息子が男性好きだったら…母親目線で描く『うちの息子はたぶんゲイ』

2019.11.11
男子を好きでも息子は息子。母親目線で温かな家族の姿を描くのは、おくらさんによるコミック『うちの息子はたぶんゲイ』。
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ズバリなタイトルなのだが、当事者ではなく周辺からゲイの物語を描きたかった、とおくらさんは言う。

「ゲイに限らず中高生くらいのときは、家族は重要な存在ですよね。当事者目線だと自分語りで重くなりがちなので、母親の視点から客観的に描いてみたかったのです」

夫が単身赴任で、普段は息子2人と主人公の母親の3人で暮らしている青山家。高1の浩希は素直でよい子なのだが、同級生の男子を好きっぽいことが、素直すぎるあまり隠しきれていない。そんな息子の姿を、母親は愛情たっぷりに見守っている。

「母親はある意味、理想的なキャラクターですが、自分が浩希を目の前にしたらどうしてあげたいかな、という思いで描いています。作者として絶対にやらせないと決めているのは、息子に対して『なんで?』と聞くこと。セクシュアリティはそもそも説明できることではないし、理由なんて別になくていいと思うので」

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一方で、たまに帰ってくる父親は家族思いなのだが、悪意なしにゲイをディスるような発言をしたり、恋愛観を押し付け気味だったりして、息子の心に揺さぶりをかけてくる。

「父親は、普通によしとされていることを疑わない人。ごく一般的な視点のつもりなんですけど、事情を知っている側からすると、こんなにもきつい言葉になるというのを一身に体現しているキャラクターですね」

父親の言動はセクシュアリティの問題に限らず、自分の思い込みや常識が他者を傷つける可能性があることを教えてくれる。そんな父と長男の傍らで、感情の読めない中2の次男がいろいろ察しているっぽい描写もまたよくて……。全体的には軽やかなノリで、好きな人への思いがダダ漏れしている息子や母親の大きな愛に、笑ったり優しい気持ちに。そして時折、ハッとさせられるエピソードがスパイスのように入り込む。

「大きな問題提起をするつもりはまったくありません。ゲイを題材にすると苦悩やつらい部分がフィーチャーされがちだけど、単純に明るい話があってもいいと思うんです。みなさんと一緒でゲイの人も普通に生きているし、そういう状況を想像するきっかけになれば、この物語を描いた意味があるのかなと思います」

『うちの息子はたぶんゲイ』1 40歳の母・知子の視点で、ゲイかもしれないうっかり者の長男、何となく気づいているっぽい次男、優しいけど鈍感な夫を描く、家族コメディ。スクウェア・エニックス 818円 ©2019 Okura/SQUARE ENIX

おくら マンガ家。ノンケとゲイの高校生による青春恋物語『そらいろフラッター』(全3巻)の原作を担当。『うちの息子はたぶんゲイ』は本人のTwitter(@okura_yp)やpixivでも公開。

※『anan』2019年11月13日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子

(by anan編集部)

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