
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「オンラインカジノ」です。
胴元は誰かも問題。依存症も危険大。近づかないように。

芸能人やスポーツ選手が利用していたことで問題になったオンラインカジノ。お金を賭けなければただのゲームですが、最初は無料でも、やがて課金しやめられなくなるように巧妙に設計されています。海外では合法的に運営されているオンラインカジノも、日本国内から接続し賭博を行うことは賭博罪などに当たります。警察庁・消費者庁は「有料版」はもちろんのこと、「無料版」や「無料ボーナス(ポイント)」であっても、オンラインカジノの利用は絶対にやめるよう訴えています。
オンラインカジノの紹介サイトを見ると、優良サイトのランキングがあり、「〇〇政府から認証を受けた大手カジノ事業者がやっているので安心」「匿名でやり取りするので身元がバレることはありません」などと書かれています。これはつまり、単なる遊興、ギャンブルではなくマネーロンダリングに使われやすいということなんですね。問題は、胴元が誰なのかということ。反社会組織の資金源になっているかもしれませんし、国家ぐるみで資金を吸い上げ、核開発などに使っているかもしれません。警察が著名人を検挙したり任意聴取しているのは、罪を問うだけでなく、どこにどの程度お金が流れているのか実態を把握したいからです。
起訴され、裁判で有罪判決が言い渡されて初めて、犯罪かどうか確定されます。ですから、この問題でニュースになった著名人を犯罪者のように扱うのは拙速です。オンラインカジノの無料版は数年前まではテレビに広告を出していた時期もあり、国もメディアも危機意識が低かったと思います。
警察庁の調査によると、国内のオンラインカジノ利用経験者は約337万人。賭けの総額は年間約1兆2423億円。利用者は20~30代の男性が多く、6割の人がギャンブル依存症の自覚があるそうです。オンラインカジノをきっかけに消費者金融や家族や友人に借金をした経験のある人は46.2%。やめられなくなる怖さが、ニュースを機に広まったのはよかったのかもしれません。ただ、国はオンラインカジノを取り締まる一方で、IR推進を掲げ、国内でのカジノ解禁を後押ししており、少々チグハグな印象があるんですね。
Profile
堀 潤
ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。新刊『災害とデマ』(集英社)が発売中。
anan2446号(2025年5月14日発売)より