マンガやアニメの人気が追い風になり、若い世代を中心に、文豪や文豪の作品のブームが続いている。だがこれまでスポットが当たってきたのは、主に明治から戦後すぐぐらいまでの日本の小説だった。
しかし、いよいよ世界文学にもマンガ化の波が起きてきた様子。今回は、原作の色を大切にコミック化した3冊をピックアップしてご紹介。
村上春樹の短編「螢」とディストピア小説として有名なG・オーウェルの『1984年』を手がけたのは、これまでも世界文学のマンガ化に積的に挑んできた森泉岳土。フランスの文豪マルグリット・デュラスの作品の中でも特に有名な『愛人(ラマン)』に挑んだのはフランスのマンガ「バンドデシネ」の影響を感じる高浜寛だ。物語のエッセンスを自身の解釈で抽出しているので、原作とはまた違った感想を持つだろう。
著名な海外文学作品のあらすじと読みどころを、面白おかしくまとめてくれている久世番子のコミックエッセイは、原著を読むハードルをぐっと下げてくれる。文豪の世界にアプローチするきっかけになりそう。
水と墨と楊枝で描かれる、繊細なモノクロームの魅力。
『村上春樹の「螢」・オーウェルの「一九八四年」』
マンガ:森泉岳土 原作:村上春樹、G・オーウェル 河出書房新社 1100円 ©森泉岳土/河出書房新社
人の心情をわかったふりをして腑分けすることを避け、それゆえにいかようにも想像が広がる村上春樹の世界。歴史や過去が修正され続ける徹底した監視社会下でささやかな抵抗を試みるウィンストンの変化が怖くなる世紀の傑作。マンガで読んでも最高だ。
原作の雰囲気を見事に再現。ずっと眺めていたくなる。
『愛人 ‐ラマン‐』
マンガ:高浜寛 原作:マルグリット・デュラス リイド社(トーチ comics) 1500円 ©高浜寛/リイド社
原作は、1984年にフランスの名誉ある文学賞「ゴンクール賞」を受賞した、M・デュラスの自伝的小説。貧しいフランス人少女と裕福な華僑の青年との切なすぎる初恋物語は感涙必至だ。オールカラーで描かれたひとコマひとコマがうっとりするほど美しい。
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有名すぎる文豪作品にも本書なら気軽に触れられる。
『よちよち文藝部 世界文學篇』
久世番子 文藝春秋 1000円 ©久世番子/『よちよち文藝部 世界文學篇』文藝春秋
『高慢と偏見』『風と共に去りぬ』『百年の孤独』などタイトルもあらすじも知っているが、実はちゃんと読んだことがないという人率が高そうな名作たち。本書ではそれらを読破するための面白注目ポイントをガイドしてくれているので、今度こそ制覇できるかも。
※『anan』2020年5月20日号より。写真・中島慶子 文・三浦天紗子
(by anan編集部)