インフレ・物価高は続く? 2025年の暮らしを変えるトピックス

ライフスタイル
2025.01.01

物価高や加速するAIの進化、日々変化する国際情勢など、私たちの生活に影響を及ぼすさまざまなトピックス。その中で、2025年の生活はどのように変化していくのだろうか? anan読者の暮らしに密接する特に注目すべきニュースを、石田健さんに解説してもらいました。

生活の中に、ますます“AI”が入り込んでくる。「使いこなそう」という姿勢で、仕事も生活も便利に。

SiriやチャットGPT、お掃除ロボットなど、すでに私たちの生活に入り込んでいる“AI”(人工知能)。

「これまでのように、ある一部分のタスクを代替するのではなく、さまざまなタスクで成り立つ私たちの仕事をプロセスとして認識し、実行する“RPA”(業務自動化)により、AIは劇的に変化するでしょう。すでにかなり高いクオリティで、業務をサポートしている印象も。一方で、エンタメやカルチャーの領域で広まっている“ディープフェイク”は、本物と判別がつかないような偽物の動画が拡散されたり、闇バイトのような詐欺事件では、対象者の身近な人に限りなく近い声で電話がかかってくるなど、ネガティブな事象もこの先さらに出てくるはずです。ただテレビや新聞などのマスメディアでは、AIは人間の脅威になる、怖いなどといった話題も多いですが、AIをポジティブに使いこなそうとする人と、ネガティブに捉え表層的な理解にとどまっている人とでは、パフォーマンスにギャップが生まれてくるでしょう。あまりネガティブな情報に踊らされず“仕事や暮らしがさらに便利に、楽になる”という実感とともに、AIを理解していくことが大事です」

【KEYWORD】ディープフェイク
AIなどの技術で人物の顔や声などを合成し、オリジナルとは異なる画像や動画を生成したもので“ディープラーニング”(深層学習)と“フェイク”(偽物)を組み合わせた造語。ディープフェイクは古くから存在していて、政治的なプロパガンダや研究成果の捏造などに悪用されてきた。今は生成AIによって誰でも簡単に作ることができるようになり、詐欺やフェイクポルノなどの被害の拡大が懸念。法整備が進んでいる。

正常化した経済に近づくためのプロセスとして“インフレ・物価高”は続いていく。

世界的に加速しているインフレ。日本では連日、物価の高騰のニュースが流れ、不安を抱いている人も多いことだろう。

「インフレはこれまで各国で繰り返されており、物価高によって格差が拡大する事象は今までにもあったこと。ただ今回のインフレは、格差に対する不満や憎悪のような意識が強い印象です。例えば最近では、アメリカ大統領選挙や兵庫県知事の疑惑・出直し選挙などに象徴されるような、既得権益を持っている人たちがずるいことをして一般人を苦しめているのではないか…といった意識のように。ポイントは2つ。資産の有無により、物価高に苦しむ人と問題なくやり過ごせる人との間に格差が生まれて摩擦が起こる可能性があること。もう一つは、バブル期含め約30年間デフレの中で生活をしてきた日本人は、インフレの世界を知らない、もしくは忘れてしまった人がほとんどであること。これは景気をコントロールする日銀にとっても久しぶりの事態なので、先行きが見えない部分もあります。ただインフレ自体は、緩やかなものであれば経済の正常化に近づくための経済政策として目指すものなので、問題とはいえません。NISAなど資産形成の重要性はますます高まっていくでしょう」

【KEYWORD】インフレ
“インフレーション”の略。日用品やサービスの値段=物価が継続的に上がり、お金の価値が下がることを指す。物価の上昇で企業が利益を得ることで人件費を引き上げ、社員の給料が上がり、消費者はさらに物を買うようになるというサイクルを繰り返して景気が回復。つまりインフレは、好景気で起こる。一方で、短期間で物価が高騰し、給料の増加が追いつかない“ハイパーインフレ”が起こると、経済は破綻する。

