
場の空気を乱さず、できるだけ穏やかに過ごしたい。そのためには、自分さえ我慢すればと、なかなかNOが言えない…。そんな優しき丁寧すぎるさんも、断ることがもたらす数々のメリットを知ると、断る勇気が湧いてくるはず。YES/NOを適切に判断するために、覚えておくべき考え方も紹介します。職場の人間関係に詳しいキャリアコンサルタント・みさきじゅりさんにお話を伺いました。
Index
頑張りすぎ度診断
丁寧すぎるさんは頑張ることがデフォルトで感覚が麻痺してしまい、自分がそうだとは気づけない状態に陥りがち…。10個以上当てはまったら、丁寧すぎるさんの可能性大。
□「~したい」より「~するべきだ」と思うことが多い
□「大丈夫です」「できます」とすぐ言ってしまう
□マニュアルなどを見て「ここに書いていないことが起きたらどうしよう?」と考えてしまう
□「迷惑をかけたら申し訳ない」と思う
□「もっとやれることがあったのでは」といつも気掛かり
□手の抜き方がわからない
□大変そうな人がいると気になって仕方がない
□休みの日も、ふと仕事のシーンが脳裏に蘇る
□気づいたら夜なべしていることが多い
□「よく気がつくね」と言われる
□人からの誘いを断れない
□仕事もプライベートも、もっと良くしていきたいのにそれができていない自分のことが嫌いになることがある
□ひとりで過ごす時間が必要だけれど社会とのつながりは保っていたくてそのバランスがわからない
□職場で「気軽に相談してよ♪」と面と向かって言われると、どこから話していいか考えてしまうから気軽になれない
□チャットの未読通知アイコンがたまらなくプレッシャーに感じる
□抜けたいグループLINEや仕事のスレッドがあるが、いつもそこに一番先に目がいってしまう
□自分としては考えを丁寧に述べているだけなのに、会話の途中から周りの人の集中力が落ちているのがわかる
CHECK:NOを伝えようと思えるようになろう
1、頑張っても頑張らなくてもいい
完璧主義がいきすぎて、ほどよく手を抜けないのが丁寧すぎるさんの大きな悩み。
「頑張りは疲労として肉体に表れるので、そんな自分を変えたいと思っている。ただ、頑張りすぎをやめることさえも頑張ろうとするのが丁寧すぎるさん。なので、発想を変えてみましょう。頑張る自分を否定しなくてOKですし、疲れて休んだとしても、それであなたへの信頼や感謝が変わることはありません。どっちを選んでもいいと思っておくと、気がラクになります」(キャリアコンサルタント・みさきじゅりさん)
2、自分という電池を大切に使う
困っても周りに迷惑をかけまいと、人に頼ることが苦手という人も少なくない。「自身を電池だと思ってみて。一人で無我夢中に頑張っていると、みるみるうちに充電が減っていきます。実は、そんな状態を脳は気持ちいいこと、と感じています。だからフルスロットルで続けることができるのですが、気づけば残りが0%に…。自分の心や体を大切にしないまま突き進むと、燃え尽き症候群になってしまいます。電池が残っているうちに、意識的に休みましょう」
3、NOとNGは違う
自分ができないことでも、頼まれたら頑張ろうとする丁寧すぎるさん。しかし、頑張ろうとしている時点で、それは本来はできないこと。「NO=やらない、NG=できない、と考えてみましょう。NOを伝えることは『できない』と言うことではありません。できないことをやろうとしても、結局手詰まりになり悪循環に。自分のスキルや置かれている状況を鑑みて、『全部はできないけれど、ここまでならできる』と伝えることもNOのうちに入るのです」
4、NOはプラスの効果をもたらす
NOを言うことは悪いことばかりではないと知れば、安心して言えるようになるはず。「まずNOが言えるようになると、あなた自身の心に余裕が生まれます。さらに、周りにもいい影響を与えることができるんですよ。たとえば、丁寧すぎるさんが『私だけが我慢すればいい』と自己犠牲精神を発揮して、抱え込んだ仕事が10あるとします。そのうち2つを断ればそれは他の人に回りますよね。それが、その人のスキルを磨き成長するチャンスになるのです」
ACTION:無理は禁物! スキルやキャパの考慮を。

【考え方のフロー】
依頼発生→落ち着く→心の仕分けをする→スキル的にどうか→できないならNO!
