画中に描かれた動物の姿は、愛らしくて思わず笑顔になってしまうものから、ワイルドな迫力に満ちたものまで、実にバラエティ豊か。動物たちのさまざまな表情が、鮮やかに切り取られている。
リアルでユーモラス。日本画家が描く動物たちの姿。
目玉は4年ぶりに公開される『班猫』(重要文化財)。作者の竹内栖鳳(1864~1942)は、明治から第二次世界大戦前にかけて、京都で活躍した大御所画家。日本画に西洋絵画の写実的な表現を持ち込んで、当時の京都の画壇に大きな影響を与えた。また動物画を数多く残したことでも知られる。『班猫』では、墨や金泥(きんでい)といった日本画特有の材料を使い、フワッとした毛の繊細な質感を表現。毛繕いするしなやかな背中や、よく見ると意外に鋭い視線など、私たちもよく知る猫の自然な姿がリアルに描かれる。
会場には、栖鳳作の17点をはじめ、弟子にあたる西村五雲(ごうん)、西山翠嶂(すいしょう)、さらに東京の画壇からは小林古径(こけい)、奥村土牛(とぎゅう)ら、近現代の画家たちが描いた個性豊かな動物画が一堂に。いわゆる“花鳥風月”をテーマにしたものとはちょっと違う、日本画のイメージが変わりそうな展覧会だ。
併設のカフェでは、展示作品の動物にちなんで考案された和菓子と抹茶のセットがいただけるほか、ミュージアムショップではオリジナルグッズも販売予定。秋の休日、和の情緒たっぷりのアニマルパラダイスに、足を運んでみては?
リアルなまだらの毛並み。
竹内栖鳳《班猫》【重要文化財】1924(大正13)年 絹本・彩色 山種美術館
日本画家が描く迫力の白熊。
西村五雲《白熊》1907(明治40)年 絹本・彩色 山種美術館
ピヨピヨと聞こえてきそう。
竹内栖鳳《鴨雛》1937(昭和12)年頃 絹本・彩色 山種美術館
【特別展】竹内栖鳳(せいほう)《班猫(はんびょう)》とアニマルパラダイス 併設展示:ローマ教皇献呈画 守屋多々志《西教伝来絵巻》試作 特別公開 山種美術館 東京都渋谷区広尾3-12-36 開催中~11月15日(日)11時~16時(入館は15時30分まで) 月曜、9月23日休 一般1300円ほか TEL:050・5541・8600(ハローダイヤル)
※『anan』2020年9月30日号より。文・松本あかね
(by anan編集部)