中山優馬さんが在籍18年間で培ったエンターテインメントを全て詰め込んだファイナルツアー。屋良朝幸さんが総合演出と振り付けを担当したセットリストは、汗が飛び散るほど、とにかく踊るステージだった。幕開けは、すべてはここから始まったデビュー曲「Missing Piece」から。キレ味たっぷりに「Get UP!」を踊り、「Fruit」では大人っぽく色気たっぷりな表情で会場を魅了した。
ステッキを振ると、椅子や夢を食べるバクが飛び交うファンタジックな世界観で歌った「おやすみ」では、まるでマジシャンのような中山さん。ハットにショースタイルで届けた「とことん Got It!」では、ステッキを持ってステップを踏む姿も。最新アルバム『GOOD VIBES』収録曲まで中山さんがこれまで大切に歌ってきた多彩な23曲を届けた。
この日の目玉は、一夜限りのNYCの復活。ステージが暗転して、照明が灯るとそこには中山さんと共に山田涼介さんと知念侑李さんの姿が…! 12年という歳月を経て、「NYCでーす」と山田さんが叫ぶと会場は、割れんばかりの大歓声に包まれる。山田さんがセンターで2009年7月15日にリリースしたNYC boysの「NYC」を歌う3人。キラキラと輝きに包まれた、あの頃が蘇った瞬間だ。歌の途中の間奏で「嘘みたいだろ、嘘みたいだろ! 最高だぜ」と、興奮状態の中山さん。“スカイハイ”と叫ぶコール&レスポンスで会場も大盛り上がり。

続いて、2010年10月20日にリリースしたNYCの「よく遊びよく学べ」へ。客席に指差しする山田さん、ガッツポーズをする中山さん、ジャンプする知念さん。キュートな振り付けを楽しそうに踊る3人を見守る会場のペンライトが一段と激しく揺れる。歌い終わると、「改めてふたりをご紹介する前にちょっと俺に時間くれ。この空間は夢じゃないぞ。誰か俺のことぶん殴ってくれ。俺は痛みを感じるぞ。…だって、現実だから!」とパニック状態の中山さん。そして、改めて「山田くんと知念くん!」とふたりを紹介。「盛り上がってますね最高だな。これだけのお客さんが来てくれたら。皆さん盛り上がってますか? 中山優馬のこと好きですか?」と山田さんが会場を盛り上げると、「イエーイ」の大合唱。
「久しぶりすぎんだろ」と山田さんが嬉しそうに言うと「12年ぶりぐらいか…ってか、山田くん、歌詞間違えてた(笑)」と、ニコニコ笑顔で暴露する中山さん。「やめろ~(笑)。俺、歌いながらここなんだっけってなって。久しぶりすぎてちょっと歌詞も曖昧だったけど、それもよしか(笑)」と、おちゃめに笑う山田さん。知念さんも歌詞を覚えているか心配だったという話になり、「思い出した。NYCの時におふたりの陰に半分隠れながら、不安を紛らわしてたこと」と12年前を振り返る中山さん。「そんな時期もあったね」と同意してから、汗ビッショリの中山さんに「汗拭いたら?」と優しく声をかけつつ、「どうも皆さん!」と山田さんが会場をあおる。
キャーと黄色い悲鳴が上がると、「(僕のファンを)とらないで、とらないで(笑)。いやいや、Hey! Say! JUMPのライブへ年末に行かしていただいて…すごかったなぁ。そこで、『このライブに顔出すよ』って言ってくれて、今回実現して」と山田さんと知念さんとステージに立つことが実現したいきさつを説明する中山さん。
ステージと客席が近いことから、「こういう距離で、あまり皆さんと対峙することってないでしょ?」と中山さんが尋ねると、「人見知りだから、この距離だとちょっと(笑)」と、ステージ後ろに後ずさる山田さんと知念さん。「皆さん嬉しいんじゃないですか。この距離で優馬を感じられるっていうのは」と山田さん。知念さんは、中山さんの真似をして踊ってみせ、「ROCKとか、激しく踊っていてね。こうやった瞬間、汗が…。手前の人たち、みんな汗、もらうんじゃない?(笑)」とニヤリ。
