぎないためにも、SNSでは興味のある分野以外のことも1割ほどフォローするといいと思います」(深津さん)
2、情報は自分の中で噛み砕いてから反応する。
大量に流れてくる情報に対してすぐに反応することが求められる今の時代。誤った情報に振り回されないように意識すべきことは?
「基本ではありますが、発信する前にその情報をよく読み、考えることですよね。自分では気軽に発言やリツイートなどをしたつもりでも、それが非常に多くの人に伝播する。たとえ反応が遅くなったとしても、しっかりと調べることが重要になります」(深津さん)
3、問題を抽象化して落とし込む。
情報が溢れる中で、何が問題となり、何がならないのか。見分ける力を養うためにはどうしたら?
「たとえば恋人同士の問題に置き換えると、彼女が彼に夜飲みに行かないでと言った時、それなら昼間はいいのかというとそうではないはず。本質が理解できていないと、同じ過ちは避けられても別の問題が噴出しかねません。具体例を抽象化すると、問題の本質が見えてくると思います」(合田さん)
4、興味のあることをまとめてオリジナルのスレッドを作る。
「ツールはハックしてナンボ。良質な情報を効率よく集めるには、Twitterのリストを活用するのも一手。フォローまではしなくとも、興味のある情報を発信する媒体、人をリストにまとめれば、オリジナルの新聞が完成」(合田さん)
「自分にとって必要な情報の選別も必要に。僕は芸能人のスキャンダルなど、自分は興味のない情報が、SNSに流れないように設定しています」(深津さん)
5、Twitterのトレンドをこまめにチェックする。
今世の中でどんなことが話題になっているのか。それを知るために役立つのがTwitterのトレンド。
「流行語などは1か月で変わってしまうほど。常に情報は動いているので、リアルタイムでのリサーチが大切。私が一日に何度もチェックするのはTwitterのトレンドで、知らないことは調べてみたり、その事柄について自分が信頼している人は何と言っているかを見たりしています」(合田さん)
6、チームで気になったことを共有できる“シェアボックス”を作る。
社内の人やクリエイティブな仲間など、価値観を共有できるメンバー同士の情報交換も有効活用。
「情報感度の高い人同士でシェアボックスを作れば、社会問題など自分が知りたい最新情報が自ずと集まるように。私は編集部のみんなと『Slack』というメッセージプラットフォームを使ってニュースを共有。背景に何があるのかなどを議論して、自分ごとに落とし込んでいます」(合田さん)
合田 文さん 「パレットーク」編集長。パレットークは性の多様性やハラスメントなどを、SNSを通して漫画で紹介するウェブメディア。
深津貴之さん 「THE GUILD」代表取締役。さまざまな企業のユーザーエクスペリエンスの設計などに携わる。
※『anan』2021年1月13日号より。イラスト・加納徳博 取材、文・保手濱奈美
(by anan編集部)