「北アルプス国際芸術祭」で“アート×自然”の旅を満喫! 注目の4エリアを紹介

ライフスタイル
2024.10.24
国内随一の美術館数を誇る長野県。現在、大町市では「北アルプス国際芸術祭」が開催中。一人で、友だちと、恋人と…。この秋は大自然に身を委ねながら、アートを満喫しよう。

【長野】アルプスの雄大な自然に包まれる。心を研ぎ澄ます、アートの旅。

芸術の秋は信濃大町でアート×自然の旅を!
美しい自然や、その地域の風土を生かしたアートが楽しめる芸術祭。なかでも長野県大町市の「北アルプス国際芸術祭」は“水・木・土・空”をコンセプトに2017年に始まり、今年で3度目の開催。アート好きはもちろん、雄大な自然に包まれたい、歴史を感じたい、という人にとっても見逃せない芸術祭となっている。

「本芸術祭では、大町市をそれぞれ異なる特徴を持つ市街地・ダム・源流・仁科三湖・東山という5つのエリアに分け、38の作品が点在しています。源流エリアは水が美しく、東山エリアでは里山の原風景に包まれながら北アルプスを一望できる。1つの芸術祭なのにエリアごとに異なる自然が楽しめるのは、大町市ならではです。いろいろなエリアを巡ることで、アートと共に“水・木・土・空”を全身で体感してもらえると思います」(北アルプス国際芸術祭 広報担当・高橋勇太さん)

期間中はオフィシャルツアーや専用のアートバスが運行しているので、車がなくても大丈夫。流れる景色を車窓から眺めていると、数十分移動するだけで印象が変わり、別の土地を訪れたかのよう。駐車場から作品まで歩く時間にも美味しい空気を感じることができる。散策気分を味わったり、地元の人々と交流してもらえたらと、駐車場はやや遠めに設置しているのだとか。

芸術祭には、美術館でアート鑑賞するのとは違う角度の面白さが満載。例えば、「竹の波」のような巨大なインスタレーション作品は、地域住民やボランティアと共に制作された。そうした協働作業に想いを馳せながら作品を眺めるのも楽しみ方の一つだ。

「地域を巻き込めるのは芸術祭だからこそ。他にも、作家さんが現地の視察に訪れて生まれたアイデアが反映されていたり、大町の伝説や民話からインスピレーションを受けて作られた作品も。歴史や文化とアートの融合も楽しんでもらえたら嬉しいです」

ここでは注目の4エリアをピックアップ。いざ、アート旅へと出かけよう。

北アルプス国際芸術祭 2024
開催中~11月4日(月) 9時30分~16時30分 水曜休 *鑑賞には作品鑑賞パスポートもしくは個別鑑賞券が必要。作品鑑賞パスポートはインターネット、もしくは信濃大町駅前インフォメーションセンターなどで販売中。一般当日3000円ほか、個別鑑賞券 1アートサイト300円 TEL:0261・85・0133 https://shinano-omachi.jp

アクセス/東京駅から北陸新幹線で長野駅下車後、特急バス長野大町線で約70分、または新宿駅から中央本線 特急あずさで松本駅下車後、JR大糸線で約1時間。

1、仁科三湖

仁科三湖は大町市の北の玄関口。県内有数の深度と透明度を誇る青木湖、四季折々の景観が美しい中綱湖、アクティビティも豊富な木崎湖からなり、ダイナミックな大型作品も。

ケイトリン・RC・ブラウン&ウェイン・ギャレット「ささやきは嵐の目のなかに」

アート 長野県
長野県

レンズを通した世界が、“見る”ことについて問いかける。
木崎湖畔沿いの仁科神社北の森に設置された没入型のインスタレーション作品。雨のしずくにも思える、およそ1万5000の眼鏡の度付きレンズが吊り下がり、私たちが世界を“見る”方法について問いかける。作品内部には、1つ目の画像のように木をぐるりと囲むベンチが設置され、虫の鳴き声やそよ風に耳を澄ませながら静かな時間を過ごすことができる。

蠣崎 誓(かきざき ちかい)「種の民話 ―たねのみんわ―」

アート 長野県
アート 長野県

やがて土に還る素材で作られた循環型のアート作品。
作家が大町の人々から聞いた“食”にまつわるエピソードや民話、自然との関わり方を描き出した作品。北アルプスに生息する絶滅危惧種の雷鳥や中綱湖の伝説など、見る角度によってさまざまな物語が感じられる。作品素材は地域の人々に提供してもらったり、自身が収集した約250種の植物の種。これらの種は展示終了後、自然に還される予定。

