社会のじかん

堀潤の「社会のじかん」第477回:選挙とSNS

エンタメ
2025.01.18

意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「選挙とSNS」です。

関心が高まるのはいいが、世論に左右される危険も。

昨年11月の兵庫県知事選挙で齋藤元彦前知事が再選しました。NHKの出口調査によると、投票の参考にしたものとしてSNSや動画サイトと答えた人がテレビや新聞を上回りました。選挙期間中、現地に取材に行きましたが、選挙演説を聞きに来た80代の女性は「テレビでは放送されないことがXには書かれているんです。娘が教えてくれました」と、スマホを握りしめながら語っていました。若い世代だけでなく、これまでテレビや新聞で情報を得ていた高齢者もSNSで政治に触れる機会が増えたというのを実感しました。

SNSでも、TikTokやインスタグラムなどのショート動画が多く見られています。YouTubeでもショート動画が優先的に表示されるように、アルゴリズムが変更されました。ショート動画は15秒や30秒、長くて90 秒が一般的です。するとどうしてもインパクトの強いメッセージが切り取られます。白か黒、あちらは敵でこちらは味方など分断を生みやすくなります。

また、SNSでは簡単にシェアができますから、閲覧者は皆、選挙の運動員になれてしまうというのも特徴です。リアルな現場で「あの候補者を応援している」とはなかなか言いにくいですが、話題の動画のリンクを拡散することならば容易にできます。

昨年は東京都知事選や兵庫県知事選でも、ネットの世論がそのまま投票行動に結びついていたといえるでしょう。衆議院選挙では国民民主党が「手取りを増やす。」という分かりやすいキャッチコピーで議席数を伸ばしました。SNSが活用され、争点の分かりやすい選挙戦になることにより、投票率が上がるというのは良いことだと思います。ただ、デマや偏った情報が流布されるリスクもあり、それは検証能力のあるメディアがリアルタイムで正しい情報を発信する必要があるでしょう。

兵庫県の齋藤知事は、PR会社に有償で選挙運動を依頼した疑いにより公職選挙法違反で刑事告発されました。ある候補者を応援するために別の候補者が立候補し話題を作り、票を集めるという選挙戦が可能になっているのもフェアではありません。選挙運動自体の見直しも必要なのだと思います。

PROFILE プロフィール

堀 潤

ほり・じゅん ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。メインキャスターを務める報道情報番組『堀潤 Live Junction』(TOKYO MX月~金曜18:00~19:00)が放送中。

写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

anan 2430号(2025年1月15日発売)より

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