→できる→キャパ的にどうか→できない→伝え方を考えてNO!
→できるならYES!
1、落ち着く
何はともあれ焦らずに! すぐ心を落ち着かせる方法には、深呼吸をする、自分の体に触れる、肌触りのいいハンカチを触る、ラベンダーやネロリの香りを嗅ぐなどがある。
2、心の仕分けをする
心の仕分けを実践。仕事を振ってきた相手はできるのか軽く聞いただけかもしれない。絶対にやらなければいけないと相手は言ったのか、自分自身に確認しよう。
3、スキルがあるか
そもそも、頼まれたことが物理的に「できるか/できないか」を客観的に判断しよう。役に立ちたい一心で、できないことを引き受けると、後々大変になる可能性大。
4、余裕があるか
スキル的にはできても、キャパ的にはできないことも。残業せずにこなせる量と期日かどうかで判断しよう。無理をすればできることは、無理をしないとできないことと心得て。
NOの伝え方〈実践編〉
NOを言いたくても言えない場面を想定しての実践編! 実際にありそうなシチュエーションは、みさきさんが丁寧すぎるさんから相談を受けた内容をアレンジしてくれたものなのでリアル! 時にやんわりと、時にスパッと臨機応変にNOが言えるようになろう。
CASE1:自分の代わりに別の会議に出てよ!
NG:頼まれて即返答は後悔する可能性大!
OK:相手の言葉を復唱しながら考える。
丁寧すぎるさんはしっかり準備したい派なので、予定外のことが起こると焦りがち。「まずは深呼吸して落ち着き、相手に求められていることを復唱しましょう。この間に上記のフローに沿って考えます。できないと判断したら『今の仕事に支障が出ます』と納期が遅れるかもしれないなど、理由を穏やかに伝えましょう」
CASE2:年上や上司のグチを聞かされる
NG:真剣に聞くとグチが長引くだけ…
OK:作業の手を止めず思いっきりスルー!
生真面目がゆえに、聞きたくもない人のグチも身を乗り出してまで聞いて疲れてしまう…。「これは、あからさまに嫌な態度をとっていいシチュエーション。下を向くなどして聞いていないアピールを。丁寧すぎるさんは、常日頃からその仕事ぶりや人柄が評価されていますから、たまにはストレートに表現しても心配ありません」
CASE3:今後距離を置きたい人のイベントに誘われた
NG:押し切られて来たけどまったく楽しくない…。
OK:誘われたら間髪入れず「行けない」と断って。
学生時代のサークル仲間、前の職場の先輩など、ゆるく続いているが一緒に出掛けるほどの仲ではない。この微妙な関係性においてNOを言うコツは? 「笑顔で『先約があって行けない』と即答を。キッパリ断り、相手に言葉を挟む余地を与えないようにしましょう。ツッコまれてしまうので、先約の内容は絶対に言わないで!」
CASE4:デートに行くより眠りたい
NG:疲れた体にムチ打って来てしまい疲労倍増…。
OK:相手への好意+キャンセルの理由を。
断ったら申し訳ないという気持ちが先に立ち、無理にデートに行ってしまいがち。でも、眠りたいと思うのは疲れている証し! 休息で充電を。「ポイントは『あなたのことを大事に想っていて、本当は会いたい』ときちんと伝えること。その上で『疲れているから体を休めたい』と理由も言えば、パートナーも理解してくれるはず」
Profile
お話を伺った方・みさきじゅりさん
HSP専門キャリアコンサルタント。元来のナイーブな感受性と旺盛な好奇心を持つ気質と転職経験を活かし現職に。著書に『丁寧すぎるさんのための仕事・人間関係力の抜きかた』(三笠書房)や『とても傷つきやすい人が無神経な人に悩まされずに生きる方法』(ダイヤモンド社)など。
anan 2447号(2025年5月21日発売)より