テーブルの上のナプキンが、紙じゃなくて麻。もうその時点で、ありがとうございます、となった。手触りが良い。それは、作家もののお皿や手吹きのグラスにも通じ、料理への期待を膨らませていく。『GRIN』は、新宿御苑前に6月にオープンしたピザを軸にしたイタリアン。窯の火を囲むような温かな空間、窓の外には新宿御苑の眩しい緑。そんな風景と呼応するかのように、岡本太郎の勢いではみ出すのはオクラのピザだ。野菜の力強さをピュアに活かすように合わせるのは、国産モッツァレラに青唐辛子にもろみ味噌。この、イタリアのピッツァとは異なるオリジナリティ、実は、季節野菜のピザで多くの人を魅了してきた『エンボカ』のレシピを継承している。熱々を頬張れば、潔く食材の風味が活き、バリッと香ばしく、もっちりしつつも軽やか。唯一無二のピザは、食べるほどに晴れやかな気持ちをもたらしてくれる。
店の空間設計も務めるオーナーの紙本洋輔さんは、元々『エンボカ』のファンだったこともあり『GRIN』の開店は必然的だったという。ピュアな料理にはピュアな思いが似合う。料理も空間も作り手の思いも、すべてが溶け合った店には、心地の良い空気が流れ出す。ピザと楽しむのは、窯焼き料理にナチュラルワイン。デザートだって抜かりなく。いつまでだってこうしていたい。そんな風に思える、夏の金色の時間。
マルゲリータとオクラのピザ(2500円)に窯焼きで仕上げる新潟もち豚の自家製サルシッチャ(2200円)。千葉県「苗目」のハーブが輝く、いちじくと鹿児島コトブキ リコッタチーズのグリーンサラダ(1600円)。グラスワイン(1100円~)にOpen Book レモンチェッロソーダ(900円)と共に。
GRIN 東京都新宿区新宿1‐6‐3 新宿御苑フロント1F TEL:070・5557・9920 17:00~22:00(21:00LO)※8月よりランチ営業を予定。水曜、第1・2火曜休
ひらの・さきこ 1991年生まれ。フードエッセイスト。著書にエッセイ集『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)など。
※『anan』2024年7月31日号より。写真・清水奈緒 取材、文・平野紗季子
(by anan編集部)