古くから女性を受け入れてきた女人高野、室生寺。辰年の今年は、龍神様にも願いを託したい。五感を揺さぶる奈良への旅。大和四寺巡礼へ。2

photo : Yoshiki Okamoto text : Mako Yamato edit : Akira Ikeda PR・JR東海 — 2024.4.23〔PR〕
新幹線を京都で降りて、車窓からの美しい風景を眺めながら向かったのは、奈良県中央部の大和エリアに位置する「大和四寺(やまとよじ)」の巡礼旅。そこは穏やかな隠れ里で、触れられるほどの近さで歴史や文化を体感でき、リフレッシュできる場所です。古くから女性に開かれてきた龍神信仰の霊地、室生寺を訪ねます。
室生寺
毎年4月中頃になると、石段の鎧坂から五重塔にかけて約3000株の石楠花(しゃくなげ)が、その濃い紅色の花で境内を飾る。写真提供/室生寺

室生寺 (むろうじ)
奈良県宇陀市室生78 ☎︎0745-93-2003 拝観4〜11月8:30〜17:00 12〜3月9:00〜16:00 拝観料¥600  近鉄大阪線室生口大野駅から室生龍穴神社行きバスで「室生寺前」下車徒歩5分。
奈良map



室生の山に抱かれる仏教美術の宝庫。

本堂に安置された御本尊の如意輪観音菩薩像。平安時代に造られた榧(かや)の一木造り で、女人高野となった1700年頃から御本尊として祀られている。6本の腕は真言密教の教えに由来。日本三如意輪の一つで、唯一秘仏ではなく常時公開されている。安置されている本堂内の扉には、僧侶の修行を蝉にたとえ、蝉錠(せみじょう)と呼ばれる鍵がつけられているのも見逃さずに。

室生山のふもとに立つ室生寺の歴史は古く、奈良時代末期へと遡る。皇太子の山部親王(後の桓武天皇)の病気平癒のため、室生で僧侶が祈願したところ回復したことから、後に天皇の命で興福寺別院として建立されたのだ。境内の五重塔の西側にある如意山には弘法大師・空海が師より授かった如意宝珠を埋めたことから、後に様々な宗派の修行の場となり、江戸時代以降は真言密教の寺院に。真言密教の聖地である高野山が女人禁制だったのに対し、女人にも開かれていたことから女人高野として広く親しまれることとなった。

門前から太鼓橋を渡って境内へ。仁王門の先にある鎧坂(よろいさか)を登るにつれ、空気はしんと静まってくる。柿葺寄棟(こけらぶきよせむね)造りの金堂、灌頂堂(かんじょうどう)とも呼ばれる本堂、丹塗り(にぬり)の朱の色が周りを囲む木々の緑に映える五重塔と、3つの伽藍(がらん)は国宝に指定されている。安置されている仏像は漣波式(れんばしき)と呼ばれる衣紋が優雅な釈迦如来立像、薬師如来の従者として12の方向を守る十二神将立像など歴史的にも美術的にも見ごたえのあるものばかり。4月半ばから5月にかけては、境内で華やかに咲く石楠花も見頃。女人高野の古刹に漂う、清らかさに浸りたい。

2020年に完成した寶物殿では、かつて金堂に安置されていた十一面観音菩薩立像、弥勒堂の客仏として安置されていた釈迦如来坐像という2つの国宝を間近に見ることができる。金堂の十二神将立像のうち6躯はこちらに。頭にそれぞれの十二支を載せた十二神将立像のうち、辰神だけは穴が開いたまま。龍穴神社の龍穴を表すという説もある。
境内には大黒天が祀られた天神社という神社があり、拝殿もある。背後の山中には直線上に室生龍穴神社と龍神様が棲むという吉祥龍穴があり、室生寺から祈りを捧げることができる。右側の銀杏の木に掛けられているのは、魔除けのための勧請縄(かんじょうなわ)。龍をイメージした形に。
奥深い山中にある室生寺は、苔もしっとりと緑に輝く。本堂脇の山裾に並ぶのは五輪塔と宝篋印塔(ほうきょういんとう)。五輪塔は北畠親房(きたばたけちかふさ)の墓と伝わり、重要文化財に指定されている。ほかにも境内には七重石塔や軍荼利明王磨崖仏(ぐんだりみょうおうまがいぶつ)、石造露盤などもあり、石像美術も堪能できる。

