
「もちろん初めての体験です。よく状況をつかめないままいろんな出来事が起きるのが面白くて。それを読む人にも体感してもらうために、エッセイではなく小説で書きました」
年齢もバックグラウンドも異なる作家たちと、公園まで散歩のつもりが予想外の遠出になったり、住居棟で非常ベルが鳴って避難したり…。
「英語ができなくても大丈夫と言われていたんですが、初日に37人の参加者中、私が格段にできないと判明して、どうしようかと思いました(笑)。でも、せっかくの機会だしいろいろ聞きたい気持ちもあって、一緒に行動していました。少しずつ聞き取れるようになったかと思えば、翌日は全然分からなかったりと、波がありましたが、最後のほうの発表で“英語うまくなったね”と言われた時は嬉しかった」
自身で撮ったカバーの写真はどれも素敵な環境だと分かるが、
「部屋のカードキーが何度も使えなくなるし、自動販売機は壊れっぱなしで。そんな雑な感じが面白かったし、気楽でもありました」
と、なんでも楽しめる柴崎さんのおおらかさもたっぷり味わえる。一方、後半ではニューヨークで大統領選挙という大きなイベントに遭遇するが、冷静に見ているのが印象的。
「劇的な瞬間に居合わせたとは思いませんでした。私は選挙に参加したわけでもないし、本当に重要なのは、劇的な結果が起こる前の積み重ねだと思うから。むしろ、私はあの場所にいたけれど何も分かっていなかったなということを実感しますね。いい体験ができたとは思っています」
ほかにはニューオーリンズの第2次世界大戦博物館で感じたことなどが、真摯に綴られ心に残る。
「面白いことはまだまだあって、あと2~3冊は書けます(笑)。プログラムを経て、言葉にしても、生活や空間のスケール感にしても、自分の中の基準がちょっと変わった気がしますね。さんざん英語ができないことなどを晒していますが(笑)、自分も何か新しいことをやろうとか、めげずに頑張ろうと思ってもらえたら嬉しいです」

『公園へ行かないか? 火曜日に』 33か国から作家たちが集まってきた、アイオワ大学のインターナショナル・ライティング・プログラムに参加した体験をつづる11編の小説集。新潮社 1700円
しばさき・ともか 作家。1973年生まれ。著書に芥川賞受賞作『春の庭』(文春文庫)など。2010年に野間文芸新人賞を受賞した『寝ても覚めても』原作の映画が公開に。
※『anan』2018年9月19日号より。写真・土佐麻理子(柴崎さん) 大嶋千尋(本) インタビュー、文・瀧井朝世
(by anan編集部)
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