3人揃ってのMCが久々すぎて、「俺らどうしていいか、分かってない」と戸惑う山田さんと知念さんに「そうよね。ぶっちゃけ、俺もどうしていいか分からへんのよ。もうちょっとお喋りしてくれる?」とお願いする中山さん。山田さんは「大丈夫ですか。少しだけいいですか、お時間いただいて。今日だけ許してください」、知念さんは「すみません。ちょっと帰り遅くなる可能性が…(笑)。大丈夫ですかね?」と会場に確認。
「今後、こういうことがあるか分かんない」と山田さんが言うと、「ないかもしれないし、あるかもしれないし…。いや、あるって言ってよ!」と中山さん。知念さんは「いや~、どうかなぁ」と首をかしげる。「この日が迎えられるなんて、俺は本当にね、信じられない。最後がいつかも覚えてない…。多分ね、俺の記憶で今パッと思い出してたのは、野球大会」と、中山さんが記憶を振り絞ると「あー」と懐かしそうに声を揃える会場。
これには、山田さんは「皆さん何で覚えてるんだ、野球大会を(笑)」とビックリ。ジュニアがたくさん出て歌う場面を振り返り、「『勇気100%』を歌う時に、山田くんが『行くぞ』ってマウンドへ走っていって、俺と知念くんがついていって。(河合)郁人くんが『NYCがマウンドに揃ってる!』って叫んでくれて(笑)。それ以来じゃないかな」(中山さん)。山田さんは、「それもちょっと記憶が曖昧だもんなぁ」。「最新シングルで言うと、『ハイナ!』の時だ」と知念さん。「ハイナ!」のPV撮影時を振り返り、山田さんが振付師さんに怒られたエピソードを語ると、中山さんも「あのPV撮影の時、お祭りのやぐらの上で撮ろうとしたら、どしゃぶりで…」と思い出した様子。
それから月日が経ちすぎ、「NYC boysもあって、もう15年ぐらい経つわけでしょ」と中山さんが言うと、「15年…それは俺らもおじさんになりますわ(笑)」と、山田さん。知念さんも「31ですか」と、しみじみ年齢をつぶやくと、「こんな31は、なかなかいない」とドヤ顔をする山田さん。すると「輝いてるねぇ。モニターでもやっぱいいですよ。俺が山田涼介だ、って感じで」と知念さんはLEDスクリーンに映し出された山田さんの恰好良さに惚れ惚れ!? 中山さんも「ええやろ。この距離で見られるんやで(笑)」と得意げ。3人の仲の良い掛け合いに会場が笑顔に包まれる。

知念さんの思い出話は続き、「思い出したんですけど、紅白に初めて出場する時の顔合わせで、『代表者、誰か1人ご挨拶お願いします』みたいな感じになって。緊張するから、みんな代表者として喋りたくなくて、みんなで押し付け合い(笑)」と紅白初出場の思い出を。イニシャルがユニット名だったことから、Nの中山さんが挨拶をするべきとなったそう。「表記だって、1人だけYがデカかったし(笑)」と山田さん。
紅白の衣裳の話では、「紫のニット着てた」と中山さん。「俺ら光るやつ(電飾を衣裳に)付けて。あれ、今の時代だったら、制御できるかもしんないんだけど。俺ら踊りながら、歌いながらポチッと押してたんだよな(笑)。タイミング間違えると、めちゃめちゃ怒られた。(全員赤のところが)1人だけ緑になると」(山田さん)と、アナログだった時代を懐かしむ3人。知念さんは、紅白の時は、電飾の電池がもたないから、ギリギリまでスイッチを押さなかったと裏話も。さらには、4年連続で紅白に出場したというNYCの歴代衣裳は、インパクトがすごかったという話で盛り上がる。
そして、「今日はね、佐藤勝利と松島(聡)くんも来てくれてるんですけど。ありがとう。勝利、松島くん」とライブを見学に来てくれた客席の佐藤さんと松島さんを紹介する中山さん。山田さんは、「あれ、一番うるさいやついないの? 今日いないのか、仕事か~、いないようじゃ、無理か(笑)」と“菊池風磨構文”で不在の菊池さんをいじる。そのいじりに「キャー!!」と悲鳴を上げて喜ぶ観客たち。盛り上がったことに嬉しそうな山田さんが「ありがとう。今日は楽しんでいってな」と関西弁のイントネーションでお礼を言い、「いや、なんでちょっと関西弁なの?」と中山さんに突っ込まれる、わちゃわちゃな展開も。