室生寺とともに巡る、五感で味わう3つのスポット。

室生龍穴神社

天を衝くような巨木に囲まれた拝殿。社務所が開く日は御朱印を求めて行列ができることもある。

室生寺から室生川沿いに約1km。奥宮の吉祥龍穴を御神体とする古社が龍穴神社だ。その歴史は室生寺よりもさらに古く、山部親王の病気平癒を祈願したのがこの龍穴で、室生寺は龍穴を守る神宮寺として建立されたとも伝わる。さらに遡れば、かつて奈良の猿沢池に棲んでいた龍王が池を出て、春日山を経てこの龍穴へと移ってきたという伝説もある。御祭神は雨を司る高龗神(たかおかみのかみ)。拝殿の奥にひっそりとある本殿は、寛文12(1672)年に建てられたもの。春日大社から譲られた旧社殿を用いた“春日移し”のひとつとしても知られている。境内から吉祥龍穴のある奥宮遥拝所までは、車ならば6分ほどの距離。鳥居から階段を下りて川の水音を耳にしながら参拝すれば、心も清々しく穏やかになるはずだ。

●奈良県宇陀市室生1297 ☎︎0745-93-2177 拝観自由 社務所は基本的に15日(2024年10月は14日*例大祭、11月は23日)と連休及びゴールデンウィーク、1月1日〜5日に開かれる。 9:00〜15:30 拝観無料 近鉄室生口大野駅から室生龍穴神社行きバス終点下車。徒歩1分。

奥宮の吉祥龍穴。川にせり出すように造られた遥拝所では靴を脱ぎ、龍穴に向かって祈願する。ぽっかりと口を開けた龍穴は、室生寺の十二神将立像の辰神を思い出させる。辰年の今年こそ、参拝したい。

橋本屋

大和芋の天ぷらやすまし汁、山菜のからし和え、胡麻豆腐など、地元ならではの食材をあれこれ楽しめる女性向けスペシャル山菜ランチ¥2,300。

室生寺の門前、太鼓橋のたもとにある明治4(1871)年創業の料理旅館。長年にわたり室生寺の撮影をライフワークとした写真家・土門拳の定宿でもあったことから、館内には数多くの作品が残されている。「やはり土門さんの目力はすごかったですね」と振り返る店主の奥本裕さん。現在は食事のみの提供で、奈良特産の大和芋や、うど、わらびといった山菜をはじめ、地元の素材をふんだんに使った素朴な山里料理が用意されている。とりわけ粘り気が強く濃厚な大和芋を使った料理は店の名物。さっくりもちもちの天ぷらや、粘り気と旨味に驚くすまし汁などで、それぞれ違った味わいを楽しみたい。

●奈良県宇陀市室生800 ☎︎0745-93-2056 10:00〜16:00 不定休

土門作品も見逃さずに。
土門拳が滞在時に過ごした「石楠花」の部屋。室生寺へ向かう太鼓橋、秋には真っ赤に色づく紅葉も一望のもとに。

室生山上公園 芸術の森

キンモクセイから流れる「らせんの水路」。

室生寺を出て、20分ほど坂を歩いた山上に2006年に誕生した公園にも、ぜひ足を延ばしてほしい。そこには室生出身の彫刻家 井上武吉(1930〜1997年)が構想していた「森の回廊」のイメージを、井上との親交のあったイスラエル生まれの彫刻家ダニ・カラヴァン(1930〜2021年)が、その意志を継ぎ完成させた、自然とアートが調和した風景が待っている。豊かな自然の中に大きなスケールのモニュメントがいくつも配置され、鳥の声だけが響く静謐な空間は、どこか室生寺の境内で過ごした時間につながるようで、光、空、気、風、土、木々の香りなど自然の気配を、日常の何倍も身近に感じることができるはずだ。ここでは大和という土地の季節や時間の移り変わりを、五感を通して心ゆくまで味わうことができ、まさに「室生の村を人間と自然が共存する美術館にしたい」という井上の願いが実現した美しい空間となっている。

●奈良県宇陀市室生181 ☎︎0745-93-4730 10:00~17:00(3・11・12月~16:00)火休(祝日の場合、翌日休) 入園料¥410。室生寺から徒歩20分。駐車場あり。室生寺から車で5分。

ビジターセンターに近い「第1の湖」には3つの島があり、写真は「ピラミッドの島」と「野外ステージの島」。約8ヘクタールの広大な敷地には10を超えるカラヴァンの作品が待っている。

Information
いざいざ奈良 大和四寺編

いざいざ奈良

「いざいざ奈良」キャンペーン、今回は大和四寺をピックアップ。豊かな自然や文化が守られて息づいているエリアで五感で楽しむ唯一無二の旅をしてみませんか。キャンペーンの特設サイトでは、大和四寺エリアでの旅の楽しみ方を紹介。

キャンペーン特設サイト

さらに、奈良への旅行が楽しくなる「いざいざ奈良」だけの特別な旅行プランも登場。大和四寺を巡るスタンプラリーキットと併せて巡礼を楽しみたい。室生寺では、僧侶のご案内で特別に金堂外陣に入り拝観できるプランも。

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この記事は、JR東海のスポンサードで製作したものです