社会のじかん

民間でも前向きな動きが! 雪解けの日韓関係、注目すべきポイントは?

ライフスタイル
2023.06.16
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「日韓関係改善」です。

雪解けの日韓関係。政治とともに民間の動きに注目。

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3~5月の間に岸田首相は3回にわたり、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領と日韓首相会談を行いました。文在寅(ムン・ジェイン)前政権は、北朝鮮と融和的で南北首脳会談を行い、日本に対しては距離を置いていたのに対し、尹政権は日本やアメリカと連携を強める方向に大きく舵を切っています。日韓で抱える歴史認識や戦時賠償の問題に関しても、いったん解決ということで手を打つことを提案。国内世論を抑え、よく決断したなと感じますが、東アジアの安全保障環境が刻々と変化しているため、やむを得ないということを韓国国民も理解しているのだろうと思います。

この動きは歓迎しますし、目の前の有事に対処するために日米韓の連携はとても大切なのですが、その先のビジョンも必要でしょう。今後、北朝鮮や中国、ロシアとどういう関係を築くのか、分断を生まないための対策も考えなければいけません。

一方、日韓関係では民間でも前向きな動きがありました。寄付文化の浸透に貢献しているNPO「日本ファンドレイジング協会」が、韓国の大財閥・SKグループの財団と組み、「アウトカムファンド for IMM」を立ち上げました。近年、社会的な問題がどれだけ解決されたかを裏付ける指数を「アウトカム」と呼んでいます。たとえば、いじめや自殺件数が減少したなど、課題解決がなされたものをわかりやすい指数で示し、データ化して広く公開。解決を推し進めた団体や企業に財団から資金を入れていき、投資の対象になるようにしていくプロジェクトです。年間で最大約1000万円を3年間投じる試みを始めました。

自殺率が高い、SNSによるいじめが深刻、教育にかける国家予算が低いなど、日本と韓国では同じような社会課題を抱えています。その改善方法を2国間で共有し、解決への糸口を見つけようとしているのです。この交渉が始まったのは前政権時ですが、政治の上でも日韓に柔らかいムードが生まれれば、理解も広まり、プロジェクトの後押しになります。もしかしたら、このような民間発の国同士の交流が、対中国、対ロシアなどとの関係改善の突破口になっていくのかもしれません。

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ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。

※『anan』2023年6月21日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

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