ここで中山さんが「僕、独立を決めまして」と改めて報告。「ちゃんと説明しなさい。皆さんに」と山田さん。報告を一番にしたのは、山田さんだったそうで、「その後、知念くんにも電話させてもらって、『山田くんにも今お話させてもらってんけど』って言ったら、『順序通り踏んでんじゃねえよ』って(笑)」(中山さん)。「そこは僕が先の方が面白いでしょ(笑)。でも、久々に電話で話して不思議な感じだった」と知念さん。山田さんも「確かに。急に優馬から電話来ると、珍しい魚でも釣ったのかなって(笑)」。「えー。そんなことで電話していいんやったら、もう、いくらでも電話するで。10回に1回ぐらい電話する」と中山さん。「正直、ビックリしたけど、いろんなことができる時代になりましたからね。皆さんにエンタメをいろんな形で届けてほしい」(山田さん)とエールが送られた。
「僕はあと3日ぐらいで、新たな一歩を踏み出すので。ここを逃すと、いつご一緒できるか分からなかった。本当に感謝しています」と大きな瞳をウルウルと潤ませて、お礼を言う中山さん。すると、「いや~、ちょっとやめてほしい。しんみりなやつ…。バンバン感謝の気持ちは伝わりますしね。でも、この姿を見て、やっぱり一番喜んでるのはファンの皆様ですから」と明るく会場を見つめる山田さん。温かな空気が流れ、胸がいっぱいな様子の中山さんが「皆さんの期待に応えられるようにこれからも頑張ります。またおふたりと一緒にできるように頑張るんで」と前を向く。
知念さんは、「別に解散するとか言ってない」と笑い、山田さんも「まだなんかね、宙ぶらりんの状態でこの辺にずっといんのよ」とNYCは解散してなかったことに触れ、「またいつかね。おのおの頑張っていれば、この景色が見れるかもしれないんで。お互い頑張っていきましょうね」。
名残惜しそうに「…ということで今日は、山田くんと知念くんが来てくれました。改めて俺たちNYCだー!」と叫ぶ中山さん。「頑張れよ」と山田さんと知念さんがステージを立ち去ると、「僕の中で長年の何かが今、なんかしたわ(笑)。ホントに僕は愛されてますね」と涙ぐむ。そして、「NYCの景色は、見られると思ってなかった。皆さんと同じくらい衝撃を受けています。独立を決めてから、たくさんの方が協力してくれて、今この場があります。ここに来てくださっている皆さん、スタッフの皆様に温かく支えられて、今があります。本当に感謝しています。このライブが終わったら、芸能界を辞めてお寿司屋さんになりますというわけではないので(笑)。すぐに次の舞台も決まっていますし、ぜひそっちも観に来てください」と、2月20日からの主演舞台『農業系☆Rock Musical いただきます!~歌舞伎町伝説~』をアピールし、ホスト役になりきって、チュッと投げキスをして会場を沸かせた。

この日は、バックに付いていたBoys beの北村仁太郎さんとの漫才のようなやりとりも。「あなたが落としたのは、銀のジャケットですか? それともデニムのジャケットですか?」と2着の衣裳を持ってきた北村さんに「俺が落としたのは、デニムジャケットです。俺のジャケット、置いてけ(笑)」とイジってから、ステージ上で生着替え。すると会場から「早く着ていいよ~」の声が。「やかましいわ、友達か(笑)」とタンクトップ姿の中山さんが笑うと、今度は「このままでいいよ~」と叫ぶ声が。「タンクトップでは、あかんやろ? こっちも演出があんねん(笑)」とファンの声をひとつひとつ拾ってツッコミを入れる中山さん。アットホームな空間に会場は、ほっこり。
ラスト曲は、いつもの仲間と笑顔で楽しもうと歌うナンバー「WEEKEND」を。「皆さんが集まってくれるおかげで僕は表現ができます。感謝を届けるべく、これからも邁進していきたいと思います。また一緒に楽しい時間を過ごしてください」とファンに呼びかけて幕が閉じたライブ。今回のツアーを新たなスタートの一歩目にして、新たな環境に身を置こうとする中山さんにとって、自分に注がれている愛情を再確認し、パワーをもらったステージになったに違いない。