2、東山

市街地の東側には豊かな里山エリアが広がり、八坂・美麻(みあさ)地区など人々の営みを色濃く残す集落が点在。作品も展開されている鷹狩山の山頂からは大町全域を一望することができる。

ヨウ・ウェンフー〈游文富〉「竹の波」

アート 長野県
アート 長野県

竹と風、地元住民との協働。壮大なプロジェクトを体感して。
地元住民の協力のもと竹の伐採、加工、編み込みを行い、八坂公民館を囲んだインスタレーション作品。今も多くの竹林が残る八坂地区の竹を骨組みに、表面には柔らかい台湾の竹が用いられた。地元の人々との協働を通じ、目には見えない情熱や交流が「波」の形となった本作。直線的な表側とうねりを感じる裏側、異なる表情が楽しめるのも面白い。

佐々木 類「記憶の眠り」

アート 長野県
アート 長野県

県内最古の重要文化財で大町の記憶に耳を傾ける。
重要文化財・旧中村家住宅の馬屋で展開するガラスを用いた作品。植物は過去と現在の記憶を持つと考えられる一方、ガラスは土地の記憶を持たない素材。しかし埃や雨、指紋の付着などとともに人々の暮らしを記憶する。そんなガラスに植物を閉じ込めると、水分は気泡となり、土地の記憶をガラスに刻む。築300年の古民家で、途方もない時間に想いを馳せて。

3、源流

エリア中央に北アルプスの雪解け水や湧き水が豊富な鹿島川が流れ、周辺には水にまつわる地名が多く残る。南側の安曇野・松本方面には盆地が広がり、特徴的な神社仏閣も。

小内 光「えねるぎの庭」

アート 長野県
アート 長野県

自然の風景と融合した、力をくれる言葉たち。
まるで原生林のような宮の森自然園。その湧水が流れる木道沿いに、植物や虫の生命、いつかの「わたしたち」の時間が言葉とともに綴られる周遊型作品。作家は自然園に蓄えられたたくさんの時間を“えねるぎ”と呼ぶ。木漏れ日を感じたり川のせせらぎに耳を澄ませながら言葉を追いかけ、一周し終わる頃には不思議と体が“えねるぎ”で満たされるはず。

宮山香里「空の根っこ‐Le Radici Del Cielo‐」

アート 長野県
アート 長野県

空と大地の間に身を置き、独自の空間性を体感して。
天照皇大神が祀られ、聖と俗、常世と現世の“端境”として存在してきた須沼神明社の神楽殿で展開される作品。作者は大地とつながる「根の森」と、天空に流れ雲海を感じさせる「空の根っこ」を作り出し、鑑賞者はその内部(=神楽殿)に入り空でも大地でもある「あいだ」の時空間に身を置く。風が吹くと木版印刷が施された絹布が風になびいて美しい。

4、市街地

信濃大町駅前周辺、新潟県糸魚川市と松本城下をつなぐ千国街道の宿場町として発展したエリア。作品は商店街や空き家、空き店舗などを舞台に展開される。

ムルヤナ「居酒屋MOGUS」

アート 長野県
アート 長野県

想像力を膨らませ、自分だけの“フードモンスター”を作ろう!
元スナック店で展開する体験型作品「居酒屋MOGUS」。コロナ禍の隔離生活で孤独を感じた作家は、運ばれてくるお弁当の食材から想像上のモンスターを作り、毛糸を素材にリメイクした“フードモンスター”を編み出した。本作では人々が語り合う居酒屋を舞台に、来場者や地域の人たちと交流しながら新たな“フードモンスター”を生み出す。

山本 基「時に宿る」

アート 長野県
アート 長野県

大町にゆかりのある“塩”で描く時空を超えた想いの架け橋。
日本海から太平洋側へと塩や海産物を運ぶための交易路だった千国街道は、別名「塩の道」とも呼ばれ、大町はその宿場町として栄えた歴史が。また、この地域では七夕に織姫と彦星の出会いを助ける「川越し」という人形を飾る風習も。そうした歴史や伝統を背景に、かねて塩を素材に作品制作を行う作家が、時空を超えた想いの架け橋を制作する。

※『anan』2024年10月30日号より。写真・高橋マナミ

(by anan編集部)

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