過去と未来の融合が生み出す新たな文化や表現に心惹かれる。
「万博は、未来がぎっしり詰め込まれた空間。非日常的な技術や発想が揃っていると思うので、アトラクション感覚で楽しめそうな気がします。それでいて、かけ離れた未来ではなく、意外と身近なところまで来ている点も面白いですね」
その言葉通り技術は駆け足で進歩しているが、この先に待つ未来をどう捉えている?
「僕らの世代は、テクノロジーや発想ひとつで時代が変わるということを経験済み。それこそ、スマートフォンの登場でさまざまなことが変わったじゃないですか。そう考えると未来は本当に未知数で、技術の使い方ひとつでポジティブな方向へと進んでいけるはず。その際に大切なのは、一歩踏み出す勇気を持つこと。もちろん慎重さは大切ですが、新しい挑戦をしないと進歩は訪れない。だからこそ、未知のものを体験できる万博はすごくいい機会だと思います」
新たなものに目を向ける重要性を語る一方、「その半面、アナログなものが輝いて見える瞬間もあったりします」とも。
「“過去なんて古い”“知らないものは怖い”などと、考えを狭めてしまうのはもったいない。培ってきたものを大切にしつつ、新しいものを掛け合わせていく。そうやって柔軟なマインドでいることで、より魅力的な何かが生まれることも。僕たちが作品づくりでずっと大切にしているのも、そういうことだったりするんですよね」
過去と未来の融合から、新たな文化や表現が生じる。自身がアンバサダーを務め、1月まで開催されていた展覧会「グラン・パレ・イマーシブ 永遠のミュシャ」でも、それを実感したそう。
「ミュシャの作品が持つ美しい世界観にプロジェクションという新しい技術が加わり、本当に素晴らしい展示でした。絵画をトリミングして表示することで立体感やデザインの持つ意味がよりわかりやすくなり、まるで絵の中に入り込んでしまったかのような没入感を体験できました」
自身が興味のあるカルチャーとして挙げたアニメもまた、過去の系譜が息づいていると語る。
「今と昔では表現方法がまったく異なるように思えるけれど、ディテールに過去の作品からのインスピレーションを感じることも。僕が好きな『アーケイン』というアニメシリーズも、それこそミュシャの作品が影響を与えていて。過去だけでなくいろんな表現を取り入れているアニメーションには、無限の可能性を感じます」
カルチャーへの愛と尊敬を携え、表現者としてさらに幅を広げている塩野さん。多彩な役柄を演じる演技力はもとより、ファンイベントなどで覗かせる気さくな人柄も魅力のひとつ。
「オフラインのイベントに足を運んでくださる人は、きっと役柄を飛び越えて僕自身に興味を持ってくれたんだと思うんです。そうやって応援してくださる方々にすごく感謝しているので、皆さんに直接お会いできる機会ではできる限り自分のすべてをお見せしたいなと思っています」
今回のインタビューは未来の話からスタートしたが、最後に自身の未来への想いを尋ねた。
「作品を通してそれぞれの役柄の人生を演じていると、どうしても自分の未来よりもその役の過去に向き合う時間が長くなりがち。なので、僕自身は目標をあまり立てずに今をガムシャラに進んできた感覚があるんです。とはいえ、もちろん先のことを考える瞬間はあって。このお仕事を通して出会った方たちのクリエイションの掛け合いを、いつか僕自身でディレクションすることができたら…という気持ちがあります」
PROFILE プロフィール
塩野瑛久さん
しおの・あきひさ 1995年1月3日生まれ、東京都出身。2012年にデビューし、俳優として活躍。出演ドラマ『魔物(마물)』が、4月18日から放送開始(テレ朝系、毎週金曜23:15~)するほか、4月27日にはカレンダーの発売記念イベントを開催予定。
写真・樽木優美子 スタイリスト・藤長祥平 ヘア&メイク・向井大輔 取材、文・真島絵麻里
anan 2441号(2025年4月2日発売)より