Q.どうして、何も知らない人に一瞬で恋に落ちることが可能なの?
動物行動学研究家・竹内久美子先生の答え。
「動物としての私たちは、ある人の持つ遺伝的性質が外に表れたもの=表現型から、その人が子作りのパートナーとして優れているかどうかを判断します。なので、一目惚れはなんら浅はかなことではありません。長く一緒に過ごせるかに関わる、性格や育った環境などは確かに一目ではわかりませんが、良い子孫を残すという生物の目的を達成するために必要な情報は瞬時に手に入るのです」
脳研究者・池谷裕二先生の答え。
「本来『好き』に理由はいりません。ただ脳は物語が好きなので、『好きだ』と思ったら後から理屈をつけるんです。そもそも恋愛とはオキシトシンによる盲目的状態で、相手の良いところも悪いところも見えなくなる。相手を知らずに好きになるのはおかしい、という意見こそがおかしいのかもしれませんよ。僕らはただの生物にすぎないのだから、もっと動物的な直観に従っていいと思います」
法政大学文学部心理学科教授・越智啓太先生の答え。
「昔は、まずなぜ好きなのかという理由が先にあってから恋をするという考えが強かったのですが、今は『好き』に理由はいらないという説が有力。男女は理由なく直感的に恋に落ち、後から理由付けをするのです。また、初期分化理論という、関係がうまくいくかは恋愛のごく初期段階に決まるという考えが最近は強い。互いを知る時間がなくても、『この人とは続く』という予想は当たるんです」
Q.一目惚れはお互いにしていることもある?
動物行動学研究家・竹内久美子先生の答え。
「免疫の型の相違のように、生物的な相性が合っての一目惚れなら、互いにしている可能性が高いです。ただ、一目惚れはその相手の遺伝子を自分の子に伝えたくてするものなので、相手が自分よりはるかにハイレベルで優秀な遺伝子を持っていることもあるでしょう。その場合は、相手にとっては自分は特に望ましい遺伝子の持ち主ではないので、残念ながら一方的な一目惚れかもしれませんね」
脳研究者・池谷裕二先生の答え。
「脳科学では、視線が感情を作るといわれます。一目惚れをした時、相手を見る目は交感神経の活発化の影響で瞳孔が開き、いわゆる『きらきらした眼』に。見つめられたほうはその視線に誘導されて相手を見つめ返しますが、ここで『あの子を見てしまうのは、気になるからだろう』と脳が説明付けをし始めます。その結果、一目惚れされた人もした側に好意を抱くことがありえます」
法政大学文学部心理学科教授・越智啓太先生の答え。
「生物としての相性の合致を一目惚れで判断しているとしたら、相手も自分に相性の良さを感じているはず。ただ、恋愛感情がいつ育つかというと、相手と会っていない一人の時なんです。これを反芻傾向というのですが、これによって実態から離れて相手を理想化することもあります。この反芻傾向には個人差があるので、それによって“惚れ”の程度に差が出ることは考えられます」