人気コンビの30年の歩みを振り返り。
「本当に大丈夫なのか?」と、編集部だけではなく両球団さえもざわつかせた本誌での2大マスコット競演。周囲の心配をよそに、現れたふたりはリラックスムード。やる気があるのかないのか、表情からは読み取れない…。が、いざ撮影が始まると、カメラマンの要求に全力で応える、そのプロ根性に脱帽! それもそのはず。マスコットは子どもから大人まで、みんなを笑顔にするプロ中のプロなのだから。
共にデビュー30周年を迎えたつば九郎とドアラ。野球のことはよくわからなくても、このふたりを知らない人はいないのでは? つば九郎は東京ヤクルトスワローズ、ドアラは名古屋に本拠地を置く中日ドラゴンズと、同じセ・リーグのライバルチームに所属しながら、お互いを「びじねすぱーとなー」と認め合う関係。イベントや遠征企画など、事あるごとに協力し、息の合ったコンビ芸(?)を見せている。つば九郎によると、「えんきょりのかっぷるよりあっている」らしい。
30年前、プロ野球チームのマスコットがこんなにも人気者になろうとは誰も思っていなかっただろう。実際、1994年のデビュー当時はつば九郎もドアラもチーム内でやや影の薄い存在だったとか。それがやがて、毒舌が冴えわたる筆談(つば九郎)、毎試合バク転に挑戦する勇姿(ドアラ)などで徐々に注目度が上がり、いつしかすっかりチームの顔に。2008年発売のドアラ初の書籍『ドアラのひみつ』はベストセラーとなり、2019年には、つば九郎がWebドラマ『つばめ 刑事(デカ)』で主演を務めるなど、マスコット界をリードし続けてきた。
今では、オフシーズンに開催されるディナーショーのチケットは発売即完売の人気ぶりで、契約更改(球団と交渉して翌季の年俸を決めること)も年末の風物詩のごとく話題になる。ちなみに、今季の年俸はドアラが食パン500g。つば九郎は6万円+ヤクルト1000とジョア飲み放題。活躍に見合っているのかどうかは永遠の謎。
そんなふたりを好きで、信頼しているのは選手も同じ。ヒーローインタビュー時に盛り上げつつサポートすること、普段から声をかけたり、なんでもない話をして緊張をほぐすこともチームでのマスコットの役割だ。現役選手よりもずっとベテランのふたりだからこそ気づいてあげられる、選手たちの人知れぬ苦悩や不安。どんなときも寄り添い、戦うチームの一員であるというところも、愛される理由ではないだろうか。
ドアラはメモリアルイヤーを記念してなぜか割烹着姿でみんなへの感謝を伝え、そういえばいつも裸のつば九郎は選手たちから背番号入りユニフォームをプレゼントされた。そんな30周年シーズンが、もうすぐ終わろうとしている。つば九郎&ドアラの魅力にハマったなら球場へ急ごう。オフシーズンのイベントでも会えるかも?
つば九郎&ドアラに一問一答。
ふたりのトークといえばコレ! 得意の筆談でお互いとチームへの想いを語ってくれた。
Q、30周年を迎えた感想は?
【つば九郎】きづけば わかてせんしゅが うまれるまえから きゅうだんに います!
「ヤンスワ」と呼ばれる若手選手たちは、ほぼ2000年代生まれ。彼らが物心ついたとき、つば九郎はすでに立派なビール腹だった…。
【ドアラ】まわりのみなさんの おかげです。ありがとうございました。
腰の低いドアラ。さすがはスーツも着こなす31年目の社会人。下がり眉のせいか、笑っているのにうつむくと申し訳なさそうな表情に。
Q、ドアラの尊敬しているところは?
【つば九郎】すごく まわりをみている みえている
「おわりのきょしょう(尾張の巨匠)」と尊敬する理由がここに。つば九郎も、選手やスタッフへのさりげない気遣いを忘れません。
Q、つば九郎の尊敬しているところは?
【ドアラ】身体の強さ
酒ばかり飲んでいるわりにハードスケジュールをこなすつば九郎の丈夫さに感服。でも、運動神経では負けない自信があるのでは?
Q、チームのために一番頑張っていることは?
【つば九郎】ぱとろーる
ファンにはおなじみ、つば九郎の「ぱとろーる」とは、麻布界隈でお酒を飲みつつ街の治安を守ること。今宵もご苦労さまです!
【ドアラ】チームの事を知らない人にも 知ってもらう事
これぞマスコットの鑑! 地元では抜群の人気を誇る中日ドラゴンズを他の地方でもPRすべく、遠征先でも頑張っています。
Q、来季頑張りたいことは?
【つば九郎】まいとしおもうことは にっぽんいち
いつもふざけているかと思えば、時折こんなふうに直球のチーム愛をのぞかせるところが、ファンの心をつかむ一番の魅力かも?
【ドアラ】仕事を休まない
今季、体調不良で少しの期間お休みしたことを気にしている様子。ファンからは、あまり無理をしないでほしいといたわる声も。
読者におすすめしたい選手は誰?
【つば九郎】やまだくん むらかみくん どくしんです きゅうりょういいです ながおかくん これからのびていきます
キャプテン山田哲人選手と、令和の三冠王・村上宗隆選手。人気、実力ともに急上昇の長岡秀樹選手も(年俸上がるよ~のポーズ)。
【ドアラ】ひろと。今、だいぶきてます。
髙橋宏斗選手は、中日の絶対的エースへと成長しつつあるピッチャー。弱冠20歳にして昨年のWBCで活躍したことも記憶に新しい。
つば九郎 東京ヤクルトスワローズの球団マスコット。背番号2896。2022年に主催2000試合出場という快挙を達成した、自称「できるおす(デキる雄)」。愛らしい容姿と毒舌とのギャップが持ち味。好物はるーびー(ビール)。
ドアラ 中日ドラゴンズの球団マスコット。背番号1994。大きな耳がチャームポイントだがコアラではないのでユーカリは食べず、好物は「体にいいもの」。デビュー30周年記念書籍『改めまして、ドアラと申します』が絶賛発売中。
※『anan』2024年9月18日号より。写真・森山将人(TRIVAL) 取材、文・黒澤 彩 撮影協力・AWABEES バックグラウンズ ファクトリー
(by anan編集部)