30代前後の働く女性は不足気味? ビタミンDの働きは…

ライフスタイル
2018.10.27
多様な働きに、もはやホルモンのひとつといわれるビタミンDも、不足しがちな栄養素。その原因には意外や、「きれいでいたい」という女ゴコロも関係しているようで…。赤坂ファミリークリニック院長の伊藤明子先生にお聞きしました。
ビタミンD

――ビタミンCとかEは美容にも関係あるし、積極的に摂ろうという気になるけど、Dは正直、どんなものなのかピンとこないかも。でも、それなりに必要なものなんですよね?

伊藤先生:それなりどころか、とても重要なんですよ。ここ数年、さまざまな作用があることが分かり、世界中で研究が進んでいるビタミンです。

――そんなに注目されているとは。よほど大切な働きがあるんですね。

伊藤先生:よく知られているのは、骨を作るのに欠かせないものだということ。でもそれだけじゃありません。非常に幅広い機能を持っていて、免疫力をはじめ、体のさまざまな機能を上げる働きがあるんです。さらに細胞の核に作用して、遺伝子にも影響を与えることが分かっています。

――知りませんでした。そんな“スーパービタミン”だったとは。

伊藤先生:なので、これが足りないといろいろな不調が起きてきます。まず、免疫力が下がるので風邪やインフルエンザなど感染症にかかりやすくなるし、副甲状腺の機能が低下して、ホルモン調整にも悪影響が及びます。すると肌トラブルやエネルギー代謝のアンバランスなどが起き、眠れない、気分が落ち込むといった不定愁訴にも関連していることが示されています。ビタミンDが少ない人は、不妊症にもなりやすいことが分かっていますし、さらに今年3月には、国立がん研究センターの研究から、ビタミンDの値が低いほうががんのリスクがよりあることが示されました。

――えええ~! コワい。自分が足りているかどうか、知りたいです。

伊藤先生:血液検査で調べられますよ。血液中のビタミンDの数値によって、ビタミンDが欠乏ぎみかが判断されます。栄養に詳しいクリニックで調べるのも一案。実は日本人女性のほとんどがビタミンD欠乏予備軍であると、多くの調査で指摘されているんです。

――な、なんと(汗)。

伊藤先生:記入式か、採血検査か、という調査方法の違いによって多少差はありますが、私たちのクリニックで行った血液検査では約9割の人でビタミンDが不足気味で、しかも中心となるのは30代前後の働く女性でした。

――それは限りなく全員に近いということでは…? なぜそんなことになっているのでしょう。

伊藤先生:原因は主に2つあって、ひとつは食事から十分に摂れていないということ。例えばビタミンDを豊富に含む代表的な食材は魚ですが、日常的に摂る人はそう多くないようです。

――魚って料理するのが面倒くさいし、つい避けてしまいます。

伊藤先生:ただし、食事に気をつけたとしても摂れるのは必要量の2~3割だけ。もうひとつ、決定的に足りていないものがある。それが、日光です。

――どういうことですか?

伊藤先生:人に必要なビタミンDの7~8割は、紫外線のうちのUV‐Bに当たることによって体内で作られているんです。でも、今は美白のためにサンスクリーンを塗るのが当たり前。それが、日本女性のビタミンD量をますます低下させてしまっています。

――紫外線にそんな大事な役割があったとは。美容を取るか、ビタミンDを選ぶか。悩ましい状況です…。

伊藤先生:真っ黒に日焼けするまで日に当たる必要はないんですよ。駅から会社までお日さまの下を歩くだけでも違います。日光の力が弱くなる冬は、とくに心がけてほしいです。そして、必要量の2~3割とはいえ、食べ物でしっかりとビタミンDを摂ることも忘れないでくださいね。

――1日にどれくらい摂ればいいんでしょうか。

伊藤先生:厚生労働省の推奨目安は1日に5.5μgとなっています。が、研究者によってはもう少し摂ったほうがいいのでは、という意見も。食材に含まれるビタミンDがすべて体内に吸収されるわけではないですし。

――よく眠れない、肌荒れが気になる、やたらと風邪をひく…。例に挙がった不調も心当たりがあることばかりだし、気づかないうちにビタミンDが足りていなかったのかも。

伊藤先生:自分は大丈夫、と思っていても、不足気味の人がほとんど。働く女性ほど日に当たる時間が減るという状況も関係します。ビタミンDは脂溶性なので、水溶性ビタミンと違い一度摂ればある程度体にとどまります。こつこつ溜める“D貯金”生活を始めましょう。

――肝に銘じます!

いとう・みつこ 赤坂ファミリークリニック院長。小児科医、公衆衛生専門医。『小児科医がすすめる最高の子育て食』(講談社)が話題。

※『anan』2018年10月31日号より。イラスト・藤田 翔 取材、文・新田草子

(by anan編集部)



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