“不安定な外交”がもたらす問題は「モノの流れの不安定化」。

第2次トランプ政権の誕生による国際環境の変化や、日本では少数与党により自民党政権が不安定になるなど、外交の不安定化にも注目したい。

「多くの人にとっては、外交が自分たちの暮らしに密接に結びつくようなイメージはないかもしれません。でも、日本は食べ物やエネルギーなど多くを輸入に頼っているため、外交によってはモノの流れが不安定になる可能性も。少し前に起こった半導体不足では、パソコンやスマホを買ってもなかなか届かないという事態が起こりましたが、今後も例えば子供の衛生用品や今までは買えていたお気に入りのブランド服が手に入りにくい、一部輸入食材の値段が激しく高騰するなどといったことが起こるかもしれません。日本は世界の主要国なので、他国に比べれば極端に不安定になることは考えにくいですが、長期にわたり政権を担ってきた自民党の体制が不安定になることで、変化が生じる可能性はあります。現在韓国では政治状況が不安定化していますが、政治だけでなく旅行や文化などにも影響が出るかもしれません。グローバルに繋がった世界では、一見すると遠い国の出来事が、私たちの暮らしを大きく左右することもあります」

【KEYWORD】経済安全保障
自国の脆弱さやリスクを減らすため、国家や国民の安全を経済や技術の面から保障するという概念。自民党は「我が国の独立と生存および繁栄を経済面から確保すること」とし、過度に他国に依存しない「自律性の確保」と日本の存在が国際的に不可欠であるという「不可欠性の維持・強化・獲得」を戦略的に行う方針。国際環境が変化する中、日本だけではなく各国の経済安全保障への取り組みはますます進んでいる。

“反ESG”という“バックラッシュ”で、さまざまな意見・立場の対立が起こる年に。

企業の成長のためにはESGの観点が必要だという考えが、ここ5年ほどで世界中に広まっている。

「環境や貧困、ジェンダーに関する議論など、さまざまな社会問題に対し、どのように取り組んでいるかを開示する企業が増える中、’23年くらいからアメリカでは“反ESG”という言葉が注目されるように。これは単にESGに反対しているというより、物価やお金、命の問題のほうが大事だという主張がコアにあると思っています。ただ、ESGに取り組む=余裕がある人だと思われている節もあり、実際はそうではない側面も。例えば気候変動が進むと、低所得の人や貧困に苦しむ国の人など、経済的により脆弱な人へのリスクが高くなる。本来はESG=物価やお金、命の問題に繋がっているはずなのに、誤解して認識されてしまうことで人々の対立や憎悪を生み出すのです。’25年は日本や世界の国々で、ESGをめぐる立場の違いや、社会問題に対して逆風が吹き始めるかもしれません。ちなみに日本では“103万円の壁”が問題になっていますが、これも単にお金の問題だけではない。税金や制度が理由で個人の選択を諦めなければいけないような、人生の問題でもあるんです」

【KEYWORD】ESG
Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字を組み合わせた言葉。温暖化などの環境問題、人権問題や差別などの社会的な課題に対し、企業が長期的に成長するために必要とされている観点を表す。持続可能で豊かな社会の実現を目指すための、ESGへの取り組みができていない企業は、投資家などから企業価値が低いとみなされる。ESGに配慮した企業への投資を“ESG投資”という。

PROFILE プロフィール

石田 健さん

いしだ・けん 1989年10月14日生まれ、東京都出身。ニュースをわかりやすく解説するWebメディア「The HEADLINE」編集長。また起業家、投資家としてTVや雑誌、YouTubeなど幅広いジャンルのメディアに出演。情報番組『DayDay.』(日テレ系)にレギュラー出演中。

イラスト・グランピーちゃん 取材、文・若山あや

anan 2428号(2024年12月25日発売)より

MAGAZINE マガジン

No.2428掲載2024年12月25日発売

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