4月が始まりました。学校や職場など、新しい環境での生活がスタートした方も多いのではないでしょうか。この時期注意したいのが、緊張からくる「こわばり」です。人前に出たり、慣れない仕事に携わるなど気が張る状況が続くと、体に力が入り、それが抜けなくなってしまうことがあるのです。肩こりやイライラ、大量に汗をかく、気付くと歯を食いしばっている、顎が痛い。そんな状態は、緊張気味の体からの、SOSサインかもしれません。
体のこわばりが取れず、痛みやメンタル面でのトラブルが起きている場合、中医学では「肝」に不調があると考えます。肝は、西洋医学が指す肝臓とは役割が少し違っていて、筋や筋肉をコントロールするとともに体のエネルギーである「気」を巡らせ、血行を促す働きを持っています。さらに大きく異なる点が、精神の安定も司っていること。ストレスのクッション役として体を守っているのですが、負担がかかる状態が続くと機能が低下し、それが情緒の不安定や憂鬱感につながります。
肝の働きを整えるのは、吸うより「吐く」呼吸。
こうした不調の緩和に効果的なのが、深呼吸です。肝に気血を巡らせる働きがあることは先ほど述べましたが、呼吸によって体内に対流が起こり、気血の巡りがスムーズになるのがその理由。気血の流れに沿って、肝の働きも次第に整っていくのです。
このとき、息を「吐く」ことを意識するのがポイント。最初に吸おうとすると力が抜けず、かえって逆効果です。まずは口からゆっくりと空気を吐き出す。すべて吐ききると、空気は自動的に入ってきます。呼吸の自然の流れを感じながら力を抜き、落ち着くまでゆっくりと繰り返しましょう。
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そしてもうひとつ試してほしいのが、頭の側面のマッサージ。体には気の通り道「経絡」が無数にあり、体側には肝の経絡が通っているのですが、頭にある経絡は比較的分かりやすいのです。こめかみに3本の指を当て、耳の後ろ、後頭部に向かって滑らせてください。これだけでもすっきりするはずです。
そのほか、真いわしや牛すじ、ぶどうやプルーンなどの果物も、肝を養うのに役立ちます。こうした「養肝食材」も取り入れながら、深呼吸とマッサージでリラックス。こまめな養生で、緊張の季節を元気に乗り切ってほしいと思います。
さくらい・だいすけ 漢方専門家、国際中医専門員。中医学の心得や養生法をゆるくつぶやくツイッターが人気。『体をおいしくととのえる! 食べる漢方』(小社刊)ほか、監修書・著書多数。
※『anan』2020年4月8日号より。イラスト・原田桃子 文・新田草子
(by anan編集部)