
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「山林火災」です。
被害を最小限にとどめるためにも林業の見直しを。

世界中で深刻な山林火災が起きています。一昨年はハワイ、今年1月にはロサンゼルス近郊で大規模な山林火災があり29人が死亡、2万ha以上が焼失し、経済損失は2500億ドル以上に及びました。3月には韓国南東部で発生、10日間燃え続け、死者30人、4万8000haが焼失しました。
日本でも2月26日に岩手県大船渡市で山林火災が発生、鎮圧までに12日かかり、4月7日にようやく鎮火が宣言されました。市の面積の9%にあたる約2900haが焼け、221棟の建物が被害に遭いました。これは平成以降、最大の規模山林火災です。その後も愛媛県今治市・西条市、岡山県岡山市南区、宮崎県宮崎市鏡洲、三重県伊賀市で、立て続けに山林火災が発生しました。
大規模な山火事が増えているのは気候変動の影響だと国際的な研究プロジェクト「クリマメーター」が発表。気温上昇、降水量の減少、風が強くなっていることが火事を起こし、焼失範囲が広がりやすくなっているのです。
オーストラリアと日本の二拠点生活をしている小島慶子さんに伺ったのですが、山林火災が発生しやすいオーストラリアでは、「火災危険度評価」を表す標識を各所に設置し、夏の高温乾燥シーズンは、色別に「中程度」「高」「緊急」「壊滅的」の4段階に分け、どの程度火災発生のリスクがあるか可視化できるようにしているのだそうです。リスクが高まった時に政府が全面火器禁止を発令すると、花火や屋外でのグリルの使用、草木の焼却や農業用の火入れが禁止になり、火花が飛ぶような溶接機や草刈り機の使用もやめて、発災に備えています。
日本で山火事が増えたのは、高齢化や過疎化により人手がなく、山の手入れが行き届かないことにも起因しています。取り除かれずに放置された枯れ葉の絨毯が乾いて、火が燃え移りやすい状況を作ってしまいました。日本は国土面積の7割が山林、そのうち4割は人工林です。戦後復興のために多く植林したのですが、その後林業は廃れてしまいました。自然災害は避けられませんが、山林火災が起きる前提で、防災の観点からも林業を組み立て直すことが必要なのではないかと思います。
Profile
堀 潤
ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。新刊『災害とデマ』(集英社)が発売中。
anan2444号(2025年4月23日発売)より