いまエンタメは、見て楽しむのはもちろん、“体感”できるコンテンツに人気が集まっている。なかでも最近トレンドとなっているのが“イマーシブ”というキーワード。“没入型”の意味を持つ言葉だが、具体的にはどんな体感を指すのだろう。連日大盛況の没入型エンタメ施設「イマーシブ・フォート東京」で複数の演目を制作するなど、イマーシブの仕掛け人ともいえる興山友恵さんに、その共通認識について伺うと、
「私は“イマーシブ”に明確な定義はないと思っているんです。映画や小説、リアル謎解きゲーム、テーマパークなど、さまざまなエンタメがそう言えると思います。ただ、『イマーシブ・フォート東京』で没入体験としてこだわっているのは、目の前で繰り広げられる物語に、傍観者ではなく当事者として入り込むことができるところ。それはとても刺激的で、体験後の余韻も深く長く続きます」
これまでのエンタメからのさらなる進化が感じられる、新たな体験。「イマーシブ・フォート東京」のように、作り込まれた世界観の中で、演者と一緒に物語を自分事として体感するタイプはもとより、最新のテクノロジーを駆使した空間で、アートと一体化するようなデジタルコンテンツなども、イマーシブと称されている。こうした没入型の体験施設が続々登場し、多くの人の心を掴んでいるが、なぜいまヒットしているのだろう。
「おそらく人々のエンタメ欲が向上しているからではないでしょうか。例えば、VRがここ数年でますます進化するなど、一昔前よりも没入体験が身近になり、それを実現できる技術も発展しています。また、コロナ禍を経て、人々の関心が、画面の向こうでの出来事から、実際に体感できるライブエンタメに立ち返っているようにも思います。そんな時代の流れとともに、没入型のエンタメが受け入れられているという感覚です」
「イマーシブ・フォート東京」では、複数の演目が同時に上演されているのが特徴で、興山さんはその中の体験型演劇『江戸花魁奇譚』の制作を指揮。江戸遊郭を舞台としたこの物語は、参加者が当時にタイムスリップしたような空間へと誘われ、ある事件の目撃者となる。時には演者と直接コミュニケーションをとるなど臨場感たっぷりで、「もう一度体験したい」とリピーターの多い作品だ。
「ここで体験できることは百人百様。注目する演者や小道具、空間などにより、感じることは一人ひとり異なります。日常生活でもそうだと思いますが、そんな自分だけの特別な体験をしたら、誰かに話したくなるのは必然ではないでしょうか。そして、同じ物語を共有していたはずの人が自分と違う感想を持っていたら、ほかにもまだ何かあるのかもと、探求したくなるはず。それがリピートにつながっているのではと思います」
興山さんが所属するマーケティング企業「刀」では、新たな体感プロジェクトが進行中。7月25日に沖縄にオープン予定のテーマパーク「JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)」は、早くも大きな注目を集めている。
「一番の魅力は、沖縄の大自然。その中で、気球に乗って上空から雄大な景色を眺めたり、約19mの高さから大自然へと生身でダイブをしたりと、22個のダイナミックなアトラクションが体験できます。なかには巨大な恐竜が襲いかかるライド・アクションなどパーク全体が非日常空間。日頃の自分から解放され、“興奮”と“贅沢”が味わえます」
想像するだけでも刺激的! このようにその場の世界観にどっぷり浸る体験は、年齢や趣味・嗜好など問わず、どんな人でもハマる余地があるという。
「もちろん、演劇や謎解き、ゲームなどエンタメ好きの人とは相性がいいと思います。そうでなくても非日常への憧れや、せわしない現実を忘れたい人にも楽しんでもらえるはず。ほかにも、きっかけさえあれば多くの人がハマっていくジャンルなのではと思っています。そのうえで作り手としては、どっぷり浸れるだけのクオリティの高い世界観や、心揺さぶられる物語をしっかり準備しておくこと。それが大切だと思っています」
今後もイマーシブ系の体感エンタメは、進化していくのだろうか。
「そうですね。それは究極の“生体験”かもしれませんし、テクノロジー的なことかもしれませんし、どんな形かは未知数ですが、これからも進化していくと思います。私が手掛けている直近の新作は、4月下旬から『イマーシブ・フォート東京』で上演が始まる『真夜中の晩餐会』ですが、食事が物語の中に組み込まれているというチャレンジングな演目です。『江戸花魁奇譚』が究極かもと思っていましたが、体感エンタメの可能性は掘れば掘るほどまだまだある! 私たち自身、常に新しい体験を提供できればと努めています」
イマーシブ・フォート東京

画像提供:イマーシブ・フォート東京 SHERLOCK HOLMES, DR. WATSON, and are trademarks of Conan Doyle Estate Ltd.(R)
傍観者ではなく当事者として、目の前で展開する物語に没入。
映画のように作り込まれた空間に参加者が入り込み、一流の演者が紡ぎ出す物語を間近で体感する。2024年3月にオープンするや、そんなイマーシブシアター形式のクオリティの高いエンタメが、SNSなど口コミで瞬く間に話題に。現在、『江戸花魁奇譚』『ザ・シャーロック~ジェームズ・モリアーティの逆襲』など5作品が上演中。
東京都江東区青海1‐3‐15 不定休 問い合わせ:HPへ
「JUNGLIA OKINAWA」

画像提供:ジャパンエンターテイメント
神秘と生命に満ちた大自然で…。刺激的な環境の中で自分を解放!
沖縄北部に、7月25日に開業予定の大型テーマパーク。約60haの広大な大自然が広がる敷地内で、アトラクション、エンターテインメント、スパ、レストランなどが楽しめる。優雅に空からの大絶景を望む気球や、手つかずの森林に体ひとつで“飛び込む”体験、リアルな恐竜との出合いなど、まさに非日常空間! 都会にはない興奮と贅沢が味わえる。
沖縄県国頭郡今帰仁村字呉我山553‐1 問い合わせ:HPへ
PROFILE プロフィール
興山友恵さん
おきやま・ともえ クリエイティブ・ディレクター。2018年、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン初のイマーシブシアター「ホテルアルバート」などを制作。現在、興山さんが所属する「刀」のCEOは、USJの劇的再建で注目を集めた森岡毅氏。
anan 2441号(2025年4月2日発売)より